/ Complete Asylum Recordings ( Rhino 2006 )
なんとなく慌しい毎日。前回の更新から知らぬ間に時は流れ。次期首相と目される人物は4月にコッソリ参拝してましたが、先日の終戦記念日には現首相が堂々とやらかしてしまったり。さらにそれを批判していた失脚元幹事長の家が焼かれてしまったり。ウンザリしてるわけなんですが、かと言って漁船が銃撃されれば、ロシアコノヤローとなってしまう自分もいたりするわけで複雑です。
まあそんなことはいいとして、ジュディ・シル。ライノ・ハンドメイドから2003年に限定リリースされていたボーナストラック付きのアサイラムからの2枚(『Judee Sill』『Heart Food』)が1枚にパッケージされて出ました。初めからこの形で出さんかい、と突っ込んでしまうが、ボーナストラック付きを買わなかった人にとっては嬉しい再リイシュー。caiman americaから購入すれば送料込で2200円くらい。こんな名盤をこの値段で手に入れていいものか、手が震えます。
ブックレットは表1、表4に2枚のジャケがキレイに印刷されており、オリジナルの感触を求めるファンも満足。長文ライナーもある。
とにかく中身は心洗われる神聖なフォークサウンド。まず1971年の1枚目M-1"Crayon Angels"から時空を超えた完成度に言葉もない。ジョニ・ミッチェルと比較されることもあるのだが、もちろん女性SSWの先駆としては共通性も無くはないが、彼女よりもっと素直な印象。カントリー、教会音楽、ゴスペル風味なソングライティングも歌声も。そして、正座しなくてもスッと耳に入ってくる優しさがなんとも言えずいい。ドラッグ禍など幾多の試練を乗り越えた彼女が素直に向き合えるのは音楽だけだったのか、もちろん知る由もない。M-4"The Lamb Ran Away"、タートルズに提供したM-5 "Lady-O"、M-6"Jesus Was A Cross Maker"(グラハム・ナッシュがプロデュースし、クライディ・キング、リタ・クーリッジらがコーラスを聴かせる)の流れが最高。ボーナストラックで言えば、セカンドに入るM-12"The Pearl"、M-13"The Phoenix"の弾き語り基調のオリジナルヴァージョンも良い。ボストンでの1971年のライブは観客の熱狂と比してレコーディングと変わらない落ち着いた演奏。ジュディが隣で歌っているような錯覚も。
お次は1973年のセカンド。M-1"There's A Rugged Road"がショーン・コルヴィンがカバーしていたからか、個人的には印象深い。M-2"The Kiss"でピアノが入っているのはまだしも、透き通る歌声をかき消しがちなバンドの音が1枚目と比べ気になる人は気になるかも。個人的には嫌いではない。しかも、1枚目のリリース時のライブで既に演奏されていた曲目も相当入っているので、2枚目では、同じ素材を使いながらアナザー・サイド・オブ・ジュディ・シルを出そうとしたのだろう。M-9"The Donor"は堕ちて行くブライアンを思い出す、悲痛曲。1枚目よりも元気じゃないと聴けない。こちらのボーナストラック、まずアウトテイクM-11"The Desperado"(イーグルスとは同名異曲)は1枚目を思い出す密度の濃さ…。さらにM-12〜M-19は2枚目のピアノ/ギターでのソロデモ!凄い。
本気でお腹一杯になってきました。