/ beat cafe ( Appleseed 1081 / 2004 )
何を隠そう、と別に隠しているわけではないがドノヴァンが大好きだ。前作である1996年のRick Rubinプロデュース作『Sutras』は深遠な作品で、Donovanのキャリアにおける最高傑作だと思っている。耳元で囁くような生々しい音がオーディオチェック用にも欠かせない。さて本作はルーツ・トラディショナル系のレコードを出しているAppleseed Recordingsでの今のところの最新作。今年ボックスも出るということもあり、改めて取り出してみた。
前作ほどアクースティック感はないが、Danny Thompsonのフレットレスベースが大活躍。ジャジーなタイトル曲M-3”Beat Cafe (Beatnik Cafe)”なんか最高にヒップ。全体通してプロデュースとキーボードは、John Hiattの名作『Bring The Family』(1987)やBert Jansch『Heartbreak』(1982)なんかを手がけていたJohn Chelew。ドラムスは先のJohn HiattとはバンドLittle Villageを結成していた百戦錬磨の Jim Keltnerだ。まだヤクをやっているのでは、と思わせる程にアシッドな浮遊感のあるM-5”Whirlwind”も良いし、M-7”The Question”なんかもむちゃくちゃカッコイイ。2曲のカバー、トラディショナルの解釈M-10”The Cuckoo”ではドラムスのビートが現代性を生み出しており、Dylan Thomasの詩に曲をつけたM-11”Do the Go Gentle”ではポエトリーリーディングとまではいかないが、詩を映像的に聴かせることに成功している。M-1”Love Floats”なんかはスタックスR&Bっぽさもあり。ヒップホップなんかとも一戦交えられる柔軟性がDonovanにはあるように思える。M-2”Poorman’s Sunshine”は「Sunshine」と聞くと”Sunshine Superman”を思い出してしまうが、ユニゾンのサビが60年代作品を思わせる。ところでDonovan作品はこの曲にしても”Season of the Witch”にしても、ブルースの3コードの曲が結構多いが、これも彼の作品が様々なジャンルのミュージシャンにカバーされる要因なのか。いやはや、ビートをルーツにした60年代ヒッピーは今なお現役。元々低音で勝負していただけに高域が失われることもないし、昔のマンマでスゴイ。ソングライティングも衰え知らずだし、まだまだやれそう。