/ Starting Over ( Capitol / 1974 )
エリック・カルメン、ポップスの王道を行く音作りがその筋のファンには堪らん人です。ブリル・ビルディング的な職人芸を感じさせるソングライティングの妙もあって。だからこそソロになってアリスタに迎え入れられた。ビーチ・ボーイズ・フォロワーな所も最高。1998年の今のところの新作『Winter Dreams』は、はじめサンプル・テープをまさに擦り切れる程聴き続け、その後リアルタイムで買った。まだまだ衰えていなかったポップ・センスが爆発した佳作でそれはそれは素晴らしかった。
一昨日エリックの元いたラズベリーズ再結成ライブ盤を注文しまして。今届くのを待っているわけなんだけど、一先ずコレでも聴こうかと。ラズベリーズとしてはラスト・アルバムに当たるもの。しかも新メンバーを迎えてのラストアルバムと言う。
で、冒頭のもろビーチ・ボーイズなコーラスが炸裂する”Overnight Sensation(Hit Record)”にしても、王道ピアノバラードのタイトル曲”Starting Over”にしてもソロ期のエリック・カルメンに繋がる楽曲が多いのが魅力の一つ。ラズベリーズって、パワー・ポップだとか今では言われているけれど、個人的には初めて聴いたとき、単に音の悪いロック・バンドだなあ、って感じがした。今もそんなに印象は変わらないけれど、ジョン・レノンが好きだったってのも判る、甘酸っぱいメロディにはヤハリ普遍的な魅力があるのだ。ロネッツみたいなロックンロールの甘さがそこにはある。
ウォリー・ブライソンのギターもこのバンドの音を決定している大きい部分。豪快なんだ。新メンバーのマイケル・マクブライドはエリックと同じサイラス・エリーのメンバー。サイラス・エリーは今ではシングルがちゃんとした音で聴ける。珍しいところでは”Hands On You”、ウォリーとスコット・マッカールの共作で、アクースティックでラフなレコーディングが面白かった。
ストリングスとホーン・アレンジにはチャーリー・カレロが参加している。プロデュースはジミー・イエナー。それにしてもエリック・カルメンは杉良太郎のような色気がある。