/ “Flying Saucer 1947” ( 2007 )
うーん、余りにゴキゲンな盤ゆえ、にわかにレビューするのを忘れていた。悪いけど多羅尾伴内楽団なんか買ってる場合じゃないです。今年は資金繰りに苦しみ中止と相成ってしまった狭山ハイドパークフェスで昨年、ホソノハウス回帰を目にして以来、「もっとやればいいのに」と思い続けていたのだが、そうしたファンの願望と細野さんの満足感が一致していたのか、「東京シャイネス」の諸活動でまたまた形になり、今回のスタジオ作にまで繋がってきた。想定内。だがしかし嬉しい。ところでこのバンド、徳武弘文ら腕利きぞろいながら、高田漣・浜口茂外也という2世を加えているところが、日本のポピュラー音楽の歴史をも背負っているようで。
今回、詳細なブックレットの自身による解説やコシミハルとの対談に、本作への道程やオリジナルの種明かしなどが明記されており、特にここで説明することは省略したいが、戦前亜米利加のカントリー(本当は亜米利加音楽と呼びたいが)の匂いをプンプン感じさせる作。ディランの近年の活動なんかも思い出させてくれる。テクノ・ヒップホップに刺激された80年代のM-3”Body Snatchers”やM-9”Sports Man”が意外なカントリーアレンジになっているのも面白い。個人的には、ミッキー・カーティスをゲストに呼んだM-1”Pistol Packin’ Mama”そしてM-2”The Wayward Wind”というカバーモノが抜群に良かった。最近くぐもりがちで、「東京シャイネス」のDVDでも不満だった細野の歌声が活き活きしている。旧いマイクの効能か? タイトルと関連したM-4”Flying Saucer Breakdown”、M-7”Morgan Boogie”、M-10”Shiawase Happy”、M-11”Pom Pom Joki”再演といったリズムものはいぜんゴキゲンな仕上がり。しかし、森高千里M-6”Miracle Light”のセルフカバーは冴えない。さらに、UAをゲストに加えたM-11”Yume-Miru Yaku-Soku”ではエレクトロニックを入れてしまった。これは唯一の失敗。なんだか本作のコンセプトをブレさせてしまっていて、調味料にもなっていない。
ということで、10曲目まででこの作品は終わっている。後半2曲は邦盤のボーナストラック気分で聴いてます。なんて言ったら失礼か!?