/ Playin’ It Cool ( Elektra AMCY-3012 / 1984 )
5、6年前にレコードで手に入れたものの棚に眠らせてあった80年代のウェストコーストものを最近CDで買い直し、改めて聴いている。ジミー・メッシーナとかアルバート・ハモンドのLA盤とか。これもその一つ。ポコ(プレ・ポコ時代もありますが)からイーグルス、そしてソロ作に至るまで、クオリティの高い楽曲と日本人好みの繊細なボーカルを聴かせてくれるティモシー.B.シュミットだが、本作は彼のソロデビュー盤で、80年代LAロックの音に色目を使った時期のもの。サントラに便乗し、イーグルスの同僚グレン・フライやドン・ヘンリーも、同様の音作りでソロヒットを連発していた。LPを買った当時は単なる産業ロックじゃないかと打ち捨てていた盤だが、今聴いてみるとノスタルジックな気分にも浸れてそんなに悪くない。トトの面子やジョー・ウォルシュ、リタ・クーリッジなど参加メンバーも豪華だし。
アート・ガーファンクルも『Lefty』で後にカバーしたThe TymesのM-3”So Much In Love”は未だにラジオで耳にする名演。指パッチンの本盤のジャケもコレに合わせたものでしょう。そういえばビリー・ジョエルの”The Longest Time”はこの歌辺りをタネにしているのだろうか。『初体験リッジモンドハイ』のサントラ収録曲でもある。このサントラは、イーグルス周辺のウェストコースト勢総参加で相当出来がいい。M-5”Voices”は山下達郎かと思う多重コーラスと自身のアコギで聴かせるバラード。CSNっぽさもあるが、そう言えば1982年のCS&N再結成盤『Daylight Again』でティモシーはコーラスに大活躍していた。ちなみにそのタイトル曲ではアート・ガーファンクルがコーラス参加している。他では、90〜00年代のソロ作で磨きがかかってくるティモシー節が既に聴けるミディアム”Something’s Wrong”、共同プロデュースを手がけるJosh Leo作のM-2”Lonely Girl”がなかなかいい。後者にはビーチ・ボーイズのカール・ウィルソンがコーラス参加している。これ、カール1995年の遺作『Like A Brother』(アメリカのジェリー・ベックリー、シカゴのロバート・ラムとのトリオ)の音となぜかよく似ている。冒頭タイトル曲M-1”Playin’ It Cool”はJ.D.サウザーがソングライティングとコーラスに関わっているが、“こりゃHeat Is On”か、といいたくなる程のグレン・フライ路線。今聴くと結構いいが。さらに、M-7”Take A Good Look Around You”は実に彼らしいポップソウルで好感触!この人のメロディラインってあくまでポップなのだが、ルーツはおそらくモータウンやフィリーソウルなどの白人向けソウル+ビートルズなんじゃないかと思う。だから、カントリーロックのフィールドにいながらにして、FMラジオ向けのアダルトコンテンポラリーを量産することができた。でもそんな彼の歌からは、曲作りの器用さと言うよりも、“ウッドストック”の仇名そのものの、ピースフルかつ優しげな個性が伝わってくるところが人徳と言えましょう。ティモシー、本作に続くソロ作3枚は本当によく聴いた。特に現在のところ最新作『Feed The Fire』(2001)は集大成とも言える出来。また紹介したい。