/ The Prague Sessions ( Warner / 2010 )
今年マリー・トラヴァースが亡くなったけれど。ピーター・ポール&マリー(実際の発音から言ったらメアリーですが、通例に倣ってこう呼ぼう)というと、公民権運動を支えたフォーク・グループとして、さらに世界のフォーク・アンサンブルのお手本として、各国で愛されてきた人だ。日本では特に人気があって、アマチュア時代にPP&Mタイプのフォーク・グループを結成していた大物も多い。
さて、これはメアリーさんの追悼盤としてリリースされたモノ。近作ではイマイチだったジャケの風格を最後の最後で取り戻してくれたのはとても嬉しい。プラハ・セッションと名づけられているけれどチェコ・ナショナル・シンフォニー・オーケストラと共演したライブ音源(気にならないレベルの拍手入り)、以前のライブ音源にオーケストラを被せたものからなる。フォーク・ソングとオーケストラってのは意外と合うもので、豪華でありながら、華美な印象は全くなく、その気高く品のある美しいメロディを際だたせてくれる。
“Leaving on A Jetplane”や”Puff ,The Magic Dragon ”、”Where Have All The Flowers Gone”、”Blowin’ In The Wind”、”This Land Is Your Land”と言った、そらで歌えてしまう代表曲の数々を収録。アート・ガーファンクル&マイア・シャープとトリオを組んでいたバディ・マンドロックが書いた近年の代表曲”The Kid”(そのトリオのレコーディングもある)や、マイア・シャープの父ランディ・シャープがソングライティングに加わった”Some Walls”はとても良い曲。
メアリーの晩年はかなり声が低くなってしまって、元々アルト・ヴォイス気味ではあったけれど、女声を聞き分けるのは難しいほどだけれど、暖かみのあるフォーク・ソングを聴いていると、思わずギターを持って歌いたくなってしまうような、心地よさがある。
昔狂ったように聴いたPP&Mだけれど、近年はピーターのソロを聴いたり、ノエル・ストゥーキーの”Song For Megumi”(拉致被害者の横田めぐみさん支援楽曲で、バンドにはエディ・モトウなんて懐かしい名前も見える。)を買ったくらいだった。改めて心が清々しくなって、まるで中学生の頃に戻ったようだ。憧れと希望と、不安が入り交じってハーモニーに融けていく。