/ Baby Goodbye / Soft Guitar ( Columbia JZSP 76054 / 76055 / 1963 )
Kenny & Yvonne / Come On And Be My Love / Don’t Go To Strangers ( Columbia JZSP113574 / 113588 / about 1964 )
ケニー・ランキンのシングル2枚。今年e-bayで入手したもの。前者が10ドル、後者は5ドルくらいだったか。円高で大分今年は得しました。
ケニー・ランキンは1968年にマーキュリーから『Mind Dusters』を発表するまでの間、早いところで50年代後半から60年代半ばまで、デッカやコロンビアにシングルを残している。ディランの『Bringing It All Back Home』に参加したコロンビア時代は、ソングライターとしての名声を高めた時期でもある。イタリア語で歌った盤なんかも各国でリリースしていて、そちらはシングルながらジャケもあってなかなか魅力的。一番シングルで高値が付いているのは”Haven’t We Met”と”In The Name Of Love”の初期ヴァージョンを収めたシングルか。まあ、その内”In The Name Of Love”については、『FREEDOM TIME』なるコンピでCD化されているが、まだ洗練されず、混沌とした出来だ。
まず、"Baby Goodbye"と"Soft Guitar"のシングル。これはケニーの弾き語りファンなら必聴でしょう。アレンジ・指揮はロバート・マージー。プロデュースはディオンだ。ロバート・マージーはケニーが”Haven’t We Met”を提供したメル・トーメや、アンディ・ウィリアムス、そしてこの盤のプロデュースを行ったディオンなんかを手がけた人物。ディオンは、イタリア系という共通点もあるけれど、ケニーと音楽的に重なる部分がある。60年代後半にドゥ・ワップからフォークに移行した辺りなんかは特に。
"Baby Goodbye"の方はT.Hassel作。ケニーのクラシックギターの美麗なイントロが奏でられた瞬間にもう至福の境地。うっすらと弦とコーラスが絡むが、ほぼ弾き語りと言っても過言ではない、とても穏やかなバラード。しかしもっと素晴らしいのは、いまだにケニーがステージで披露する自作ボッサ、”Soft Guitar”の方。1970年の『Family』にも収録されることになるのだが。ケニーが10数年後に開花させた音楽性が1963年の時点で既に完成されていた、ということに唖然とさせられる、早すぎる傑作。こちらは完全な弾き語りだ。
さらにお次、ケニーとかつての妻イヴォンヌとのデュオ”Kenny & Yvonne”名義のシングル。こちらは音楽出版社が”Kennyvonne Music”となっていて一寸微笑ましい。アレンジ・指揮、プロデュースはロバート・マージー。とにかく”Come On And Be My Love”を聴いてビックリする。なんと目くるめくフォーク・ロックな夫婦デュエット作。Aメロには甘酸っぱいソウルっぽさもあったりして堪らない。”Don’t Go To Strangers”はイヴォンヌとケニーの透き通ったボーカルに心洗われるフォーク色の濃い作品。”Come On And Be My Love”の衝撃には敵わなかったけれど、なかなか良い。
ケニーのシングルがまとめてCD化されることは、ウーン、特に元妻とのデュエットなんてのもあるし、多分ないなあ、と。