/ Back to Bacharach ( Victor /2008 )
バック・トゥ・バカラック。本人参加の素晴らしいバカラック作品集。最近しみじみ聴いている。歌うはスティーヴ・タイレル。セプター・レコードのA&Rとして、B.J.トーマスやディオンヌ・ワーウィックを手がけたことでお馴染み。バリー・マンの名盤『Lay It All Out』をリリースしたレーベル、New Designのオーナーとして、そしてエルヴィスの”Suspicious Minds”の作者として知られるマーク・ジェイムスの唯一作をプロデュースしたことでもSSWファンには知られている彼、ひょんなことから知名度を上げている。
きっかけは映画『Father of the Bride』用に歌ったスティーブのデモ歌唱”The Way You Look Tonight”。コレがいけるじゃないかとという話になり…なんだか出来すぎたオハナシですが。
てなわけで、50代になってから、敷居が低く馴染みやすいジャズ・ボーカル盤をリリース。今までに所謂“ホリデイ・アルバム”を含め計6作を残していた。ロッド・スチュワートの“グレイト・アメリカン・ソングブック”シリーズの元ネタにもなったその諸作は(尤もロッドのシリーズ3作目ではスティーヴがプロデュースに加わった)、欧米でもジャズボーカルモノにしては破格の売り上げを記録している。
それにしても7作目の本作は素晴らしい。元々バカラックに目が無いと言う贔屓目があるにせよ、良い。冒頭M-1”Walk on by”のマイナー・メロにタイレルのダミ声が絡む辺りから堪らない。バカラック本人がピアノで加わったM-3”This Guy’s In Love”とM-8”I Just Don’t Know What To Do With Myself”は2003年の『This Guy’s In Love』で既に採り上げていたもの。ただし、M-3”This Guy’s In Love”にはオリジナル・シンガーであるハーブ・アルパートのハミングとトランペットをオーバーダブして(録り直しではないと思う)、前作以上の仕上がりに。さらに良かったトラックは、スティーブに加え、ジェイムス・テイラー、ロッド・スチュワート、ディオンヌ・ワーウィック、マルティナ・マクブライドという豪華なシンガー陣が歌い継ぐM-5”What The World Needs Now”。バート自身もピアノで参加している。“この世界に必要なのは愛なんだ”と歌い切るメッセージが、争いの絶えぬこの世界に今も響く。B.J.の出世作M-14”Raindrops Keep Fallin’ On My Head”はB.J.とはまた違う、リリカルなアレンジで聴かせる。見事。
使うミュージシャンはボブ・マン、アラン・シュワルツバーグと言った、70年代のB.J.盤やマーク・ジェイムス盤でお馴染みの人々。ウィル・リーやリー・スクラーの名も。ちなみにこの盤、どうせ買うなら2曲のボートラ目当てで日本盤以外有り得ない。
ベテランの新作で最近気になっているものを。まずはブライアン・ウィルソンの『That Lucky ld Sun』。これはDVD付をアマゾン買いするのが良さそう。さらに、お前もか的なカバー集だが、ジェイムス・テイラーの『Covers』。弟リヴはレコーディングしていた“On Broadway”、ジェイムス版ではライブ音源でしか聴けなかったもの。さらに、ジム・ウェッブ/グレン・キャンベルの”Wichita Lineman”なんてのも聴く前からハマッている。期待。さらに、そのグレン・キャンベルも『Meet Glen Campbell』なる新作を出す。トム・ペティ、U2、フー・ファイターズ、ヴェルヴェッツ、ジョン・レノンなどのカバーを聴かせる、爺にしては意欲作。ジャクスン・ブラウンの”These Days”なんてのもいい選曲。そのジャクスン・ブラウンも久々の新作『Time The Conqueror』をリリース予定。ランディ・ニューマンの『Harps And Angels』も気になる一枚か。今度は日本モノに目を移すと、再発では岡林の復刻。以前にCD化されなかった音源や盤を含むとのことで目が離せない。お金はいくらあっても足りません、ね。