/ Duets friends & friends ( 2008 )
本当にホッとするアルト・ヴォイス。田舎に帰るような気持ちってこんなものなんだろうか、なんとも懐かしい歌声。こんなにも母性を感じさせる歌手もそう多くはいないだろう。カレン・カーペンターなんかとは被る所があるのだけれど。
アン・マレー。カナダを代表する国民的歌手だ。時流に耐えうるゴージャスなボーカル・アルバムを作らせたら右に出るもののいないフィル・ラモーンがプロデュースしたコノ新作、見た目はすっかりおばあちゃんになり、声量も往時よりは落ちた感もあるが、そこは豪華な女性アーティストの面々が上手くフォロー。代表曲をコレデモカと聴かせてくれる。アン・マレーと言えばランディ・グッドラム作の”You Needed Me(辛い別れ)”なわけだけれど、これもシャナイア・トウェインとのデュエットでモチロン収録(M-10)。この曲はじめオリジナルのアレンジを大方崩していない所がいい。ニッポンの歌謡曲同様、ボーカルものの大胆なアレンジ変更は大概のファンに歓迎されないものだし。
ケニ・ロギのM-1”Danny’s Song”、スティーブ・ドーフの名バラードM-2”I Just Fall In Love Again”、ケニ・ロギの従兄弟であるデブ・ロギ(失礼!デイブ・ロギンス)とデュエットしてヒットしたM-11”Nobody Loves Me Like You Do”、同じくカナダのSSWジーン・マクラーレンの作ったM-15”Snowbid”などは申し分ナシ。キャロル・キングのM-7”Time Don’t Run Out On Me”には作者本人が参加。その他の共演陣はと言うと、ダスティ・スプリングフィールド、エミルー・ハリス、オリヴィア・ニュートンジョン、K.D.ラング、エイミー・グラント、セリーヌ・ディオン、サラ・ブライトマン、シェルビー・リン、インディゴ・ガールズ、ケルティック・ウーマン、マルティナ・マクブライド…などなど錚々たる面子。ゲスト陣の寄り添い方はさながらアン・マレーのTVショウを観ている気分。
ちなみにアン・マレーのオリジナル盤、70年代初頭のものにハズレはない。個人的には初めて買った1970年の『Snowbird』、シングル盤でロジャニコ作のタイトル曲を買い、興奮した1971年の『Talk It Over In The Morning』、同年のグレン・キャンベルとの共演盤なんかが忘れがたい所。60年代のカナダ時代の2作もCD化されている。ただし1stはオフィシャルではないが、いかがわしい盤『Both Sides Now』で入手可能だ。