/ The Secret Of Movin’ On ( Peak 8519 / 2005 )
これは誰が何と言おうと完璧な最高傑作。コレ、Ambrosiaの中心人物David Packの3枚目のソロアルバムだが、曲良し音良しの見事なアダルト・コンテンポラリー作品に仕上がっていた。Russ Freeman主宰のSmooth Jazzレーベルからのリリースとあって、とにかく極上。打ち込みに頼らない生音勝負で、そこに乗っかるボーカルも全くの衰え知らずだ。
Ambrosiaの大ヒットアルバム『One Eighty』(1980)に収録されていた、全米3位のM-3”Biggest Part Of Me”(Take6版も売れた)、全米13位のM-6”You’re The Only Woman”のセルフカバーも新たなアレンジを加え、渋い出来。代表曲2曲を入れたことでベスト盤的要素も。とくにM-6”You’re The Only Woman”は初めて聴いた時泣きました。新たなアレンジも悪くない。いつも思うが、なんだかサビのコーラスが、Davidの盟友でもあるMichael McDonaldっぽい。当時一世を風靡していただけに意識にあったのだろうか。その他、HeartのAnn Wilsonを迎えたA-1”The Secret Of Movin’ On”は、ベタだが真夜中のFMでかかってほしい大名曲。切ないメロディにしびれる。この盤ゲストも多彩。アクースティックブルースっぽく、クラプトンがイメージされるA-4”Tell Her Goodbye”ではAmericaのDewey Bunnellが参加(ちなみにAmericaの”Horse With No Name”はCSN&Yフォロワー然とした楽曲だが、海外のサイトを見ていると、Neil Youngの曲だと勘違いしている場合が本当にある)。王道AORバラードA-5”A Brand New Start”ではDavidと同じく元バンドがオリジナルボーカル抜きで活動してしまっている元JourneyのSteve Perryが。Steveとの共作だけに、サビ前のメロディがSteveらしい。そういえばSteve PerryとかStingとかって、甲高い声が小林旭風ですね。また、A-8”Where We Started From”では元Poco〜現The EaglesのTimothy B.Schmidtが。この曲はTimothyのオリジナルかと思ってしまった。実にエグイほどにヒット性のあるメロディ。ちなみにTimothyさんの多重コーラスには山下達郎に近い完全主義的繊細さ(ある意味欧米では緻密すぎるため好まれない)があり、日本の市場に受ける。Timothyはサントラ参加も多く、映画『Steal This Movie』のサントラではCSN&Y”Carry On”の完コピ!を披露。これには頭が下がります。本家すらもう再現できないであろう、気迫の出来だ。と、話がずれてしまったが、M-10”Think Of U(Song 4 Kaitlyn)”ではコンテンポラリージャズのピアニスト/プロデューサーDavid Benoitが参加。David Benoitの1994年のアルバム『Shaken Not Stirred』でもDavid Packがボーカル参加しているがその1曲、”Any Other Time”は名バラードで必聴。
Patti Austinのヒット作などプロデューサーとしての活躍が目立った80年代後半以降のDavidだが、今回のアーティストとしてのカムバックは実に嬉しい。そういえば5年ほど前、Todd Rundgren、The Whoの故John Entwistle、Ann Wilson、Alan Parsonsと共にDavid Packが来日。それは意外にもPaul McCartney承認のコピーバンド”Abbey Road”としての来日で、友人の誘いにより幸運にもその公演に足を運ぶことが出来た。しかし、The Beatlesファン(つまり60年代ロックファン)一色に染められた会場において、おそらくDavidの知名度は最低レベル。どうなることかと思ったが、自身の”The Biggest Part Of Me”では、マイルドでソウルフルなボーカルがとても良く、観客を魅了していた。