/ Many Mamas, Many Papas ( Varese Sarabande / 2010 )
ジョン・フィリップスの死後、ミック&キースとのセッション音源のリリース以来、発掘音源が色々出ている。これは今年出たママス&ザ・パパスのもの。80年代という彼らにとっては冬の時代の音源。唯一表舞台に名前が挙がったのが、ブライアン不参加のビーチ・ボーイズ、起死回生のヒット”Kokomo”の作家クレジットとして、ではないだろうか。
ここではなんとその”Kokomo”のデモをデニー・ドーハティとスコット・マッケンジーのリード・ボーカルで収録している。” San Francisco (Be Sure to Wear Some Flowers in Your Hair)”以来、1983年に久々に旧交を温めたジョンとスコットに加え、テリー・メルチャーとマイク・ラブのクレジットもあるが、マイクが作ったと思しき冒頭のアルバ・ジャメイカ…のパートは無く、サビのカールが歌うパートもない。ということで同じなのはAメロだけじゃないか!ということで、原曲と言った方が正確かな。そのAメロも、元のメロディはジョンが作り、スコットは詩を足した位ってことらしいけれど。BB版より、トロピカル感はより強まっている感じ。ちなみに、同じくビーチ・ボーイズの『Still Cruisin’』収録の”Somewhere Near Japan”の原曲”Fairy Tale Girl”もあって、こちらはジョンが歌っている。妙にオリエンタルな味付けは無いことからすると、メルチャーのサジェスチョンなのか、BBはかなりイジってますな。
で、それ以上に聴きものなのが、1981〜82年にレコーディングされたお蔵入り音源。ギグは行っていたものの、残念ながらレコードの契約は結べなかった。しかし、それなりのクオリティ。メンバーはというと、4声がジョン、デニーにジョンの娘マッケンジーと、元スパンキー&ザ・アワ・ギャングのスパンキー・マクファーレン。そして、ギターにミック・ロンソン、シェイン・フォンテーン(ミック・バラカン、あのピーター・バラカンの弟)、鍵盤にアーサー・ステッド、ベースにヒュー・マクドナルド、ドラムスはゲイリー・バークだ。
ムーディー・ブルースの”Go Now”はシングルに出来る完成度。AORなムードもある”Frankie”(冒頭のコーラスはママパパながら、サビはジャジーにアレンジした”Sunny”みたいな感じで)、”チャイナ”がこれほどまでに好きか、っていう感じだけれど、メロはとてもキレイな”Chinaman”、スパンキーが歌うだけでグッドタイミーになる”Love Is Coming Back”など、捨てがたい。他にも、1986〜89年に再編したママパパでのデモ音源も収録。まあこれらは悪くはないけれど、やはりオクラになるべくしてなった音かな。81〜82年の時点でデモを作っていたらしい”I Wish”は佳曲だけれど!
さて、Disc2もついていて、これは1982〜83年のママパパ再編ライブ音源。敢えて、ってことでカントリー・タッチの”Mississippi”(ジョン作)や”One day At A Time (Theme From)”(ジェフ&ナンシー・バリー作)、スパンキー&アワ・ギャング・メドレー、スコットに提供した” San Francisco (Be Sure to Wear Some Flowers in Your Hair)”(ジョンのボーカル!)といった珍しいところを収録。ラス・ヴェガスをはじめクラブ公演の音がなんとも、落ちぶれ感を誘う。
…と聴き進めた上で、マッケンジー・フィリップス、昨年の衝撃の告白を思い出した。この再編ツアーでミシェル役を務めたジョンの娘マッケンジーだけれど、ジョンにドラッグを勧められた上に、ただならぬ関係を長らく強いられていたようだ。マッケンジーは初めの妻との間に出来た娘。このツアーの頃は、2番目の妻ミシェルと別れ、3番目の妻である女優のジュヌヴィエーヴ・ウェイトと生活を共にしていた。ジュヌヴィエーヴも、親娘以上に親しげなマッケンジーの様子に相当妬いていたらしい。最後は不幸にもマッケンジーが身籠もってしまい、その関係は終わりを告げたようなのだけれど。