/ 昨日のつづき ( 冬樹社 / 1984 )
南佳孝さん、先日テレビに出てましたね。定番”スローなブギにしてくれ”、に郷ひろみがカバーした”モンロー・ウォーク”、薬師丸ひろ子が取り上げた”スタンダード・ナンバー”と3連発。茅ヶ崎のライフスタイルも含めて、良かったなあ。
彼のデビュー盤『おいらぎゃんぐだぞ』は1973年、松本隆のプロデュース。はっぴいえんど、ってか風都市人脈のランディ・ニューマン・タイプのピアノSSWだったわけだ。『Hobo’s Concert』の音源でアルバム未収録曲が聴けたりもする。しかしこの時分には売れなかった。彼の旧い映画を思わせるノスタルジックで幾分か気取った世界は70年代後半に入ってやっとこさ理解されたと言えるだろう。シティ派のAORサウンドに載せたラテン歌謡っぽいメロも当時の歌謡界にとって新鮮だったし。
ところで、ここ10年かそこらでやっと彼のルーツである洋楽スタンダードのカバーなんかが聴けるようになってきた、と勝手に思っていたけれど、実はこんなものも出ていた。
『昨日のつづき』。1ヶ月ほど前に古本屋で見つけたモノだが、時代を感じさせるカセットブック。同シリーズで細野さんやムーンライダーズ、井上鑑のものも出ているようだ。で、このカセットブック、南本人と松本隆、そして”スローなブギにしてくれ”の原作者、片岡義男(この人のペーパーバック遍歴は尊敬に値する!)の3種3様のショート・ストーリーと共に、”Teach Me Tonight”、”September Song”、”Crying in the Chapel”、”Our Day Will Come”、”Winter Wonderland”などの所謂スタンダード・ナンバーが収められている。さらに歌詞カードが1枚1枚オシャレな絵ハガキになっていて、なんだか複合的なメディアの可能性を探っていた当時の気の利いた試みにいたく感心させられた。こういう凝り方って素敵だと思う。本というパッケージで遊んでるよね。本に対するフェティシズムって絶対に存在するはず。そう思うと、本そのものに価値を感じさせるこのカセットブック、いまだに学ぶべきモノがある。そうそう、松本隆の短編”白い港”は『ナイアガラ・トライアングル VOL.2』収録曲の小説版。
さて、今年の夏、南さんのステージを観たけれど、貫禄があった。ジャズ、ボサノヴァ、ラテン、ロッカ・バラード…声がまるで楽器みたいに鳴ったり震えたり。凄いミュージシャンだなって改めて思った。ラストの”Route 66”の軽さも最高にヒップだったし!
「DJでもやってるの〜?」と聴かれたけれど、ハッキリ答えました。「やってません!」残念ながら…