松本隆さんのツイッターで、大滝詠一の墓前に手を合わせる写真を見つけて。墓石にもNiagaraとあるのを初めて知ったけれど、何となく胸がざわついた。まだ受け入れられないものがあるのかな。さて、ナイアガラ・ファンなら待望の本年3月21日はソングブックの第3弾『EIICHI OHTAKI Song Book III 大瀧詠一作品集Vol.3「夢で逢えたら」』がリリース。レコード会社の枠を取り払った86ヴァージョンもの「夢で逢えたら」4枚組、の方は予約しそびれてまだ買っていないけれど、「ソニーミュージックグループ自社一貫生産アナログレコード復活第1弾」を謳ったアナログの方が届いていた。積んどいて聴くのは今日になっちゃったけれど。あ、シリア・ポールは2枚組通常版を買いました。
で、アナログ「夢で逢えたら」は33回転で全5ヴァージョン、大滝詠一、ラッツ&スター、シリア・ポール(’87MIX←1番好きな吉田保ミックス採用はポイント高かった!)、そして新録で放牧中のいきものがかり吉岡聖恵と吉田美奈子の(夢で逢えたら2018)を。吉田美奈子新録は実兄・吉田保ミックスで。マキシシングルみたいな感じかな。定価2300円ですから、プレスの値段を抑えるためにもコレぐらいのサイズになったのだろう。ハガキサイズの歌詞カードが封入されているのみで、徹底的にコストカットを図っているけれど、音やジャケの質感は良かった(とはいえアナログらしさ、を探せるかと言われる新録も混じっているので難しい)。ラッツのヴァージョンはリアルタイムでマキシシングルとベストを買ったけれど、典型的な90年代R&Bの音で、最近そっち系のアナログを集めていることもあって、個人的にはそれをアナログで聴けたというタイムリーさが嬉しい。
ちなみになぜ「いきものがかり」吉岡さんが選ばれたのか、と考えたけれど、歌の「上手さ」が群を抜いているという事実は当然として、松田聖子に通ずるスタンダードなアイドル性と素直な歌声ながら音色に宿る歌謡性が大滝好みだったような気もする。あるいは単純に本盤がオーヴァー50のオモチャにならないよう、若い世代の取り込みを最大公約数的に狙った人選なのかもしれない。オケは大滝・シリア版のカラオケなのかな。ただその歌唱は初聴ではパンチやタイム感が強すぎて(それが吉岡さんの特徴なのだけれど)、ゆらぎとか、たゆたいとか、そんな感じのウォール・オブ・サウンドにフィットするかどうかは微妙な気もした。しかし聴き慣れると、何とも良かったのだけれど。しかしそう考えると、ソウルと言うよりジャズ・シンガー然とした吉田美奈子のさりげなく崩した2018新録歌唱に圧倒的に軍配が上がった。まあちょっとズルい勝負だけれど。大滝自身が歌詞を手がけた珍しい直球ラブ・ソング、柳家三亀松のパロディだという台詞は、取りようによってはコミカルにも聴こえてきて、そんな照れが彼らしい。でも自分自身年を重ねるに従い、単純なようで結構スゴイ歌詞だと思うようになった。つかめそうでつかめない誰かを求める、永遠のラブ・ソング。この自演ヴァージョンを自身の葬儀で流すことをあらかじめ想定していたとするならば、大滝詠一という人は不世出のロマンチストだったことになる。
さて、ナイアガラ関係で最近落穂拾いをしたのが、太田裕美1981年のシングル『恋のハーフムーン/ブルー・ベイビー・ブルー』というアルバム未収録のシングル盤。アルバム1枚分の金を投じたという豪華なストリングス入りのレコーディング。ストリングス・アレンジはA面が松任谷正隆でB面が荒川康男。楽曲は両面とも松本隆・大瀧詠一の書き下ろし。A面"恋のハーフムーン"はSongbook1収録曲だったので聴き込んでいたけれど、今まで盲点だったのはB面"ブルー・ベイビー・ブルー"の方。ナイアガラ・サウンドの寄せ集め感は確かにあって、あの曲のココとココを…という感じではあるんだけれど、全くもって悪くない。新鮮だったなぁ。