/ 汚れた街にいても ( CS FJSP-65 / 1972 )
ジャケは見えにくいけれど、銀色にマッシュルームTシャツを着た成田本人のイラストがうっすらと入っているというもの。前回取り上げたファースト(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20090509)に次ぐ2作目だ。今回は“ルパン”で知られる大野雄二アレンジ(A-3のみ馬飼野俊一)。ニューソウル的な色合いも帯びた趣味のいいボーカル盤と感じた。バッキングは田中清司、杉本喜代志、山内テツ、鈴木茂ら。
A-1”愛ある限り”は元“愚”というより中島みゆきや長渕剛、吉田拓郎のアレンジで知られる瀬尾一三の作。安井かずみの詩でシングルカットされたもの。マーヴィン・ゲイの『What’s Goin’ On』を意識したと本人は言うけれど、バッキングはそうであれメロディは歌謡的。そのバランスがなかなか魅力的なのだ。シングルとは別アレンジ。シャンソン風のメロにジャジーなギターソロが絡むA-2”遠い愛の日を夢みて”は大野アレンジがピッタリとハマッた佳曲。歌謡ロックA-3”今日からエトランゼ”は後のアニソンに連なる系譜。大野雄二が作曲したA-4”やすらぎの世界”は『DRIVE meets 喫茶ロック』に収録されているようだ。サビはLeon Russell、D&B.Bramlettの”Superstar”なんだけど、いい曲。
B-1”淋しそうな若者たち”はレア・グルーヴ的観点から見ても要注目!!高揚するアレンジとギター・ピアノソロの嵐のごとく圧倒的な演奏力に息を呑む。フォーキーなB-2”花結び”、B-3”できることなら”を経てB-4は長いタイトル。”人間の醜さがひき起こした奇怪な美しさの裏にひそんだ不快な感情を題にした詩”。これも大野らしいスリリングなアレンジが堪らない。鈴木茂の歪んだギターも聴きモノ。タイトル曲B-5はオーケストレイションに導かれて朴訥とした楽曲。こういうフォーキーなものが地かも。ラストのロックB-6”春だもの”には大野とプロデューサーのミッキー・カーチスがコーラス参加。