/ Greatest Hits Acoustic ( BMG 46893 / 2002 )
ビートルズに影響を受けたビートルもどきの音は、メロディやコード進行を単になぞったようなものが多く、余程の愛が感じられない限り聴くに耐えないものだ。しかし、ビートルズも感化されていた、"ロック紀元前"の音楽にも等しく感化されたマーシャルの音楽は、生きた時代は異なれど、ビートルズが作り出したロック/ポップのマスターピースと等しい価値があると感じることがある。愛があるのはもちろんだが、彼特有の甘酸っぱいメロディが書けていて、ビートルズにもこんな曲は作れないなと思わせられるものが少なくない。
ブライアン・ウィルソンのバンドメンバー(カール役)としてすっかり御馴染みのふとっちょジェフリー・フォスケットが尊敬するソングライターとして挙げていたマーシャルクレンショウ。彼の音楽の実力に参ったのは、オリジナルアルバムではなく、アコースティックライブ集。海賊盤の如き粗悪なジャケットの盤だが、内容は実に素晴らしい。バンドサウンドを狂うことなくギター一本で表現し、歌う生の迫力に、レコーディングに執着するポップスマニアだろうというある種の偏見は吹き飛んだ。何より、メロディの美しさ!そこからオリジナルアルバムの魅力に気づいたというのは少々ひねくれていたかもしれない。
“Beatlemania”でジョン役を演じ、バディ・ホリーを模した風体でデビューを果たした彼の1stからは、ヒットしたM-1”Someday Someway”、M-3”Cynical Girl”、そして、一生でこんな素晴らしい曲を書けたら死んでもいいという位のM-9”There She Goes Again”が歌われている。ちなみにそのデビュー盤には、ビートルズの1枚目がそうであったように、アーサー・アレキサンダーの楽曲が一つ収められていた(”Soldier Of Love”)。1stのプロデュースはリチャード・ゴッティラー。彼の手がけたロバート・ゴードン盤でも”Someday Someway”はヒットした。1979年に録音され、1982年にシングルカットされたM-2”You’re My Favorite Waste Of Time ”も最高。さらに、2ndからはビル・ティーリーとの共作M-5”Whenever You’re On My Mind”がごきげんな仕上がり。リフも含めて弾き語っている。
もちろんこの盤、聴き始めとしては邪道かもしれない。オリジナル音源も必聴だ。ファーストはもちろんだが、入門編としてはライノからのベストがベスト(?)。