/ Beached ( MHCP 1149 / 1977 )
久しぶりに良い再発シリーズ。ここの所ソニー・ミュージック・ダイレクトからゴールドブライアーズにロバート・ジョン、バッキンガムス、スコット・マッケンジー等ナドの名盤が続々紙ジャケCD化している。ポール・ウィリアムスの『A Little On A Wind Side』やパメラ・ポランドなんて渋い所まで。
今回ここで取り上げるのはビーチボーイズの故カール・ウィルソンとビリー・ヒンチ(ex.ディノ・ディシ&ビリー)がプロデュースした、リッキー・マーティンの隠れ名ボーカル盤。と言ってもラテンの貴公子ではなく、名ボーカリスト、ディーン・マーティンの息子。ディノ・ディシ&ビリーのディノの弟でもある。カリフォルニアの芸能一家コネクションですな。そう言えばイクイノックスから出たジャック・ジョーンズ盤もそうでしたが、ショウビズ界の王道ボーカリストとビーチボーイズファミリーの相性は抜群だと思う。まあ今となってはビーチボーイズもアメリカ芸能の王道と言える位置にいるわけだし、共有しているものは同じなのか。
M-4”Everybody Knows My Name”をカールと共作している他はリッキーの自作というのもオドロキの楽曲の良さ。M-1”Stop Look Around”から涙を誘うピアノの音色が。コレが聴きたかったんだよ、という70年代ビーチボーイズなエコー感でカールのコーラスも夢心地。かなりの名バラードだ(M-12のシングルヴァージョンも必聴)。Bメロはランディ・グッドラム作でアン・マレーが歌って大ヒットした”You Needed Me”を彷彿とさせる。”I Write The Songs”なんかと続けて聴きたいです。M-2”Moonbeams”はラスカルズで言うところのグルーヴィンな感じの長閑でトロピカルな一曲。ギターソロもいい。あとはカールが歌っているようにも聴こえるバラードのM-5”Streets Of Love”、ジミー・ウェッブかのような粘りつくメロが心地良いM-6”Spark Of Me”などが心に残った。殆どが自らの恋愛や過ぎ去りしスクールデイズを歌うラブバラード。とは言えリッチな2世遊び人の道楽レコードとは言えない完成度。カールの名ソロ盤にも聴ける明るさの中にある悲しさが魅力。シカゴのピーター・セテラやアメリカのジェリー・ベックリーがコーラス参加、ヴァン・ダイク・パークスもシンセで貢献している。もちろんビーチボーイズからデニスとリッキー・ファターも(ドラムス)。ところでシカゴとビーチボーイズは”Beachicago(ビーチカゴ)”ではかつてジョイントツアーを演っていた。