(Sweet Fortune 804 /1973)
これは非常に優れたSSWであることが一聴してわかるが、残念ながらこの1枚でミュージックシーンから姿を消している。古びたカントリーハウスに座り佇むウェスタンハットの女性。彼女の紡ぎ出す楽曲は同時代の女性SSWと比較したくなるが、よく聴くにつれ他とは全く似た所が無いことがわかる。時に儚げに、時にけだるく、甲高い歌声がゆっくりと空気を撫でていく。バックの控えめな演奏も実にツボを心得ていると言えよう。インパクトで言えばやはり冒頭の"Brown Eyes"か。アクースティックギター、生々しいドラムス、ベースに続く切なくけだるい歌声に、旧いジャズを思わせるサックスが絡むサビは正に絶品。プロデューサーはジャズ/ポピュラー系で多くの作品を残すMike Bernikerであるところからすると、カントリー風情にノスタルジックなポピュラーっぽさを滑り込ませるあたりはお手のものか。トラッド風のA-3"Highway"での、モノクロの写真の背後から聴こえるギターの音色もなかなか。B-1"I Thought I Knew The Answers"も濃密なSSW世界が楽しめるが、ソウル風味も加味されており注目。やはり生々しく刻まれるドラムスに耳がいく。