/ Connected ( Victor / 2009 )
小坂忠のボックスセット『Chu’s Garden』を聴いてみまして。とは言え、持っていなかったアルバムは早いうちに廃盤になってしまっていた『はずかしそうに』だけで、それも初期のベスト盤で数曲は耳にすることが出来ていた。でも、オミットされている曲があるのには驚いた。『ありがとう』収録の細野作の名曲“どろんこまつり”。つんぼとかびっことか言葉狩りをするのは結構なんだけれど、“つんぼさじき”やらが気になるのか。吉田拓郎のうち再ＣＤ化が避けられている『いまはまだ人生を語らず』も同じ理由だし、長らくＣＤで世に出なかった友部正人の“びっこのポーの最後”収録盤とか、自主規制の名の下に不思議な制約がまかり通って、元の形で作品を出せないのはどうしたことか。
まあ、小坂盤や拓郎盤は私は既に持っているから、まだ許せたけれど、初めて聴くファンには失礼だと思う。“つんぼ”や“おし”やら“びっこ”やら、その言葉で人を傷つける方がよっぽど失礼、と言われればそれまでかもしれないが、作者がなにもその人たちを貶める意味で使っているとは思えない。文句言われるくらいなら、初めからカットしよう、という制作側の及び腰がどうも気にくわないね。第一そうした文句を言う人って、そもそも一体誰なんだろう。誰の代弁者なのか？
そう考えると、私自身、過剰反応しがちな政治家の失言とやらにもいま一度、ほう何をおっしゃるか、とでも言うような余裕が必要なのかもしれないな。
さて、全然話がずれたけれど、『Chu’s Garden』ははっぴいえんどのいわゆる“ももんが”をカバーしたライブ・テイクが収められたボーナス・ディスクがヤハリ聴きものだった。
で、それより新作、ということで『ほうろう』の新ボーカル差し替え盤はまだ手に入れていなかったので、昨年の『Connected』を。実は色々雑誌とかネットとかで、いぶし銀のソウルを聴かせた『People』なんかに比べて軽くて、ボーカルにも力が入っていない薄口の作、みたいな評価を耳にしていたので、今まで聴かずじまいだったのだが、意外にも激ポップな好盤じゃないですか！むちゃくちゃポップなボーカル盤。ソフトロックなB.J.トーマスみたいな曲もあったり、しょっぱなのしなやかなハイ・サウンド風”Hard to say , 偶然と必然の間”のような、シュガー・ベイブ・ライクな作もあったり。いやぁビックリビックリ。細野色が薄まると、急にイマイチな評価を下しちゃうんだから、ミュージック・マガジンおよびレココレ的はっぴい至上主義には、言い方悪いけれどダマされますよ。
細野も”everyday angel”を提供。この線で言ったら、『People』と被る作になっただろうから、佐野元春、スキマスイッチの大橋卓弥、バンドメンバーであるDr.kyOnに松たか子のダンナで本作のアレンジャーでもある佐橋佳幸、小原礼の楽曲を収めたのは正解でしょ。小原の“はぐれ雲”はロックの名曲をちりばめた、小坂にしてはロックな作。
ドラムスは全編高橋幸宏。なんだか、佐野元春がホーボー・キングバンドとウッドストックでレコーディングした『THE BARN』を思わせるリラックス・ムードが良い。音楽が音楽らしく響いてくる。
