/ 僕は今ひとり ( 1974 )
ここのところ気になっているがまだ買っていない盤はと言うと、ピーター・ゴールウェイの新作『RHYTHM&BLUES』と1976年のホームレコーディング集。さりげなく良い音楽を作る人ナリ。とはいえFABと言うとジョン・リンドが結構好み。ホワイトホースやハウディ・ムーンだけじゃ満足できず、とうとう手を伸ばしたのは作詞家兼SSW、アリー・ウィリスのデモ用サンプラー。e-bayで落とし、届くのを今か今かと待っているのだが、コレ、2枚組LPでそこにはリンドが歌う”Boogie Wonderland”(もちろんEW&Fの名曲!)のデモが。まあその筋のファンにはそこそこ有名な盤なのだが。
さて、ポリドールMR5000番台シリーズ第2弾が出ました。SSW時代の林哲司の盤はかつてLPを買った記憶があるのでその姉妹盤、佐藤健に手を伸ばす。圧倒的な歌唱力を誇るソウル歌謡の帝王、大橋純子の夫。大橋のバックバンドである美乃家セントラル・ステイションのメンバーとして”シンプル・ラブ”、”クリスタル・シティー”、”サファリ・ナイト”など名曲のソングライティングにも関わっている。バブル世代にはclassの"夏の日の1993"なんかの作曲で知られている。美乃家と言えば一風堂結成前の土屋昌巳も在籍していたのだが、この佐藤盤にも土屋は参加している。他には林哲司、増尾元章(今回の再発でソロ盤が出た)、見砂和照(EX.美乃家)、斉藤伸夫らがサポート。ちなみに増尾、佐藤はエレックにライブ音源を残すピース・シティのメンバー。
いわゆるソングライターズ・ヴォイスであることは想像していたが、意外と(失礼!)聴ける歌声。音程の不安定さや気張った感じもさほどなく好感触。バラードずくしだが飽きさせない。タイトル曲A-1”僕は今ひとり”は日本人離れしたバッキングに展開される王道バラード。堂々たるモノ。ビートルズ志向と言うがそこまでビートルズっぽくも感じられない。あえて言うならマッカートニー的センス。センチメンタルなA-2”いつか時計台”なんかを聴くとむしろギルバート・オサリバンを思い出す。コレはいい曲。杉真理が作りそうな曲だが、1974年の日本でこの音は早い!そう言えば同じくギルバート・オサリヴァン狂の来生たかおが作った”シルエット・ロマンス”が大橋純子の代表曲になったこととも奇妙な符号を感じる。A-4”まちがい電話”だけがどうにも浮いて聴こえる駄曲ながら、その他9曲は素晴らしい出来。ドリーミーなB-1”夢でいいから”、ソウルフィールに充ちたB-3”愛も消えて”にしても、もしこんな音が喫茶店で掛かってたら、気になってしょうがないだろうなあと思わせられる。好盤。