/ ぼちぼちいこか’08 フューチャリングくいだおれ人形( 風知空知RECORDS / 2008 )
良い。完全な新作かと思ったら、“くいだおれ”の店じまいに合わせたリユニオン・リメイクと言う事で期待半分不安半分でしたが。
不朽のラグタイムフォーキー・デュオの名盤『ぼちぼちいこか』では“上田正樹と有山淳司”とされていた名前の順序が変わったのはちょっとしたオトナの配慮だろうか。サイモンが先かガーファンクルが先かで喧嘩したデュオもおりますし。
今回は有山のギターが中心。ドラムスは前作と同じ正木五郎。コーラスの金子マリも懐かしく登場。新しい所ではウッドベースでバンバンバザールの黒川修が。ピアノが無くなった分、フォーキーさが強調されてライブの感触。憂歌団を聴いてるような気分にも。
リメイクでは“俺の借金全部でなんぼや””梅田からナンバまで””あこがれの北新地””買い物にでも行きまへんか””なつかしの道頓堀”を選曲。上田のボーカルも脂が乗り切っていて見事。有山のギターも当時から凄かったが、流石のキレ。ラストの”ぼちぼちいこか”は新曲らしいが、メロはタイトルとはかけ離れたAORバラードでちょっとガッカリ。悪い曲ではないが。
ところで上田、昨年リリースした『OSAKA』では”大阪へ出てきてから”と、サウス・トゥ・サウス『この熱い魂を伝えたいんや』に収録されていた”むかでの錦三”をリメイクしていた。近年の上田はなかなか良い作品をリリースしているので目が離せない。思い起こせば1998年の『Soulscape』に収録された”ゆたかな暮らし”というファンキーなメッセージソングが余りにも素晴らしい出来で、それから彼が気になりはじめたのだった。
そうそう、『ぼちぼちいこか』も昨年ボーナストラック付で再発されたのでまた買ってしまった。ボーナストラックは詳細がなかったので、いつどこで録られたものかは判らないが、おそらくサウスのフォーキーセットとバリバリのソウルセットを均等に収めたもの。この時点で上田のボーカルスタイル自体は十分に完成していたことがわかる。まあとはいえ、改めて聴くと、この音源だけで買い直すまでもなかったと気付く。
それよりは、今年出たばかりの2枚組『ゴールデン★ベスト』の方が買い。なぜなら本盤、ナント、キティからの2枚やらサウスのシングル”始発電車””やせた口笛”を初CD化しているのだ。RCの”Sweet Soul Music”のカバーなんて清志郎が演りたかったスタイルで歌えていて、面白い。
『ソフトロック・ヒッピーズ』は昨年出た、和モノ再発シリーズものの一つとして出されたコンピ。はっきり言ってとっちらかった出来で感心しなかったが、1972年の上田正樹のデビューシングル”金色の太陽が燃える朝に”を収めていたのには参った(ちなみにB面には石田長生、佐藤博が参加していた)。この曲、作詞はやなせたかし。曲は後藤秀子。最高にグルーヴィーな16ビートで妙に印象に残っている。