/ Dirt Farmer ( 2007 )
昨日のブログで紹介したが、マーク・コーンの新作でもレスペクトされた、ザ・バンドの伝説的なドラマー兼ボーカリスト、リヴォン・ヘルムの28年ぶりの新作。90年代に入ってからは、リンゴ・スターのオールスター・バンドやバンドの再編作、リヴォン自身のバンドの自主盤なんかで音を聴くことは出来たが、咽頭癌を患ったとの情報が入ってからは、往時の歌声はもう取り戻せないと誰もが諦めかけていた。おそらく本人もそうだったに違いないのだが、ここへ来て、あの粘っこい南部唱法が蘇ったというのだから、諸手を挙げて喜ぶ他ない。
ヴァンガードからのリリースで非常にルーツ色の強い内容。プロデュースはディランのバックで活躍したラリー・キャンベル。自らが幼少時に両親から聴かされたトラディショナルを中心に取り上げている。冒頭のM-1”False Hearted Lover Blues”から自身のドラムで熱唱。絶好調ナリ。綿花畑のジャケからして自らの南部ルーツを意識してのものだが、そのタイトル作では娘のエイミー・ヘルムとのデュエット。エイミーはその他数曲でもハーモニー・ボーカルやドラムスを担当する。
スティーヴ・アール作のM-3”The Mountain”はザ・バンドのタッチ。フィドルやマンドリンがいい感じ。もうここにはいないはずのリック・ダンコのすすり泣くハーモニーが聴こえてくる。M-10”Single Girl, Married Girl”もリヴォン自身のドラムスでザ・バンドっぽい。これはA.P.カーターの楽曲。M-7は女優Anna Leeを歌ったもの。”The Weight”の歌詞にも登場したものだ。
ちなみにカントリー歌手のバディ・ミラーが1曲を提供し、コーラスでも参加。ラストワルツにも参加していたエミルー・ハリスのプロデューサーを務めたこともあるポール・ケネリーが2曲書いている。
この盤、ウッドストックのリヴォンのスタジオでレコーディングされたもの。ウッドストックと言えば、ジョン・セバスチャンの新作が出たのも喜ばしい。歌は衰えたもののこちらもルーツに根ざした作品だった。