/ Brilliant From Birth ( Festival Records D46066 / 1998 )
スティーブ・キプナー繋がりでオーストラリア時代のビージーズを久々に聴いてみる。少年時代のバリー・モーリス・ロビンのギブ3兄弟の録音。いかなる編集盤にも勝る2枚組63曲と言う凄まじいボリューム!しかしコドモと侮るなかれ。多くを長兄バリー単独で手がけたソングライティングも、演奏力も、トニカク光っている。若さだけじゃなく、確かな実力に全く持って驚く。ディスコなビージーズに嫌悪感のあるリスナーも、一聴の価値アリですよ。音はブリティッシュ・ビート・バンド、とりわけビートルズの影響が大。後の1978年の映画サージェントペパーズではビージーズがビートルを演じているし。
カバーモノも面白くて、Disc1-11ではアーサー・アレクサンダーの”Everyday I Have To Cry”を。アーサーはジョン・レノンもお気に入りで、ビートルズの1stでは”Anna”が選曲されていた。ここでのバリーのボーカルには後の”To Love Someboby”なんかで聴けるソウルフルな歌い回しがチラッと顔を出す。Disc-1-23”Hallelujah I Love You So”のジャジーな歌いっぷりも10代とは思えない。その他はDisc2-15ではラヴィン・スプーンフルの”Daudream”、Disc2-27ではチャド&ジェレミーの”Yesterday’s Gone”、Disc2-30ではホリーズの”Just One Look”をカバー。”Just One Look”のクレジットがHicks-Clarkeとなってるのはミスですね。
ビートルカバーのDisc1-32”From Me To You”やDisc2-28”You Won’t See Me”、Disc2-31”Ticket To Ride”なんかは完コピで笑える。オリジナリティはマネからこそ生まれると知る。Disc2-19”Paperback Writer”に加え、リフがその亜流と思しきDisc2-18”Exit Stage Right”なんてのもあったりして。”From Me To You”の変声期前のロビンには一昔前のハンソンを思い出す。
中身が充実しているのはDisc2の方。ライチャス・ブラザーズを意識したDisc2-1”Monday’s Rain”に始まる。同時期のブリティッシュ・ビートものに肉薄するDisc2-2”All Of My Life”なんて、ジョン・レノンかと思ったもん。この器用さがビージーズの強みでもあり、音楽的評価を後回しにされてきた理由でもある。化け物の如く芸術的ヒットを量産しても、扱いは下世話な二流ってな感じで。特に国内では。私はカナリ、ビージーズを評価してますが。
切ないビージーズ・メロが早くも顔を出すDisc2-6”Glass House”やDisc2-16”Forever”なんてのもある。また3年前、サントリー烏龍茶のCMでリヴァィヴァルしたDisc2-13”Spicks & Specks”のオリジナルも収録。コレは震える出来!単純なメロだが目くるめく転調で盛り上げていく辺り、既に完成されたビージーズ曲。
最後に注目したいのは、”Spicks & Specks”と同じく『小さな恋のメロディ』で再録版が有名になったDisc2-21”In The Morning”。こちらのオリジナル・ヴァージョンは周知の再録ヴァージョンに比べ、テンポの速いカントリー的なタッチだが、曲自体は既に完成していたことが窺える。