/ Shine A Light ( Universal UICY-1408/9 / 2008 )
ストーンズというと私にとっては、一通りCDやらレコードを持ってはいるけれども、ビートルズほど熱心に聴いてはいない、という存在。こんなことを言ったらファンに怒られそうだが、それは事実。『チャーリー・ワッツ・オーケストラ』とかも持ってるわけだけど、余り熱心に聴いてはいない、という。そう言う存在なわけで。そんな私ですが、話題の最新ストーンズ映画、先日観て参りました。新宿武蔵野館という映画館だったが、結構狭い所。まあ音楽映画だから、そんなモンなんだろうけれども、危うく立ち見になる所だった…
ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』や、ブルースムーヴィー・プロジェクトやら、ディランの『No Direction Home』(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20060211)やら、音楽との関わりの深いマーティン・スコセッシ監督作品ということで、その手腕も楽しみにしていたのだが、観てみると、スコセッシがストーンズの面々と打ち合わせをする暇もないまま、NYはビーコン・シアターでのライブ(2006年)に到達する様子が冒頭映し出されていたりして拍子抜け。監督も撮影には相当頭を悩ませたことだろう。何しろセットリストが渡されたのが、開演直前と言うのだから。ストーンズ側(特にミック)としても、映画を撮ることで、ステージの客がカメラの邪魔で演奏を楽しめなくなることを恐れていたりして、マア映画を撮られることをさほど喜んでない様子。でも、自然体のステージを決めたいと言う気持ちで臨んで、結果的にこんな素敵なライブ・ドキュメントに仕上がったわけだから、いいじゃないですか。
サントラが先行発売されていたけれど、コレはコレで入手する価値があるのだが(日本盤はボーナスに"Undercover of the Night"を収録)、顔の見える映像の方がいいことは確か。タダのライブビデオと違うのは、やはりプレーヤーの演奏を数台のカメラで撮っているだけあって、同時にメンバーを色んなアングルから接写したり、引いてみたり、見えないところが見えてくる点。そういう面で、ライブビデオではなくれっきとした映画と言って差し支えないだろう。流石はスコセッシ、ビーコン・シアターというストーンズにとっては狭いハコで、バンドの息遣いや一体感に、十分な形で光を当て(Shine a Light)られているように感じられた。
見終わった後の下世話な感想を言えば、一言、「若い」。とにかく彼らの若さが強調。ウェストの引き締まったミックの落ち着き無い動きとか、黙々と叩き続けるチャーリー(演奏後、疲れて溜息をつく瞬間がちゃんと収められてはいたけれど)とか、普通のヨボヨボ爺だったらとっくにショック死してますよ!スコセッシとミックが一つ違いだと考えても、彼らの若々しさというものはオカシイ位。あと、映画の中では、「バンドが長年続いている理由」を過去のインタビュー映像などから探ろうとするのだが、これがまた、なんだか、イマイチ答えが出てこない。大それた目的意識を持ってやっている、とかではないんでしょうな。これぞロックンロール、なのかもしれないけれど。よく考えてみれば、ミック&キースの曲やバンドで作り上げた演奏スタイルは世界最高級であるにせよ、キースのギターなんて「味」の部類だし。完璧なんかではなく、各人の絶妙なバランスの上に成り立っているという、これぞバンド…
名演と思えたのは、バディ・ガイとの共演”Champagne & Reefer”。マディの曲。バディ・ガイは70歳を超えたストーンズよりさらに先輩に当たるわけだが、声量が半端ない。ぶったまげました。あと、ストーンズお得意のカントリー系の楽曲にはグッと来た。”Faraway Eyes”なんて、改めていい曲じゃないですか。さらに、映画では演奏シーンが出なかったけれど、サントラに入っている”Paint It Black”は久々に聴いて感動。往年の名曲”As Tears Go By”も良かった。キースの12弦が最高。まあその他、ベスト選曲で聴かせる。そう言えば、クリスティーナ・アギレラ、ジャック・ホワイトという若手との絡みも悪くなかった。ロックの継承。さらに、コーラス&アコギで久々にブロンディ・チャップリンを拝むこともできたのも収穫。
今月で、70歳を迎えるムッシュかまやつ大先生が”Satisfaction”を歌っている映像を昨日テレビで観たけれど、それと今回の本家ストーンズの”Satisfaction”が重なってきて、「不死身のロックンロール」とでも言うべきものが、強烈な印象で心に残った。