/ いつもミュージック ( Canyon C25A0105 / 1980 )
AOR時代に残した、フォーク界のメロディメイカーの佳作。ソニー時代に花開いたポップセンスがここでも撒き散らされている。良いのはA面。フォーキーさとポップさのバランスが良い。タイトル曲A-1はドゥービーズを思わせるギターカッティングにGeorgy Porgyばりのコーラスが絡む印象的な1曲。A-2”看板娘”はほのぼのした下町ポップ。A-3”占いを信じるのかい”は、「されど私の人生」を歌っていた人とは思えないほど前向き。3フィンガーのA-4”船出”も驚くほど良い。A-5”これでおしまい”はフォークファンが悶絶するスローバラードナリ。
次にB面を見ていこう。B-1”いつかきっと”はウェイト風バラード。B-2”斜陽”は2000年の『生田敬太郎&斉藤哲夫』でも再演されている今村平太作のフォーク小品。B-3”Do The 大森 Rock’n Roll Yah!”、これは大森をダウンタウンに見立てて歌うロックンロール。シャネルズも大森ブロンクス、と似たようなこと言ってましたが。B-4”グローリア”はもっともエイティーズな展開のサビを持つ作品。ボーカルを取っ払って曲だけを見てみると、90年代初頭まで数多のバンドがこんな感じの曲を歌っていくことになるわけで、何においても「早かった人」だという印象は拭えない。B-5”ニューモーニング”はニューミュージック風のポップロックでいただけない。
それにしてもURC〜CBS〜キャニオンを横断したベスト盤を出せないものなのか。『GOLDEN J-POP THE BEST 斉藤哲夫』は、ソニー時代のアルバム未収録シングル2枚(”Good Night Mr.Moonlight/”ラブ・ソング”、”思い出のレター/旅に寄せて” )が入っていたから許せるにしても。URCからのアルバム未収録シングル”されど私の人生/われわれは”も重要曲の割に気軽に聴けないというのもおかしな話だ。”ピカピカ”だって他人の曲とはいえムーンライダース繋がり、そんなに悪い曲でもない。コンピでしか聴けないのは謎。センチメンタル・シティ・ロマンスから中野督夫、野口明彦(EX.シュガーベイブ)の二人がサポートした自主盤『ダータ ファブラ』(1994)も相当の出来だったし、この辺の楽曲もキャリアを通して聴いてみたい気分になる。まあ旺盛なご本人のライブ活動がキャリアの総括を許さない所もあるが。
そうしたことも含めて、現在レコーディング中だというセルフカバー盤に期待!ココ(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20070528)での再録も良かったし。