/ Same ( Warner 49332 / 2006 )
ヒップホップが美メロのポップスを駆逐してしまった、なんて言うのは言いすぎだと思うが、50年代から脈々と受け継がれてきたポップス〜ロックの文脈が途切れてしまったようで寂しい気分になることもあった昨今。しかし、ノラ・ジョーンズのブレイクにはじまるルーツ系、セリーヌ・ディオンにジョシュ・グローバン、マイケル・ブーブレなど王道ポピュラー系、フェイス・ヒルやシャナイア・トウェインなど女性ポップカントリー系、さらにジャック・ジョンソン周辺のサーフ系、そして近年で言えば”You’re Beautiful”のジェイムス・ブラントなどの王道SSW系、と辛うじて、現代と過去の音楽並びに音楽ファンを繋ぎとめてくれる音楽が存在している。
去年からM-3”Bad Day”が耳タコ状態のダニエル・パウターは王道ピアノSSW系の趣き。ジェイムス・ブラントのような音がイギリスを思わせたが、実はカナダ出身であるようだ(ブレイクはヨーロッパ)。美しいメロディを持つM-1”Song 6 ”、冒頭の弾き語りの触感がいいM-2”Free Loop”(これもシングルカット)、そして先ほどのM-3”Bad Day”の冒頭3曲の流れがこのアルバムの成功を証明している。ちなみにアルバムのプロデュースはミッチェル・フルーム。また、声を絞ったメッセージが切ないM-6”Jimmy Gets High”も、もう一つのシングルに選ばれていていい曲。哀しい女のバラードM-7”Styrofoam”も心に残った。デモテープそのもののようなボーナストラックの弾き語り"Stupid Like This"はうっすらストリングスが入っていい感じ。正直こういうテイストだけで通して聴きたいのだが、それでは売れない、ということか。ビートのある曲は正直ありきたりな印象を受けたが、全体的に見れば悪くは無い。とはいえこうしたビッグヒットを一発目で出しちゃった場合、次第に尻すぼみになっていくのは見えている。でも”Bad Day”は残る一曲。