/ Gulf Coast Bound ( abc / 1970 )
時代は70年代に突入し、ブルース・マグース消えゆく最後の盤として印象は薄いのだが、ラテン・ロック的な所もあって、この時代としては先端を言っていた音。冒頭のタイトル曲A-1” Gulf Coast Bound ”から、ラテンタッチの弾むようなコンガとブロウするPee Wee Ellisのサックスが印象的。前作『Never Goin' Back to Georgia』では加入の印象が薄かったエリック・カズ(クレジットではEric Justin “Kas”)になっている…誤記?)のソウル色が出てきたかな、という印象も。何しろほとんどの曲のソングライティングにカズが加わっている。
A-2”Slow Down Sundown”はコンガとヴァイブが激しく絡み合う長尺のソロを含むフリーキーな演奏。ところがこんな所で驚いてはいけなくて、A-3”Can’t Get Enough Of You”は12分にもわたる楽曲。この曲でやっとペピーではなくエリックのリード・ボーカルに出会える。
B面にいくと、ジャズ・ロックのようなタッチでも聴ける、洗練されたインストB-1”Magoos’s Blues”が飛び出す。まさかコレを聴いてブルース・マグースだと思う人はいないだろう。ジョン・リーロのヴァイヴとピー・ウィー・エリスのサックスが大活躍する。B-3”Sea Breeze Express”もインスト。そしてそして、シンガー・ソングライター時代の幕開けを予感させるB-2”Tonight The Sky’s About To Cry”の初演が忘れ難い。若いエリックの唄は、シャウトを聴かせるほどに黒く迫っている。1972年の名盤『If You’re Lonely』収録のソロヴァージョンほど感傷的ではないけれど。コノ曲を聴くと、あの夢の来日公演を思い出してしまう。もう一度エリックを観ることは適わないのだろうか。