/ Same ( Ode Z12-44006 / 1968 )
今年BeatballからCDリイシューされ、Vivid Soundから日本盤も出るそうじゃないですか!コレクター垂涎のペギー・リプトン盤。カウンター・カルチャー世代の警察モノ『The Mod Squad(モッズ特捜隊)』に出演していた美人女優で大御所クインシー・ジョーンズの3番目の奥方(既に離婚)でもある彼女のレコード。リリースはルー・アドラーの作ったレーベルOdeから。プロデュースも彼が手がけている。ペギーは後に『ツイン・ピークス』などにも出演する。
Odeといえばスコット・マッケンジーの”花のサンフランシスコ”のヒットやキャロル・キングの『Tapestry(つづれおり)』などの怪物ヒット作を出したレーベル。ダンヒルをABCに売り渡したルー・アドラーが作った。そう言えばバッキンガムスのメンバーが作ったTufano & Giammarese Bandの諸作や既にCD化されたメリー・クレイトン盤、それにミュージカル、ロッキー・ホラー・ショウの盤も70年代にOdeから出ていた。
ペギー・リプトンの盤とほぼ同時期にOdeから出たの幻の一作がシティの『Now That Everything's Been Said(夢語り)』。既にCD化されて日本ではスタンダードとなってしまったが、メンバーはキャロル・キング、そして彼女がジェリー・ゴフィンの次に結婚することになるチャールズ・ラーキー(後にクイネイムス・バンド、スティーリー・ダン〜Wha-Kooのボーカリストになるデヴィッド・パーマーがボーカルを務めていたバンドMyddle Classのメンバー。Myddle Classのシングルはキャロルのプロデュース。デヴィッド・パーマーはなんと今写真家になってました→http://www.davidpalmerimages.com/)、そしてジェイムス・テイラーとフライングマシーンを組んでいたダニー・クーチ、ドラムスはジム・ゴードンという布陣。”スノウ・クイーン”はじめ洗練された佳曲の詰まった珠玉作であったことはいうまでも無い。
今回取り上げたリプトンの盤にもそのキャロルの共作・単独作が11曲中5曲(A-2”Natural Woman”、A-6”Who Needs It”、B-2”It Might As Well Rain Until September”、B-3”Wasn’t It You”、B-4”Lady Of The Lake”)含まれている。さらにバッキングにはハル・ブレインの指揮の下、ジョー・オズボーン、ラリー・ネクテル、マイク・ディージーらレッキングクルー達が集結。キャロル、チャールズ・ラーキー、ジム・ゴードンのシティ組、コーラスにブラッサムズも参加する。ちなみにB-2”It Might As Well Rain Until September ”はソングライター時代のキャロル・キング唯一の自演ヒット曲。ペギー版にオールディーズっぽさはなく、割合スローなストリングスアレンジが施されていて、とても良い!!
ここまで書くとキャロル・キングの70年代に入ってからの自作自演盤を先んじた盤にもなりそうなのだが、そうは仕上がっていない。忘れてはならないのはローラ・ニーロ!!彼女の影響は2曲 A-5”Stoney End”、B-1”Hands Off The Man (Flim Flam Man)”をカバーするに留まらず、ペギーの自作A-1”Let Me Pass Me By”のサビメロなどにも甚大。ほぼローラの作としか思えない作風なのである。ということで全体的にはキャロルと言うよりは、この時代の凡庸なボーカル盤に時折ローラ・ニーロ的憂いを足した盤。ソフト・ロック・ファンにも訴えかけるドリーミーな音作りもそこかしこに見える。何よりペギーの歌唱が見事。まだ22歳だったと言うが、女優さんのレコードとはとても思えない。今聴くと、掛け値無しに『The Mod Squad』主演女優の主題歌入りレコード、といった風情の盤では決して無い出来なのだ。ただ、海外ではそういう扱いでもないらしく、私は『The Mod Squad』の古本の“オマケ”としてe-bayで入手しました。古本は特に欲しかったわけではないのですが…。古本の書き込みによると、エイミーちゃんという女の子の10歳のお誕生日プレゼントとして、1970年に送られたものみたいです…エイミーちゃんはいまどこで何をしているのだろうか。
最後に、本アルバム以外の音源だが、アルバム未収録曲を含むシングルが存在する。ドノヴァンのカバー含む”Wear Your Like Heaven / Honey Won’t Let Me ”(1970)、ジミー・ウェッブの曲を含む”Red Clay County Line / Just A Little Lovin’”、ローラ・ニーロ曲とローラ似のペギーの曲を抱き合わせた”Lu / Let Me Pass By”もある。その後の音楽との接点では、マイケル・ジャクソンを手がけて時代の寵児となっていたクインシー・ジョーンズがフランク・シナトラ最後のアルバムを手がけた『L.A. Is My Lady』がある。フランク・シナトラ的AORが展開されるタイトル曲のライターとして、ペギー・リプトン・ジョーンズの名前がある。クインシーとはまだ結婚中の1984年のことだった。