/ Celebration of Life (A&M 4196 /1969 or 1970 )
このLP、The New Christy Minstrelsに在籍し、Sonny&Cherが初お目見えとなったビーチムーヴィー『Wild on the Beach(1965)』にも出演していたGayle CaldwellがA&Mからリリースした唯一作である。カーペンターズのレコード番号から推測するに1969年あるいは1970年のリリースだろう。Frank Sinatra初のポップ作となった1969年の『Cycles』にタイトル曲と”Wandering”の2曲が採用されたことから、自演を含むLPのリリースが決定したと思われる。(ちなみに『Cycles』には他にJoni MitchellやJim Webb、Bobby Russell、Gorgoni-Taylor作品が歌われているが2曲採用されているのはGayleのみだ。)プロデュースとアレンジはJeremyとのデュオを解散し、A&MのスタッフとなっていたChad Stuart。The SeekersのJudith DurhamやLambert&NuttycombeのLPにはプロデューサーとして(後者のアルバムは装飾はほとんど無いが)、Paul Williams『Someday Man』にはアレンジャーとして参加していた彼。商業的成功には結びつかなくとも、後に評価された作品も数多い。曲は全てGayleの作詞作曲である。
Tom Wilkesのアートディレクションは否がおうにも黄金のA&Mサウンドを期待させるが、A-1”The Birth of Today”からボーカルのノリも生々しく、聖なる雰囲気で驚かされる。メロディの美しい小品だ。ボーカルは弱いが、静謐な雰囲気を作り出している。A-2の表題曲”Celebration of Life”はミュージカルタッチのオーケストレイションが素晴らしい一曲。間奏の展開が面白く、後半にはチルドレンコーラスも絡む。この曲とつながるようにしてピアノとギターのアルペジオをオーケストレーションが引き立てるA-3”Wandering”はSinatraが取り上げるだけあって素晴らしい出来。フォーク的な資質を持ったSSWには書けない、広がりを持った作品だ。A-4”Morning of Lovely Thoughts”はマイナーキーの荘厳な作。トラッドのような感触もあるがこれも編曲が良い。A-5”Cycles”は先ほども述べたようにシナトラ盤では1968年に23位のヒットとなった彼女の出世作。冬から春へ季節が巡るように落ち込む気持ちにも春が訪れようか、といった曲だが、スタンダードな雰囲気で伸びやかに歌われていて、ともすれば陰鬱になりがちな彼女の歌が生きている。
B面にいくと、B-1”Man on the Corner”は一転SSWの雰囲気。同時期のLaura Nyro作品に近い肌触りでとても良い。こういったアプローチの方が彼女の歌声には合っている様に思える。B-2”Quiet Prince”でA面の雰囲気に戻って凝ったアレンジ。サイケなB-3”Lone Lily”、を挟んでB-4”Nice People”はピアノのイントロからはじまって盛り上がっていく、ロジャニコ的サウンド。やっと聴けたか、という音だ。ソフトロックファンはこの一曲でも買いだ。B-5”Understanding”は内省的な弾き語りで消え入るようにLPは幕を閉じる。これはこれで悪くない。