/ 五六七(みろく) ( Victor ZEN-1005 / 1979 )
ギタリストの吉川忠英が全米デビューを果たしたバンドEAST。米キャピトルからリリースされた唯一盤はかつて紹介したことがあったけれど(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20050504)、このバンドのリーダーだったのが瀬戸龍介だ。EASTの前身であるモダン・フォークバンド、ニュー・フロンティアーズの再結成を観たことがあるのだが、ヒゲモジャの瀬戸のバリトンの迫力がどうにも豪快で印象的で、いつかソロアルバムも手に入れたいと思っていた。
さて、これは彼の初のソロアルバム。全米デビュー後に自分の居場所を探した彼らしく、尺八、琴、鼓といった和楽器や日本の神話・伝承を前面に押し出すことでアイデンティティを確立せんとしていたことが伺える。もちろん、ヒッピーが70年代、ニューエイジ運動にのめりこんで行ったさまとも軌道を同じくしているが。ビクター傘下のその名も”ZEN”レーベルからのリリース。アメリカで大きな支持を集めた喜多郎も同レーベルから作品をリリースしていた。
幻想的なインストも含みつつ、そこは瀬戸。アコギによるフォークを核とした音作りが未だに新鮮に聴こえる。A-1”問答”のような日本語曲とA-3”葉月の雨”のような尺八と琴を交えた英語詩曲が違和感なく同居していて。
さて、とてつもなく気になるのはA-4”Dream Land”。白鳥英美子が美しいソプラノ・コーラスを聴かせるこの曲、セルフ・オリエンタリズムよろしく、チャイナ風のとろんとしたバラードなんだけど、ジョン・レノンの”Beautiful Boy”にソックリで。1979年、という時期的にもジョンの当該曲とほぼ同時期で、その相互の影響については定かではないけれど西洋人の表現する東洋と東洋人の表現する東洋が重なった事例として、面白い。
B面ではブルース進行に和楽器を合わせ、スサノオ神話を語るB-3“スサノオノミコト”が強烈な印象。コレがなんともはや擬古調で、結構凄い世界。
ミュージシャンでは森田玄(EX. ニューフロンティアーズ、EAST)、白鳥澄夫(EX.トワエモア)、琵琶の鶴田錦史らが参加。次作の『華厳絵巻』には同じ嗜好を持ったもの同士、というべきか細野晴臣が参加している。
そう言えばインストだけれど、同じようなアプローチで全米に打って出たアーティストに喜多嶋修がいた。女優喜多嶋舞の父で、加山雄三の弟分にあたるバックバンド、ランチャーズのメンバーだった人物だ。