/ Thistles (Casino Records CA-1010 / 1978)
幼年時代の愛称をアーティストネームに据えたBimことRoy Forbesの3rd。何といっても元The Merry-Go-RoundのEmitt Rhodesのプロデュース作であることが目を引く。Paul McCartneyのセンスを受け継いだ宅録アーティストEmittは1973年の自演盤を最後に目だった活動をしていないが、それでもこんなに素晴らしいプロデュース作を残していた。
A-1 “Tender Lullaby”はBimのアコースティックギターにJai Windingのキーボードがまろやかに絡むポップロック。Bimの声は細くひしゃげたようで実に個性的だが、実にポップ。そしてドラムスはJeff Porcaro。この曲含め7曲でのプレイは、TOTO結成直前のレコーディングとしてはほとんど知られておらず貴重だ。ブルース・フォークを歌うBimをLAで、Boz Scaggsのごとく華麗に転身させようという試み、まずは成功。A-2”Right After My Heart”はアコギのイントロから始まるバラードで、80年代のJTを思わせる。ここではJeffに加え、同じカナディアンとしてDavid Fosterが美麗なピアノ参加。(他3曲でもプレイ) 実に豪華な布陣だが、Bimは演奏に主役を奪われること無くパーソナルな自分の歌を歌っている。A-3”Waitin’ For You, Mama”は、”Washigton Square”風のメロディを弾き語るBimの哀愁を帯びた絞り出すようなハイトーンが実に胸を打つ素晴らしい一曲。A-4はブルーグラス風のクリアなアコースティックギターのカッティングにイントロから驚かされるが、Bimはそれをポップに味付け。Jeffのドラムスも曲に圧倒的な躍動感を与えている。A面を締めくくるバラードA-5”Night On A Hill”はDavid FosterのピアノとBeckの父David Campbellアレンジのオーケストレイションが実に感動的。やはり個性的な歌声がいい。
B-1”High And Mighty”は一転ドラムスにアコースティックギターのブルージーなカッティングが絡む。B-2”Broke Down”も同様アコースティックギターの印象的なリフで始まる、Bim風にアレンジされた渋いブルースナンバー。ここでも弾むドラムスのノリがただものでないと思ったら、Jeff Porcaro。JeffとDavid参加のB-3”Woh, Me”はフォークっぽさを残した優しいバラード。さらにB-4”Ironbelly”は素晴らしい弾き語りの一品。イントロのハーモニクスも綺麗に決まり、そこに絡むひしゃげた歌声に圧倒。タイトル曲B-5はJeffの刻むドラムスが、ポップなメロディと相俟って80年代の産業ロックの迫力だが、そこはBim、アコースティックギターのカッティングで全編対抗するものだから、凡庸なロックに成り下がるのを未然に防いでいる。最後にEmittの貢献だが、プレイヤー参加はないものの、本作の音作りはEmittの1972年Dunhillでのシングル”Tame The Lion”と近似しているような気も。目指したのはこの辺りか。(ちなみにEmittの1980年の未発表曲”Isn’t It So”は最高のAOR。)BimことRoy Forbesはソングライター、パフォーマーとして現在も活躍中(下記URL参照)。90年代にもアルバムを残しているようだ。