発想が斬新だと感じたレコード。坂本九にリアルタイムの日本のフォーク・ヒットを、アメリカのカントリー・ミュージシャンをバックに歌わせる、という。編曲のクリフ・ロバートソンは俳優とは別人でパット・ブーンなんかを手がけた人らしい。選ばれているのが井上陽水”心もよう(Shadow of your mind)”、マイペース”東京(Tokyo)”、風”22才の別れ(Good bye 22)”、かぐや姫”神田川(Kanda gawa)”、ビリー・バンバン"やさしい雨(Rain, sweet rain)"なんていう、九ちゃんスタイルにそぐわないそうな(笑)楽曲ばかりで。ただ、意外と発見はあって、マイペース”東京”はディキシーランド・ジャズ風にアレンジされていて。確かにマイナーのシャッフルだからアメリカ人にはディキシーっぽく聴こえたのかも。明るい悲しみになっているのが九ちゃん節。結構ハマっているのは洋楽的センスを持った楽曲。五輪真弓の”ミスター・クラウディ・スカイ”とか、チューリップの”心の旅(Thinking of trip)”は素晴らしい。かぐや姫の”うちのお父さん(My father)”がまさかのレゲエ・ファンク化されている。井上陽水”氷の世界(Very cold day)”も結構ファンキー。ザ・ブロードサイド・フォーの"若者たち"はモダン・フォークだけれど、女性コーラスを交えたカントリー・バラードに変身。
そもそもラスヴェガスのミュージック・エキスポ’75に出展する目的で作られたんだとか。60年代アメリカン・ポップスのリヴァイヴァルとも連動させつつ、スキヤキソングの栄光があるキュウ・サカモトに日本のヒットをいっちょ売り出してもらおう、という魂胆。イーストで1972年に米キャピトルからデビューした吉川忠英の”悲しい歌は唄わない(I never sing a sad song)”が入っているのもそういうわけだろう。
昭和天皇の訪米に合わせてアメリカでシングルリリースされたのが”Elimo”。吉田拓郎・森進一の”襟裳岬”ですね。AメロとBメロは堂の入った英語、サビだけ日本語。カッコいいコーラスが入る中、“えりィーもの”ってのが完璧にズッコケますが、無論最高です。