/ リーゼント夜明け前 ( meldac / 1990 )
昨日の矢沢で思い出したのが、PLEASE。キャロルのコピーバンドってのは凡百いるけれど、オリジナルメンバーが作ったコピーバンドってな体裁なのがこのPLEASE。メンバーはジョニー大倉.、高橋ジョージ、内海利勝、田中清人。高橋ジョージが矢沢役なんだけど、しゃくりあげるねちっこいボーカルを再現していて秀逸。そもそも高橋ジョージ。“ロード”の虎舞竜のイメージだけれど、80年代前半の名ジャパ・ロカビリーバンド“トラブル”を率いていた生粋のキャロル・チルドレン。そのファースト『トラブル』はビートルズに感化された名盤。ベースの音を聴けばその良さがすぐに解る。
さて、前半M-1〜M-8が1989年9月のボトムラインでのライブ音源。ジョニー&ジョージ!の共作M-1”レイジー・ミスティ・レディー”からゴキゲンなとしか言いようの無いロックンロール!キャロル時代のM-3”ヘイ・ママ・ロックンロール”、M-4”憎いあの娘”、M-5”変りえぬ愛”、M-6”愛の叫び”を立て続けに。ジョニー&ジョージのハモがどうにもジョン&ポールを髣髴とさせる。そして、M-7”ヘイ・タクシー”、M-8”ファンキー・モンキー・ベイビー”は嬉しい再演!矢沢はいないけれど、再結成の魔法は十分に感じられる。M-7は”I Saw Her Standing There”風のアップビートで歌われる。M-9以降のスタジオ・レコーディングもロックンロール、もっと言えば初期ビートルズに徹底的に拘った作りが見事。同列には語られることが余りないけれど、最近は“ウイスキーがお好きでしょ♪”なんて書いている杉真理みたいなビートルズ・オマージュ組の系譜に連ねることができそう。”She’s A Woman”と”I Feel Fine”をくっ付けたみたいなM-11”コール・ナンバー・セクシー・109”なんてその最たるもの。
また、M-9”じっとウェイティング・テレフォン”なんて、ジョニー大倉が、「ロックは日本語か、英語か」なんて議論が行われた70年代前半に日本語と英語のチャンポンにより西欧のビートに日本語を事も無げに載せてみせた功績を思い出させてくれる。桑田佳祐に繋がるJ-POPの系譜。ライブ・テイクでも収められていたM-13”哀・ミザリー”、M-14”レイジー・ミスティー・テディ”は、スタジオ・テイクで聴くとよりビートルズの音に近づけようとしていることがわかる。ラストは本盤には少ないバラードのM-15”グッド・バイ・マリア”。バラードだとどうしても矢沢と比べてしまう。矢沢は圧倒的にバラードが上手いってことはその後のキャリアが証明している。
PLEASEはもう一枚セカンド『Choice』をリリースしているけれど、こちらはより一歩進めて、当時のヒットチャートにおもねった作。悪くない曲ばかりだけれど、トータルバランスと狙いの明確さから言ったら断然『リーゼント夜明け前』。そう言えばビートルズ・リマスター、皆さん買います?