/ Southpaw (Buddah 5609 / 1974)
元はほんわかとした優しい声のフォーキーだが、時代が既にポップ化を迫っている。これは彼の2枚目のLPだが、タイトル曲A-1”Southpow”が何と言っても良い。Michael自身の刻むアコギとハーモニカにMichael Montgomeryのピアノが絡んでいく。そういえばSouthpowというだけあって左側から取り出すようになっていますこのLP。しかし、A-2”Here We Are”辺りはディランの”All Along The Watchtower”と”Hurricane”をガッチャンコした力技というかやり過ぎな一曲。でも、切り込むようなエレクトリックギターがなかなかロック。それもそのはず、後にKissのメンバーとなるBruce Kulickの初レコーディング作となっていて、全編頑張って弾いている。A-3”What is Love”はストリングス入りの、当時では”今風”だったであろうポップバラード。A-4”Someday”はなんだかElliot Lurie率いるLooking Grassの作品のようにも聞こえる。A-5”Only A Fool Folls With Love”はマイナー調の出だしから始まりサビでメジャーになるというHappy Together的な一曲。悪くない。
B面に行くと、キャッチーなリズムパターンが心地よいB-1”Take My Love With You”が。アコギのカッティングがかすかに聞こえる辺りが潔くなりきれていない気も。拘りだろうか。寂しげなB-2”Empty Beaches”は60’sポップの色合い。B-3”Come On Baby”はアコギのカッティングでノリを生み出しているナカナカの曲。”青い目のジュディ”ライクなリフレインが印象的。Bobによるエレアコのソロが熱い。1976年のライブ盤『Recorded Live』でも一曲目を飾っている。そちらはBob Kulickのエレクトリックギターが炸裂するロックな仕上がり(このライブ盤、ロックな音と比してエラク拍手が少ないのが気になってしまうがなかなか良い)。B-4”Lost Planet”はまた”All Along The Watchtower”みたいな曲。SFタッチの壮大な楽曲というと宇宙時代以降の定番なのだが、今聞くと辟易するかも。大仰なB-4に対してラストB-5”Lullabye”はアコギとピアノで聴かせる素晴らしい一曲。下手にポップ化しないでこういう曲を演った方が個性が出たのだろうが、時代の波に翻弄されたのだろうなと思いを馳せてしまう。