/ Legend ( SONY MUSIC / 2010)
アルバート・ハモンドの5年ぶりの新作。前作は2005年にヨーロッパ発売された『Revolution of the Heart』。コレは日本で全く話題にならなかったけれど…そちらは以前レビューを書いたのでこちらをどうぞ(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20080903)。
さて、新作。タイトルに『Legend』(伝説)とある通り、60年代から現代に至るまでヒットを出し続けている伝説のヒットメイカーによる、豪華ゲストを交えたリメイク・ベスト盤。ジミー・ウェッブも似た雰囲気の良い盤を今年出したけれど。しばらく前、YouTubeでアコギとヘッドフォン・マイク姿で”It Never Rains In Southern California”を歌うアルバートの姿を観ていたものだから、それなりに健在なのかと思っていたけれど、こんなに華々しく大メジャーからのリリースが決まってくるとは。流石のSONY MUSIC、ジャケも前作に比べ、だいぶ良い感じ。
聴いてみると、アル・スチュワートと歌う”It Never Rains In Southern California”からして、オリジナルの編曲の雰囲気を損ねないようにしていることが伺える。ただ、クレジットを見ると、アルバートやエンジニアのデニス・ヴァラーガのギター以外の殆どはプログラミングによるいわゆる打ち込み。ただ、当世80年代じゃないですから、現代の打ち込みは結構生っぽく仕上がってるんだけどね。
クリフ・リチャードとの”The Air That I Breathe”とロン・セクスミスとの”When I Need You”っていう2大バラードは素晴らしい出来。でもね、今手元にある輸入盤、裏ジャケには後者(When I Need You)も”with Cliff Richard”ってでかでかと書いてあるんだよね。この誤記はマズイでしょ。
初期の名曲では”The Free Electric Band”(ライブ音源みたい、コートニー・テイラーと共演)や”I’m A Train”(ソロで)なんてのが嬉しいところ。あと、ダイアン・ウォーレンとのあの共作”Nothing’s Gonna Stop Us Now”(オリジナルはスターシップですな)は、アノ時代を蘇らせるのには最適なボニー・タイラー(グレイス・スリック役)と歌いまして、これまたオリジナルに近い雰囲気。以前、ベスト盤でアルバート自身がセルフカバーした時はもっとエレピ・バラードっぽいアレンジでありまして、個人的にはそちらの方が好みだったんだけど、コレも悪くはない。あとはストロークスの息子アルバート・ハモンド・ジュニアと歌う親子共演”Changing Me”やフリオ・イグレシアスとの共演(”Echame A Mi La Culpa”)も注目かな。フリオと言えば、アルバート作の”To All The Girls I've Loved Before”をウィリー・ネルスンと一緒に歌って大ヒットさせたこともあった。
あとはRiffの”My Heart Is Falling Me”、Ace Of Baseの”Don’t Turn Around”の自演なんてのもあって。さらに、ラテン・フィールドでの活躍はブログでも紹介した非売品サンプラー『The Many Sounds Of Albert Hammond』(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20081209)でも良く知ることが出来るけど、今作にも後半にいくつか収録されている。”99 Miles From L.A.”のラテン版”99 Miglia Da L.A.”なんてのは意外な良さ。
ファーストが擬似シックスティーズ・サウンドで好評を博しているイギリスの女性シンガー、ダフィの新作への参加も各所で話題になっているので、そっちも早く聴きたい所。