/ The Union ( Decca / 2010 )
興奮のデュオ新作。DVD付きの方を輸入盤で入手。最近日本盤はトンと買わなくなったな。安さが一因。特にこういったベテランの新譜だと、パッケージのデラックス感を強調して、団塊の世代向けの高価格を設定してくるからね…全くバカにしてますよ。
さて、アメリカとイギリスを代表するピアノマンである、レオン・ラッセルとエルトン・ジョンがまさかの邂逅。60年代は売れっ子セッションメンとして、70年代にはロック界の顔役だったことを思うと、近年細々とした活動が目立ったレオンにとっては、久々のメジャー復帰。エルトンとビリー・ジョエルはツアーはすれど、共演盤という発想は出なかった。ビリーとエルトンの方が音楽的に近しいモノがあるから、レオンとじゃあエルトンと言えど刺激を感じたのかもね…なんて思いつつブックレットを読み進めていって、その感動的なくだりに涙が出た。
なんでも2008年、エルトンの私生活上のパートナーであるデヴィッド・ファーニッシュと音楽番組を一緒にプロデュースした際(エルヴィス・コステロが出演)、長らく忘れ去っていた3人のシンガー・ソングライターについて話し合ったとか。その3人というのが、ローラ・ニーロ、デヴィッド・アクルス(まさかこの名がエルトンから出てくるとは…)、そしてレオン・ラッセルでありまして。で、3人の音楽を知らなかったデヴィド・ファーニッシュは、iPodに彼らの音楽を入れることにした、と。その中からレオンの『Retrospective』(ベスト盤ですな)を聴かせてもらうことになったエルトン、突然涙が止まらなくなり、彼の音楽が人生における最も美しく素晴らしい時をもたらしてくれたことに気づき…さらに、こんなにも素晴らしい音楽を人々が忘れ去ってしまっていることに怒りを覚えたんだとか。
思い起こせば若き日のアイドルだったレオンと1970年にLAのライブハウス、トルバドールで出会い、レオンはイギリスからやってきたエルトンとの共演を快く快諾したという。ディレイニー&ボニーのツアーやジョー・コッカーとのマッド・ドッグス&イングリッシュマン、そしてチャリティ・イベントの先駆でもあるコンサート・フォー・バングラディシュで一世を風靡したレオンと、”Your Song”のブレイクで一躍ポップスターの仲間入りをしたエルトンの2人が再び重なり合うことはなかったわけだが、ひょんなことでレオンの音楽に突き動かされたエルトン。アメリカにおけるマネージャーを務めるジョニー・バービスがかつてシェルター・レコードのスタッフだった関係から、レオンと連絡が取れて、電話越しに旧交を温めた。その後早速T・ボーン・バーネットに初めて連絡を取り、プロデュースを依頼して…なんだかトントン拍子の夢のような話で、読んでいるだけで胸が熱くなった。
盤の中身は最高!レオン、エルトン&バーニー・トーピンのそれぞれの単独作に、レオン&エルトンやレオン&バーニーの共作も加えて。ボーカルを2人で取るものが特にぐっと来る。昨日このブログで取り上げたロバート・プラント&アリスン・クラウス盤もTボーンのプロデュースだったので、マーク・リボーやジェリー・ベルローズ、デニス・クロウチとか、その盤とも被ったメンツではあるけれど、あっちよりナチュラルな音で、個人的には好みかな。演奏では2人のピアノはもちろん、他にもジム・ケルトナー、ドン・ウォズ、ロバート・ランドルフ、ドイル・ブラムホールⅡ、ブッカー・T・ジョーンズが。コーラスではビル・カントス、ジェイスン・シェフ、ルー・パーディニなんてAORな人が参加している。さらにさらに、”When Love Is Dying”ではコーラスにブライアン・ウィルソン、”Gone To Shiloh”ではニール・ヤングがボーカルを聴かせている。ゴスペル風の女声コーラスもとても良い。
手元にあるのは16曲入り。DVD入りの方が2曲多いので要注意だ。2人が全く衰えていないところがこの盤の価値を高めている。メイキングのDVD(カナリ短い…)を観て、”Border Song”辺りはレオンの影響なのかな、と思ってしまった。こんなベテランになっていながらも、イギリス人がアメリカ音楽に気を許しつつ、でも地が出てしまう感じが良い。冒頭の”If It Wasn’t For Bad”はレオンの会心の1曲で最も売れ線かも。