/ Some Enchanted Evening ( Atco / 2007 )
楽しみにしてました…アート・ガーファンクルの新作!輸入盤が出た。国内盤リリース情報はまだ出ていないのだが早速購入。ボーナストラックがあったら買い直すか…鬱だが。
個人的にアート・ガーファンクルと言えば音楽の裾野を広げてくれた大恩人。S&G絡みをコンプリートにするコト、高校生の頃、自らに課せられた使命だと思ってました。サイモンは自作自演歌手だったが、アーティは純粋なボーカリスト。ただし自らの声に見合った楽曲を探してくる勘がとにかく尋常じゃなかった。例えば一番相性の良かったジミー・ウェッブはじめ、スティーヴン・ビショップ、ギャラガー&ライル、クリフォード.T.ワード、ロジャー・ニコルズ、アルバート・ハモンド、エリック・カズ、アダム・ミッチェル、ジュールズ・シアー、マイク・バット、ピーター・スケラーン、キャット・スティーブンス、ジョン・セバスチャン、スティーヴ・イートン…。アーティスト単位というよりも、繊細でロマンティックなアーティの肉声を最大限生かせる「楽曲」単位で選び取るセンス。スティーヴィー・ワンダーでも敢えて”I Believe”を選曲したり。しかしそれにしても、私自身の音楽の好みとほぼ一致している顔ぶれであること、つまり「アーティ探索」が私の趣味志向の礎となったこと、に改めて驚かされるのだ。
さて前置きが長くなったが、本作はS&G再結成を挟んで久々のソロ盤(前ソロ作はマイア・シャープ、バディ・マンドロックとのトリオ盤)。2枚目のソロアルバム『Breakaway』(1975)に次ぐリチャード・ペリー・プロデュースの大甘なポピュラーボーカル王道盤に仕上がっている。なぜかロビー・ロバートソンにスペシャル・サンクス。チェット・ベイカーとジョニー・マティスの影響下にあることをアーティ自身種明かししている。(そう言えばアーティの『Up ‘Til Now』に収録された新録数曲と同じ質感を持つジョニー・マティスの盤は『In The Still Od The Night』)参加陣は手堅いスティーブ・ガッド、ボブ・グローブ、ディーン・パークス、アレックス・ナヴァロなど。前作のお供、マイア・シャープがテナー・サックスで参加している。
しかし、ディーン・パークスのギター(アコギ・エレキ)が効いていて、よくある単なるボーカル盤にはなっていない。S&G以来のフォーキーなアコギとボーカルの相性の良さを織り交ぜている辺りがニクイ。かと言って1997年作『Songs From A Parent To Child』に感じた安っぽさは消え失せ、ゴージャス感もあるし、最高に良い。まあでも『Songs From A Parent To Child』はジョン・セバスチャンのギター&ハープで歌う”Daydream”などが入っており捨て難かった。
アコギでスタート、冒頭M-1”I Remember You”から個性を発揮。一時期衰えたかに思われた声も、全盛期の艶を取り戻している。ガーシュイン M-2”Someone To Watch Over Me”もガットギターにストリングスが絡む冒頭でとろける。M-3”Let’s Fall In Love”ではガッドの粋なドラムスとアーティの高音が見所。ドゥ・ワップっぽい循環コードとこの人の声は実に合う。そう言う視点で言えばドリーミーなドゥ・ワップM-11”Life Is But A Dream”なんかも即死モノ。あと、M-4”I’m Glad There Is You”みたいなプログラミングが入った数曲もそうそう悪く無い。90年代の諸作と似た質感か。『南太平洋』のM-9”Some Enchanted Evening”も打ち込みだが、コンテンポラリー感を出そうとしたものだろう。生音に拘りエコー薄めにすると意外とジジ臭い音になることはココ10年の試みで実証されているし。ラストM-13”If I Loved You”も簡素なバッキングで透き通る歌声を味わえる。
うーむ…早速愛聴盤になりそう。。アーティの歌うスタンダードの良さ、以前から彼がちょこちょこトライしてはいた路線だが、個人的にそもそもは『恋愛小説家』サントラでの”Always Look On the Bright Side Of Life”(モンティパイソンだけどね)で味を占めた。素材はいくらでもあるわけだし、この路線、もっと演って欲しい!!