/ Nine ( Antilles 7023 / 1974 )
最近ティム・ハーディンを改めて聴いている。フォークをベースにジャズやブルーズを取り込んで、誰にも真似できない独特の音世界を形成した彼。その声色には、フレディ・ニールなんかと同様、聴き手を飽きさせない深さがある。”If I Were A Carpenter”、”Misty Roses”、”Reason To believe”…様々なカバー・ヴァージョンが存在する名曲群を残しているが、ミュージシャンズ・ミュージシャンと言った感じもある人。とは言えマニアックでもなく、そうした万人受けするヒットも作れたりと、割とポップな印象もある。
今回取り上げる本盤は中でもとりわけポップな音作りを目指した珍しい作。何しろジェイムス・テイラーのB-4”Fire And Rain”を取り上げているくらいだし。嘘だろって感じ。でもこの曲、JTの中でもAメロなんかは捻くれた感じ。さらにサビはソウル/ゴスペルっぽく料理できそうだし、ティムの好みには適合していないとも言えない。まあそれはいいとして、1974年イギリス録音の最後のスタジオ盤。ジミー・ホロウィッツのプロデュースでピーター・フランプトン、ストローブスのジョン・ミーリング、ステイタス・クオーのアンディ・ボウンなどが参加。
冒頭A-1”Shiloh Town”は陰鬱なエレキ弾き語りに始まるいつものハーディン節。だが、ピーター・フランプトンがギター参加するA-2”Never Too Far”、A-3”Rags And Old Iron”なんかは、マイナー調で押す比較的ポップなロック曲。レスリー・ダンカンやマデリン・ベルがコーラスを入れている。さらにソウルっぽいA-4”Look Our Love Over”の味なんてたまらない。曲調はティムがレパートリーにしていた”House Of The Rising Sun”の進化形。ストリングス入りのアンディ・ボウンとの共作A-5”Person To Person”もサビが実にポップ。ジミー・ホロウィッツがいいオルガンを入れている。こんなにソウルフルに歌える彼の喉。フォークの域を超えている。
サックス入りのB-1”Darling Girl”のノホホンとした哀愁。リラックスした音作りがかなり良い。M.アルバカーキの作とのこと。いつものブルーズB-2”Blues On My Ceiling”も若手を交えた音作りで違った感触が。直球のソウルB-3”Is There No Rest For The Weary”もヨシ。ラストB-5”While You’re On Your Way”は地味だがやっと少しフォークっぽいテイストも。でもファルセットなんかを使って技巧的な一面も。
晩年の『The Homecoming Concert』のCDって廃盤になっちゃってますが、欲しい!!LPもそこまで安くないし。