/ Nobody Left to Crown ( Verve Forecast / 2008 )
仙人のような髭、大柄でギルドのギターを抱えて、ざくざくと切り刻むようなカッティングを繰り出す、太い指にはターコイズのリングが…
Richie Havensである。ディランと同じニューヨークのコーヒー・ハウス出身のフォーク・シンガーでありながら、今までシーンに存在感を示しているのはやはりウッドストックがあったからだろう。出演者を待つ間のつなぎでステージに立つことを促されたRichieは、ニグロ・スピリチュアルの一節”Someteimes I Feel Like A Motherless Child(時には母のない子のように)”を交えながら、数十万の群衆に”Freedom”と叫び続けた…あれから40年。
Universal傘下でVerve Forecastという名前が今まで残っていたことにも驚いたけれど(”Stormy Forest Productions”なんて名前にも驚いた!)、2008年のこの作品は、全く衰えないRichieのディープ・ヴォイスと、アコギの質感に圧倒される。近年では間違いなくベストでしょう。オリジナルに加え、ライブでの定番だったJackson Browneの”Lives In The Balance”(ライブ録音)や、Andy Fairweather Lowの”Standing On the Water”や、結構ハマっていたThe Whoの”Won’t Get Fooled Again”、Peter, Paul & Maryの”The Great Mandala (The Wheel of Life)”なんかを取り上げていて。そうそう、新しいところではCitizen Cope(Clarence Greenwood)の”Hurricane Waters”を渋くキメている。再演タイトル曲”Nobody Left To Crown”も素晴らしい。
ところでこの人のベスト・テイクはなんだろう。アルバム単位では1991年の『NOW』なんかをおすすめしたいところだが、それも彼のダイナミズムを収録し切れているとはいいがたい。そうなると、ウッドストックの名演と、Bob Dylanの30周年記念コンサートでの”Just Like A Woman”かな。先日久しぶりに映像を取り出してみていたら、不覚にも涙が出てしまった。最近涙腺が緩んでしまって困る。