/ 言葉にならない、笑顔をみせてくれよ ( ビクター / 2010 )
久々にNatural Recordsのライブに行ってきた。イベント「きちじょうじのなつやすみ」の最終日、泉谷しげるが放水器を撒き散らしてスパークしていたその日の夜。吉祥寺のPLANET Kにて。
一言で言ってNatural Records、ロックでした。とうとうヴォーカルの宮武弘が根源的に持っているロック魂に、バンドの音がより共鳴しあって来たのかな、と。バラードもロックになってしまうと言う。この時代だからこそロックだよ、って思ってしまった。先行き不透明だとか、草食系だとか、いい加減なことを言って時代やそこに生きる人間を勝手に規定している奴は一体誰なんだ。第一メディアの作った虚像のようにも思えるそんな名付けに、不況だから仕方ない、だとか、俺も草食系かもな、だとか言っている輩、「シ・バ・イ・タ・ロ・カー!」。ってそんなこと言うアメリカ人芸人居ましたね。
と、感情的になってしまったけれど、ロックだったからといってそれは、感情のありのままをぶっつけただけのステージでは全くなく、アレンジがそれはそれは緻密に練り込まれていたことにも驚かされた。ギター、ベース、ドラムスが、それぞれの見せ場をしっかりと作っていて。そして何より唯一無二の曲が良い。とんでもない地場を持つ音が出来てます。来年始の新譜リリースに向けて、レコーディングを行ってもいるようだし、これからどこまで行ってくれるのか、本当に楽しみなバンドだ。
http://www.naturalrecords.net/index.html
ラストの東京60WATTSも初めて観ることになったわけだけど。メジャーデビュー後結構キャリアが長いバンドのようで、ステージングは流石のもの。ロック魂ではNatural Recordとも間違いなく共鳴してたな。音としては、山下達郎が在籍していたシュガーベイブへのオマージュに思える曲(具体的に言うと"Downtown")があったり、バンドのテーマ曲を作っちゃう所も、モンキーズ〜タイマーズというわけで、歌詞やパフォーマンスの面でもキヨシローを思わせる所があったり。ルーツを踏まえた所にまず感心してしまった。とはいえ、それらとは全く違うオリジナリティとセンスを兼ね備えている。さらにポップな音に紛れ込む、ニューオーリンズっぽいロールする鍵盤がかなりカギになっているなと思ったり。良いバンド。
ロック、で思い出したけれど、日本をそれなりに代表するロック・バンドは誰か、と考えてみたんだが、最近新譜を出したくるりを思い出した。エレクトロニクスは入っているけれど、立ち位置は紛れもなくロック。でもさ、レコード屋さんでしばらくその新譜を聴いていたけれど、どうなんだろう、と思ってしまった。曲はどれも割とフォーキーで、思いの丈を押し出さない現代的な「引き」がある。はっぴいえんどの「さよならアメリカ さよならニッポン」の現代版みたいな曲があったり、ユーミンと組んだり、TOTOの"Georgy Porgy"の印象的な間奏リフをパクって来てたり。そう言う渋谷系的方法論を今やるかな、っていう。世代的には解らなくもないのだが、いまロックにメッセージを乗せることって、はっぴいえんどの方法論を推し進めることではない気がするんだけれど。というか、それをやっちゃうとロックが死ぬんじゃないかと、感覚的にそう思った。もう死んでると言われればそれまでだけど。悪くはないんだけど、くるりほどのバンドならもっと過去の遺産から逃れられないのかな。ここでも伝統芸能化するロックを見てしまった。