いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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堺正章 

markrock2009-01-05

/ 時の忘れ物  ( Victor / 2008 )


バラエティ番組の司会者としての顔が定着してしまい、歌手だったの?なんて言う声も聞かれるようになって久しい堺正章。何てったってスパイダース、な私としてはソロ期のボーカルも捨て難い魅力を放つ。新作を望む声も多かったものの、近年の音楽活動の方は、スパイダースの3人(マチャアキムッシュ、井上尭之)がSans Filtre名義で久々に集ったマキシ『Yei Yei』(2000年)があった位で近年は停滞気味。それが昨年、シングル“忘れもの”が当たったことで23年振りのオリジナルアルバムが!とは言え、中身は新録と再録モノが混在するベスト盤の体裁。そういう意味では完全なオリジナル盤では無かったことを悔やむ声もあるようだけれど、多忙な彼なら致し方ないかも。


でも聴いてみると中身はなかなか魅力的。秋元康-Gajin(中村雅人)のコンビで作ったM-1”忘れもの”は大滝詠一風ウォール・オブ・サウンドをなぞった佳曲。こう言う大らかなポップスはイマドキ堺くらいしか歌えなくなってきた。堺の声は少ししゃがれが増している。M-2”二十三夜”は1987年のベスト盤のタイトル曲。“桃色吐息”で有名な佐藤隆 色全開の楽曲。ニューバージョンで収録。M-3”モヒートの夜”は南佳孝作のラテン歌謡。M-4”娘へ”は“忘れもの”と同じコンビの作。家庭を顧みず、仕事に打ち込んできた父が娘に許しを乞う内容、ジャジーサウンドで、いいじゃないですか。M-10でシャルル・アズナブールってかエルヴィス・コステロ版で定着しつつある”She”をカバーさせたのも上手いと思ったけど。


ムッシュのサイドボーカルを添えたM-5”サイケなハート”は秋元-後藤次利コンビということでムチャムチャあざとい擬似GS。ザ・レインドロップス名義。M-6”北風小僧の寒太郎”の新録は懐かしかった。昔よく、NHK「みんなのうた」のソノシートやテープやらを聴いていたっけ。そう言えば「みんなのうた」には結構面白い曲があったものだ。竹内まりやの“パイナップル・プリンセス”とか、YMOの前座だったコズミック・インベンションの“コンピューターおばあちゃん”とか。コズミック・インベンションには井上ヨシマサとか佐藤鷹(To Be Continued)が在籍していた。


さてお次、M-7”メリーゴーラウンド”は流石に音が旧くなったと感じさせられるが、寺尾聰が売れに売れていた1981年に提供した哀愁シティポップ。この辺からはボーナストラックとして捉えたほうがいいかな。2大ヒット曲M-9”街の灯り”とM-10”さらば恋人”は1991年の新録。アレンジはオリジナルとほぼ一緒だけれど、ボーカルはよく聴くと、違う。


堺のCD化の進捗状況はというと、2004年にコロムビア時代のシングルを収めた『しんぐるこれくしょん』が出たことで個人的には満足している。なぜなら、1972年に筒美京平が作り上げた最高傑作サウンド・ナウ!』の全楽曲を含んでいるから。これには興奮しました。持っていたLPを知り合いにあげてしまったほど。ただし、自分で曲順を変えないとオリジナルには復元できないのだけれど。コレを聴くと元ネタの、女版ジャクソン・ファイヴと謳われるハニーコーンも聴かざるを得なくなってくる。


ちなみに、"見上げてこらん夜の星を""どうにかなるさ"なども収めた『ひとりぼっちのマチャアキ(1971年)はボーカルものが好きな人は必聴。"さらば恋人"、"恋人なんてすてちまえ"あたりの筒美作品をサウンド・ナウ!』と併せて聴くのもなかなかだ。