/ Soul & Inspiration ( Atlantic / 2000 )
一昨日の2月9日は二人の偉大なソングライターの誕生日だった。今年使っているレコ・コレ誌の手帳には、毎日ミュージシャンの誕生日が載っていて面白い。で、その二人とはキャロル・キング(1942年)とバリー・マン(1939年)。アメリカン・ポップスの頂点に君臨する男女二人のライターが同じ誕生日だなんて、なんだか感動してしまう。
ご存知の通り、キャロルは今年JTとツアーを演る。平日だし、行けないのが無念で仕方ないんだけど。しかもリヴィングルーム・ツアー行ってしまったしな。
今日はバリー・マン『Soul & Inspiration』を取り出してくる。この奇跡的なセルフカバー盤にリアルタイムで出会えたことを幸せに思う。ジミー・ウェッブ盤の企画を受け継いだもの(ジミーの続編はレコーディングされていたようだけど、完全にお蔵入りしてしまったのだろうか)。カナダのフレッド・モーリンのプロデュースで。フレッドはバリー・マンも一枚噛んでいたダン・ヒルといい仕事をしている。
冒頭のキャロル・キングとのデュエットでもう涙腺が潤む。”You’ve Lost That Loving Feeling(ふられた気持ち)”。この世で一番エアプレイされている曲だそうで。YouTubeで二人が歌うライブ映像を最近観たけれど。キャロルのメガヒットアルバム『Tapestry』の姉妹版だったバリーの『Lay It All Out』や1980年の『Barry Mann』にも二人の共演があった。
他にも感動的なテイクがあって甲乙付けがたいけれど、特に感動したのはリア・カンケルとの”Here You Come Again”、それにピアノ弾き語りの”Sometimes When We Touch””Somewhere Out There”かな。”Here You Come Again”はドリー・パートン版より、B.J.トーマス版の方が好きだったので、このバリーのテイクはトドメの一発。以前、余りにいい曲だから耳コピしてみたのだけれど、職人芸とも言える転調に感心した。だからと言って聴いている内にはそんな作為は感じさせないのだ。
ゲストも絶妙でダリル・ホール、ブレンダ・ラッセル、J.D.サウザー、ピーボ・ブライスン、リチャード・マークス、マーク・ジョーダンを的確に配置。
極端なステージ嫌いだそうだけれど、元々は自演歌手でもあったわけだし。歌手としてのソウルフルな表現力は凡百の職業ライターとは一味も二味も違うと思う。彼の作るような音楽に出会いたくて、今まで飽きもせず音楽を聴き続けているんだなと、レコードに囲まれた部屋でしみじみ思った。リアルタイムで衝撃を与えてくれたそんな一枚に感謝している。