/ Vitamin Q ( Columbia COCP-35209 / 2008 )
昨年12月に出た加藤和彦の新バンド。ちょっと話題になって消えたのも判る、イマイチ盤。ただし曲によってはアタリもある。メンバーは凄い。ベースは小原礼、ギターは土屋昌巳(EX.一風堂)、ドラムスは屋敷豪太(EX. Simply Red)。ギター・ボーカルの加藤含め、世界的な成功を収めた経験のある猛者ばかり。しかし如何せんボーカルのANZAが大層な面子と比べると劣って見えてしまう。グラムな時代を模したバンドの見た目にはフィットするものの、実力が追いつかず、正直悲しかった。ミカやカエラと、どうしても比べてしまい。Chris Mosdellの英詩を使うんなら、いっそネイティブを持ってきた方がフィットしたと思うんだが、どうだろう。
中身は、ビートグループものを初めとした60年代ポップスへの愛情を感じさせるちょっとしたオマージュ盤。森雪之丞-加藤和彦コンビのM-9”スゥキスキスゥ”はウォール・オブ・サウンドだったし。ミカ・バンドの新作に入れても良かったのでは?と思ったグラム風M-8”メタルに塗りつぶせ”なんてのもあり。加藤の当たり曲はM-3”Cupid’s Calling”。ディランばりに歌い上げてるな、と思ったら、M-7”Lotus Avenue”はもっと凄かった。土屋はロケンロール歌謡M-5”FUN FUN FUN”を書く。こんなのも悪くない。しかし本作でイチバン凄いと思ったのは小原礼のビートルズものM-11”Take The Wild Way Home”。ブルースっぽいイントロからポール・マッカートニー・ライクなボーカルが滑り出すあたりの快感と言ったら。なかなか書ける曲ではない。もちろんベースのフレーズも、コーラスもそれっぽくて。奥さんの尾崎亜美も入って来るアット・ホーム感も悪くない。
ところで、4月に出たユーミンの新作『そしてもう一度夢見るだろう』。中身はいつものごとく金太郎飴だったけれど、ミカバンドっぽい“黄色いロールスロイス”ってのが加藤和彦とのデュエットになっていて面白かった。