/ 中央線 ( YOSHIMOTO R and C / 2010 )
これは痛快痛快!!TMネットワークの木根さんがこんなドが付く弾き語りフォークアルバムをレコーディングしていたとは。アンプラグドアルバムでしょ、なんて思わないで欲しいのだ。しょっぱなの3フィンガーからして、かぐや姫・拓郎直系のジャパ・フォーク仕様ナリ。しかも1曲1曲中央線をモチーフにしているというのも面白い。元々出身の東京多摩地区をベースに活動を始めていた人だし。TMネットワークも実は“多摩”ネットワークだというのも知る人には知られた話だ。
さて、今日の“きちじょうじのなつやすみ”に登場した木根さん、名刺代わりの”SEVEN DAYS WAR”をアコギ1本で歌いきったと思いきや、ハーモニカ・ホルダーを取り出し、プハプハ吹きまくって、暑苦しいフォークソングを歌うんだから、観客は唖然としてましたよ。しかししかし、個人的には最高!!早く言って下さいよ、という感じで。確かにかつてフォークの番組に出ていたり、フォーク色は小出しにしていたけれど、とうとう50を超えて吹っ切れたんですな。坂崎師匠にも絶賛されたらしいし。
今日のトークを聴いていたら、中央線沿線は相当彼に近しい場所のようで。彼は立川三中出身なんだそう。いま勤め先が立川なので、なんだか親近感が湧いてくる。小室哲哉氏は府中なんだそうで、同じ中学の1個下が今回のイベントにもミューシャンとして参加した浦沢直樹。あの『20世紀少年』の冒頭で、Tレックスの”20th Century Boy”が流れるわけなんだけど、それを放送部で掛けていたのが小室哲哉だった、なんて話もあってビックリした。
“高尾駅のビル”、”八王子メモリー”、”国立マギーメイ”、”阿佐ヶ谷小春日和”、”新宿物語”、”お茶ノ水慕情”とまあこんな調子でアルバム『中央線』は続きまして。アートワークもあくまでオレンジ。もう中央線はオレンジ1色じゃなくなってしまったけれど。”吉祥寺へ帰る”はアノ高田渡に捧ぐ曲、”三鷹ブルース”にはB’zの松本孝弘が参加している。
さて、木根さんだけれど、TM時代から異色の存在感を放っていた。”Winter Comes Around”や”Telephone Line”といったバラードに個性を感じた。文学的世界はソロになってからさらに広がった感触があるけれど。
ソロとして1996年にリリースされた”remember me ?”(写真左下)は小室哲哉プロデュースで華原&小室のコーラスが入った佳曲。これも、青春ってなキーワードに紡ぎ上げた歌詞の世界で、フォークな世界だとつくづく思う。
ところで、TMネットワーク結成以前の彼は宇都宮隆らとバンド、スピードウェイを結成しており、TOTOライクな爽やかなポップロック・サウンドを体現した2枚のアルバムをリリースしている(写真右下)。作曲は殆どが木根によるもの。 2枚目のアルバム『BASE AREA』には小室哲哉(TECHI KOMURO)がバンドに参加。5曲の作曲も手がけていて、中でも”SMILE AGAIN (ANYTIME YOU’RE MY LOVE)”のサビは後にglobeのシングル曲”SaYoNaRa”に登場する。1980年にこの感性を持っていたのは流石に凄いと言わざるを得ない。
いずれにしても、木根さんの『中央線』は笑っちゃうくらい買いです。木根さんのファンの多くの嗜好と重ならなそうなのが残念なんだけれど。手書きの歌詞カードに吉田拓郎の『元気です』の影響を見て取れる位ならバッチリ!拓郎の"高円寺"なんかもアイデアの源泉にありそう。”中野グラフィティ”とか”新宿物語”なんか、最高なんだって!