いしうらまさゆき の 愛すべき音楽よ。

音楽雑文家・SSWのブログ

いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp

2024年5月31日発売、V.A.『シティポップ・トライアングル・フロム・ レディース ー翼の向こう側にー』の選曲・監修・解説を担当しました。
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[NEW!!]2024年3月29日発売、モビー・グレープ『ワウ』、ジェントル・ソウル『ザ・ジェントル・ソウル』の解説を寄稿しました。

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2024年2月23日発売、セイリブ・ピープル『タニエット』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日発売、ロニー・マック『ワム・オブ・ザット・メンフィス・マン!』、ゴリウォッグス『プレ・CCR ハヴ・ユー・エヴァー...?』、グリーンウッド・カウンティ・シンガーズ『ハヴ・ユー・ハード+ティア・ダウン・ザ・ウォールズ』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日(金)に大岡山のライブハウス、GOODSTOCK TOKYO グッドストック トーキョーで行われる、夜のアナログレコード鑑賞会 野口淳コレクションに、元CBSソニーでポール・サイモンの『ひとりごと』を担当されたディレクター磯田秀人さんとともにゲスト出演します。
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「アナログ鑑賞会〜サイモンとガーファンクル特集〜」 日時:12月22日(金) 19時開演、21時終了予定 入場料:予約2,000円 当日2000円(ドリンク代別) ゲスト:石浦昌之 磯田秀人 場所:大岡山 グッドストック東京 (東急目黒線大岡山駅から徒歩6分) 内容:①トム&ジェリー時代のレコード    ②S&G前のポールとアートのソロ·レコード    ③サイモンとガーファンクル時代のレコード(USプロモ盤を中心に)    ④S&G解散後、70年代のソロ·レコード ※それ以外にもレアな音源を用意しております。
2023年11月25日(土)に『ディスカヴァー・はっぴいえんど』の発売を記念して、芽瑠璃堂music connection at KAWAGOE vol.5 『日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』を語る。 と題したイベントをやります。
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2023年9月19日、9月26日にTHE ALFEE坂崎幸之助さんの『「坂崎さんの番組」という番組』「坂崎音楽堂」で、『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』を2週にわたって特集して頂きました。
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2週目 ココをクリック
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坂崎さんから
「聞きなれたS&Gがカバーしていた曲の本家、オリジナルの音源特集でしたが、なかなか興味深い回でしたね。やはりビートルズ同様に彼らもカバー曲が多かったと思うと、人の曲を演奏したり歌ったりすることも大事なのだと再確認です。」
2023年10月27日発売、『ディスカヴァー・はっぴいえんど: 日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』の監修・解説、ノエル・ハリスン『ノエル・ハリスン + コラージュ』の解説を寄稿しました。
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2023年9月29日発売、『風に吹かれて:ルーツ・オブ・ジャパニーズ・フォーク』の監修・解説、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー『ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー』の解説を寄稿しました。
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2023年7月28日発売、リッチー・ヘヴンス『ミックスド・バッグ』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年8月26日(土)に『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』の発売を記念して、西荻窪の素敵なお店「MJG」でイベントをやります。
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2023年6月30日発売、ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクルの監修・解説、ジャッキー・デシャノン『ブレイキン・イット・アップ・ザ・ビートルズ・ツアー!』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚の解説を寄稿しました。
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2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚の解説を寄稿しました。
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2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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宮 武弘 / アウトドアとビール

*[日本のフォーク・ロック] 宮 武弘 / アウトドアとビール(LIFE CARAVAN MUSIC / 2021)

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このタイトルですよ、『アウトドアとビール』。コロナが明けたら本格的に「アウトドアとビール」、ここから始めるのがいいんじゃないかな、と…去る3月12日は、渋谷のセルリアンタワーにある素敵なライブスポットJZ Bratにて、アウトドア、サッカー、クラフトビールを愛するウクレレシンガー宮 武弘(miya takehiro)が昨年11月にリリースしたNew Album『アウトドアとビール』のリリースパーティー!へ。久々に聴く生演奏、素晴らしかったし元気をもらえた。感染対策もバッチリ、朝の混雑列車の100倍安全でした。

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宮 武弘(vo,ukulele,p)、脇山広介(ds)[ウカスカジー]、齋藤純一(g)、加藤雄一郎(sax)、MAKOTO[JABBERLOOP](tp)、やまはき玲(cho)、森田晃平(b)という豪華フルメンバーで繰り広げられるキャリアを総括するようなステージは、なんと2ステージで21曲!!普段ならビール片手にお客さん同士でカンパーイなんてシーンがあるけれど、コレばかりはコロナ明けまでお預け。開演前の客席には「待ってました」というライブ・ミュージックへの渇望が渦巻いていたけれど、それに十二分応えてくれたステージだったと思う。バンドNatural Records時代にピアノを弾いていた、宮 武弘というミュージシャンの音楽に含まれる哀しみ成分が、ウクレレをメイン楽器にしたソロのある時期から、ハッピー成分へと変わり、新たなファンを獲得していった…そんな20年来の劇的な音楽キャリアも、新旧入り混じったセットリストを通じて振り返ることができた。

 

youtu.be

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発売後から聴いてきたゴキゲンなニューアルバム『アウトドアとビール』。軽快なウクレレから繰り出されるポップでナチュラルな心地よい音楽に包まれる。タイトルに偽りなし、でありまして、クルマに荷物を積んでいよいよキャンプに出発したくなる”キャンプドライブ”(FMヨコハマThe Burnで聴いたウクレレ弾き語りもよかった!)や”バンザイWEEKEND”、そして、よなよなエール「超宴」に出演する彼ならではの「よなよな賛歌」”ヤッホー!ビール”、そして、まずは飲まなきゃ始まらないってなビール愛が注がれる”ビールのおかげ”(飲んでるかどうかを確かめる「アルコールチェック」もあり(笑))などなど、腰が浮いて太陽を浴びたくなる全8曲。個人的にはLITTLE CREATURES鈴木正人が1曲だけプロデュースを手がけた”森と歌う”が新境地だな、と。野外フェスだと3連のビートと呼応して蝉の音量が最大になるのだそう、スゴイ!

youtu.be

仕事だけじゃなく、子育てしながら、飲んだり歌ったり、楽しいことをみんなでやりたい…物騒なことより、音楽がもたらす平和の方が好き…自分で育てた野菜をそのままかじることの幸せとか、それはうわべじゃなく、本当の意味での持続可能な世界をつくることになる…そんな前向きで新たな価値を、音楽を通じて表現しているように思える前作『アウトドア日和』と今作『アウトドアとビール』。次作でぜひとも、アウトドア三部作を完成させてほしいと思っております(笑)

 

HP: http://miyatakehiro.com/

 

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ミュージシャン”宮 武弘”とリフティングパフォーマー”インディ鈴木”が中心となり「サッカーと音楽で遊ぼう!」開催!

会場は、2021年に新しくできた吉川美南のSOLumコミュニティフィールド!

スポーツを通じた身体の健康と、音楽を通じた心の健康を!

子供だけでなく、親子で楽しく遊びながら体感しよう!大人のみの参加もOK!

【日時】4月10日(日)13:00 - 17:00

【会場】SOLumコミュニティフィールド(イオンタウン吉川美南 東街区3F)https://www.solum-sports.co.jp/

【題名&内容】「サッカーと音楽で遊ぼう!」

◆ライブ!

◆リフティング教室

ウクレレ教室

◆アイスブレイクゲーム

◆フットサル

◆飲食店の出店

【料金】大人 3000円 / 子供 2000円

(リフティング教室、ウクレレ教室のみの参加は、どなたでも1500円。付き添い無料。)

団体割引:お子さんが5人以上で参加の場合は、子供一人1500円でOK。

少年団、クラブチーム、お友達同士でお申し込みください。

【申込】https://forms.gle/LPf6N6osuWsGJZwd7

【詳細&問合】http://miyatakehiro.com/contact/

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【発表!4/30「ビールのおかげ vol.3」with BLACK TIDE BREWING !】

クラフトビールを愛するウクレレシンガー宮 武弘の楽曲「ビールのおかげ」。ジャケットをイラストレーターのイソガイヒトヒサが担当。そこから始まった新プロジェクト「”ビールのおかげ”」第3回は、宮城気仙沼の大人気ブルワリー「BLACK TIDE BREWING(以下 BTB)」が登場です!!!

会場は前回に続いて、東京練馬の関町セラー!

宮、イソガイ、そして、BTBから丹治による、トーク&ライブ&BTBタップテイクオーバー!

お見逃し&飲み逃しなく!!!

4月30日(土)

「ビールのおかげ vol.3」

会場:関町セラー(東京都練馬区関町東1-1-8)

時間:(1)13:00 - 14:30、(2)16:00 - 17:30 (イベントは90分。完全入れ替え制)

イベント参加費:¥2000(tax in)※飲食代別

定員:各回 20名(通常定員の50%以下)

予約:お名前、ご希望の時間(13時 / 16時)、人数を添えて、下記よりご予約ください。お支払いは当日受付にてお願い致します。

http://miyatakehiro.com/contact/

カセットデッキ再び

*[カセットテープ]  カセットデッキ再び

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音楽に興味を持つようになった小学生から高校生ぐらいまで、一番親しんだ音楽メディアはカセットテープだった。ベスト選曲のカセットとか作りましたよね。あの作業も今思えばある種の編集力だったような。プレイリスト作りよりも時間の制約があるのが面白かった。ノーマル、ハイポジ、メタルとかもありました。最近そんなカセットの魅力をまたまた追求している所。中目黒のカセット専門店ワルツとか、BEAMSでのレストアされたカセットデッキ(ラッパーが肩で担いでいるみたいなやつ)販売とか、しばらく話題にもなってましたが。

 

しかし、本当の意味でのカセットのアナログな真価を体感するには、ちゃんとしたデッキを買う必要がある。デッキで再生したカセットテープの音は結構ビビります。「デジタルは音が良い、アナログは音が悪い」というのは進歩主義・資本主義的差別化に踊らされた一つの思い込みだったとわかる。カセットはレコードの音とは似たものがあるけれど、デジタルとはまた別次元。しかし国内メーカーの新品カセットデッキはもはや手ごろなものがないから、音質というよりも若い世代にはちょっと面白いガジェットといった体で消費されているのが少々残念。アナログ保全の雄、TEACTASCAMが辛うじて新品を扱ってはいるけれど、もはや需要が少ない今では高利薄売4~7万と高価だし、モデルによっては在庫処分の趣もあって、もはや風前の灯火。海外で作ったおもちゃみたいなウォークマンまがいの簡易プレイヤーはアマゾンで売ってますが、すぐ壊れます。音も「再生できました」という程度。

 

そうなるとヤフオクなどで、取り扱っているリペア業者から買うというのが一般的な入手方法になる。ジャンクを買って、トータルでリペアして出品する個人や業者が大勢いる。評価の数で判断してほしいけれど、良い仕事をしている人がいる。カセットやCDプレイヤーは特にゴムベルトが必ず経年でダメになるから、トレイや再生の不具合で必ずいつか壊れてしまう。あまりに古いとモーターの回転数も狂う。先日、5年前に買った愛用のONKYOのデッキ(これもリペア品だったけど)が壊れて買い直したから、手元にあるのは3代目のデッキになる(ちなみに壊れたものはジャンク出品すれば一瞬で売れる)。リペア業者からは1980~90年代の日本のオーディオ全盛期の高品質のものが1~2万円前後で入手可能。基盤や重さ、素材をみるだけでわかるけれど、工場が海外移転してマレーシアとか中国メイドになる90年代後半から質が落ちていき、カセットの時代も終わっていくという。もちろん以後は日本と海外の技術力・生産力は逆転していく。悲しいけれど、日本のモノづくりの栄枯盛衰を見るような。

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先日入手したのはリペア済みのSONY最後のカセットデッキTC-WE475(2001年から2011年まで生産)。2つ壊れるまで使えるという見込みでダブルデッキを選ぶ。しかし手に取ると、思った以上に軽い、、、やっぱり天下のSONYも最後は中味スカスカなデッキになってしまっていた。音も水平トレイ式シングルデッキの方が流石に良かったけれど、それでもドルビー再生可能、安定した再生がなされて、一定のクオリティはちゃんと保たれていてホッとする。何より頑丈そうなのが良い。ガチャッと手動でトレイを閉めるのも懐かしい感覚。

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1997年に日本先行リリースが決まったエリック・カルメン(当時、1984年以来13年ぶりのニュー・アルバムだった)のサンプル・カセットを聴いている。曲順や曲数は異なっている。音はCDからテープに落とした時の、あの柔らく心地よいカセットの音。高校生の頃、高田馬場の中古盤屋タイムにて、CDのサンプル盤中古もお金が無くて買えず、サンプル・カセットをよく買っていた。

 

思い返せば、エリック・カルメンと同じくビーチ・ボーイズの影響色濃い大滝詠一も、1984年の『イーチ・タイム』以来リリースは沈黙し、1997年の”幸せな結末”で奇跡の復活を遂げていたことを思い出す。ラズベリーズとはっぴいえんど、というバンドマン出身だったのも似ていたような。

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The Manhattan Transfer / Same

*[ジャズ] The Manhattan Transfer / Same ( Atlantic / 1975 )

f:id:markrock:20220221192627j:plain邦題は『デビュー!』と銘打たれているけれど、アトランティック移籍後のマンハッタン・トランスファーの「再」デビュー作。アダム・ミッチェルがプロデュースした1971年のデビュー盤からメンバーは3人変わって、ティム・ハウザーだけが残った。ところで1971年盤『Jukin’』はキャッシュマン、ピスティリ&ウェストのジーン・ピスティリが加わって、The Manhattan Transfer And Gene Pistilli名義でのリリースだった。ちなみにキャッシュマン&ウェストはジム・クロウチのプロデュースで名をあげ、Cashwestプロダクション、Lifesongレーベルを立ち上げ、自らのデュオのレコードはもちろん、ディオン、ヘンリー・グロス、ジム・ドーソン、ディーン・フリードマンなどのプロデュースで一世を風靡した。

 

話を戻してマンハッタン・トランスファーの「再」デビュー、レコードは良音ですね。両面それぞれ”Tuxedo Junction”と”That Cat Is High”に始まる正統派の男女×2のジャズ・コーラスものなんだけれど、ロック世代にもアピールする作りになっている。ジャズのみならずドゥ・ワップ”Gloria”、”Heart’s desire ”を演る幅広さがあるのが、ママス&ザ・パパスがジャズを演ってみたような世代感覚。ジャズにありがちな原理主義を廃した感性は、後年ジェイ・グレイドンのプロデュースで大化けする下地にもなっている。90年代はフランキー・ヴァリともデュエットしてたっけ。日本で言うと1年先んじた1974年にデビューしたハイ・ファイ・セットとか、サーカスあたりが同じ感覚を持っていたような。セッションマンではジェイムス・テイラーのバックでも後に活躍するドン・グロルニックや、リチャード・ティーフィフス・アヴェニュー・バンドのマレー・ワインストック、マイケル・ブレッカーズート・シムズらが参加。ギタリストとして大活躍しているアイラ・ニューボンとメンバーが共作した”Clap Your Hands”のソウル感覚も堪らない。あとは”Candy”のノスタルジックな感じも最高。日本のシティ・ポップものにも、必ずこういうノスタルジック路線が入ってますよね。

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ノスタルジックといえば、裏ジャケのモノクロが本作のそうした擬古調コンセプトを物語っている。先日近所のレコ屋で見つけたこの日本盤、ジャケの白が黄色く褪せているのもそれっぽかったし、左上には今は亡き永田町のナイトクラブ、ニュー・ラテン・クオーターのシールが違和感なく貼ってあった。レコードも流れ流れて。力道山の刺殺事件が起きた店でした。

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クレージー・パーティー / DO YOUR BEST, BUT TAKE IT EASY がんばれば愛

*[日本のフォーク・ロック] クレージー・パーティー / DO YOUR BEST, BUT TAKE IT EASY がんばれば愛(Kitty / 1980 )

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スターダスト・レビュー結成前の根本要がシンガーとして参加した「クレージー・パーティー」のレコードと言えばナイアガラ~大滝詠一ファンならお馴染み。ただ、ジャケ背には「クレージー・パーティー」とも書かれておらず、『がんばれ!! タブチくん!! 激闘ペナントレースの主題歌で大滝が曲とコーラスを手掛けた”がんばれば愛”がアルバム名として書かれているのみ。非常に匿名性が高いLP。ジャケにあるようにポパイ的サーフ文化からのアメリカニズム再来という時代のムードが、翌年の大滝詠一アメリカン・ポップスの定石集『ロング・バケイション』のブレイクを生んだことも想起されられる。クレージー・パーティーの実体としては『がんばれ!! タブチくん!!』の音楽を担当していたカリオカの乾裕樹が手掛けたトラック(シングル楽曲含)を集めたものだろう。歌謡曲っぽいものもあるけれど、音像は80年代ナイアガラものとも共通するこの時代特有の弾むようなサウンドで悪くない。哀愁サンバ・ビートなんかは、デビューしたての当時のサザンとも重なるんじゃないかな、実に景気が良い。岡田冨美子・根本コンビの” がんばれ!! タブチくん!!”と根本作詞作曲の”WAOH!”、伊藤アキラ・大滝コンビの”がんばれば愛”と岡田・鈴木キサブローコンビの”涙の誘惑ストリート”はシングル盤のカップリング。同じく岡田・鈴木コンビの”哀しみのサマー・バタフライ”はシングル未収録だから、アルバム・オンリーだろうか。これらの楽曲と乾作曲のインスト(シティ・ポップ的な”Once In A Dream”もある)合わせて全8曲。根本のハイトーンは、2022年の今も変わらないから凄い。ちなみに1995年、高1の時に発売されたばかりの大瀧詠一 SONGBOOK 2』を買いまして、”がんばれば愛”を聴いた時に、「聴いたことあるぞ」と思いました。小さいときに有線とかラジオとかで聴いたのかな? 無意識の大滝体験であり、根本体験だったのかも。

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鈴木茂 / COSMOS'51 2021 SPECIAL EDITION

*[日本のフォーク・ロック] 鈴木茂 / COSMOS'51 2021 SPECIAL EDITION ( NIPPON CROWN / 2021 )

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鈴木茂『COSMOS'51』の2021 SPECIAL EDITION。昨年7月七夕にリリースされてから、よく聴いている。オリジナルはPANAMから1979年に出た5作目。ちょうど私が生まれた年でありますが(笑)この2021年スペシャル・エディションは何といってもリマスターされた音が良すぎ!ビックリ!茂さんのこだわりを感じさせる再発でした。現在シティ・ポップと表現される都市型ポップ・サウンドを力強く押し出した一枚。ロバート・ブリル、高橋幸宏小原礼佐藤準笛吹利明、斉藤ノヴ、ペッカーといった腕利きに加えて、トム・スコット、アーニー・ワッツ、シーウィンド・ホーンズ(ジェリー・ヘイ)、デヴィッド・キャンベルも参加。同時代のアメリカのモダン・ソウル、フュージョン、そしてそれらを採り入れた新しいロックの象徴だったTOTO辺りと近似するシャキッとしたポップ・サウンドを構築。そこに茂さんのナイーブなボーカルがマッチして、個人的にも愛してやまない一枚に仕上がっている。冒頭の2曲”君はだまていても嘘をつく”や”あと5歩で君のくちびる”でスパークいたしまして、アレンジによってはフィリー・ソウルにもなりそうなメロが最高な”Galaxy Girl”とかも、好きですね。

 

しかもこの再発盤、7曲のバッキング・トラックに加え、2021年の新録”UNCHAINED MELODY”のカバーと、茂さん本人からのコロナ禍をふまえたメッセージ・トラックもボーナス収録。元気をもらえました。ライチャス・ブラザーズで有名な”UNCHAINED MELODY”ですが、これ1曲のためでも買いだと思った次第。大滝さんが聴いたらどう評しただろう、と思う程のボーカリストとしての完成に、ただただ喝采

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ポール・モーリア / ビートルズの世界

*[イージーリスニング] ポール・モーリア / ビートルズの世界(Paul Mauriat Beatles Album)( PHILIPS / 1974 )

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レコードを買い続けることは、新たな発見の繰り返し…いや本当に。最近クラシックのレコードの音の良さに今更ながら気付いて感心してしまった。YouTubeでクラシックとかは流石に聴く気になりませんので。その延長線でムード音楽の類もマントヴァーニだとか買ってみてるんですが、オーケストラの弦の厚みが凄すぎる。普段使われていない部分も含めてスピーカーが全力で鳴っていて、往時のステレオ設備が何のために技術革新を遂げていたかも理解できたり。で、久々に取り出したポール・モーリア。彼のアレンジって結構プログレッシブですよね。横尾忠則ジャケの『亡流喪痢唖(ポール・モーリアR&Bの素晴らしい世界』っていうヒップな一枚もありました。

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で、今回はポール・モーリアビートルズの世界』『Let It Be』を模した安易なジャケが笑えますが(ユニオンジャックの別ジャケもあるのでこちらは再発?)、”ミッシェル”の優雅なストリングスを聴くだけでポールものとの相性の良さを感じさせる。ただ、それのみならず、ドラムとベースを加えてロックなダイナミズムで表現された”ヘイ・ジュード”、エグいエレキも入った”レット・イット・ビー”だとか、コーラス入りのヒップな”ゲット・バック”とか…才気走っております。ジョージ・ハリスンの”マイ・スイート・ロード”とか(これも最高!)、メリー・ホプキンの”Goodbye”も入れて、広義のビートルズ・アレンジ作品に仕上がっている。こういうレコードはなぜか中古屋だと100~500円とかですから、眠れぬ夜のお供にぜひ!

Brian Wilson / At My Piano

*['60-'70 ロック]  Brian Wilson / At My Piano ( Decca / 2021 )

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ブライアン・ウィルソン、昨年リリースの新作『At My Piano』ビーチ・ボーイズ・フリークはどのようにこの作品を受け止めたのだろうか。天才ブライアンが生み出した珠玉のマスターピースを自身のピアノで弾き語るインストゥルメンタル。ユニバーサル傘下になったDeccaからのリリース。ブライアンにDeccaというイメージはなかったけれど、もはや業界が再編され過ぎてよくわからない感じ。

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国内盤CDのリリースが先で、そちらのジャケは現在のおじいちゃんブライアン。輸入LPは若かりしブライアン。収録曲は比較的60~70年代前半に寄っている印象なので、イメージ的にはLPかな?とそっちのリリースを待った次第。

 

この作品が出ると聴いた時に、真っ先に思い出したのはジミー・ウェッブ。20代前半でジョニー・リヴァース、フィフス・ディメンショングレン・キャンベルリチャード・ハリスを手掛けて時代の寵児となっていた彼とブライアンは良い意味でのライバル同士だった。ジミーが1989年にリンダ・ロンシュタットにカバーさせた”Adios”や、2013年の自演集で取り上げた”マッカーサー・パーク”には、ブライアンのコーラスで助演していた。そんなジミーがランディ・ニューマンの勧めで2019年、唐突に『Slipcover』https://merurido.jp/magazine.php?magid=00023&msgid=00023-1564071165)というピアノ・ソロ・アルバムを作っていて、そこで”God Only Knows”を取り上げている。ブライアンの今作と違い、ジミーの方はカバーが中心だったけれど、アイデアの連鎖を感じた次第。

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聴いてみると、独学でピアノを学んだという天才ブライアンの頭の中をちょっと覗けたような気分になる。ジミーと比べて上手とは言えないピアノだけれど、ドキュメンタリーなんかでちょろっと弾いて見せるピアノよりは、ちゃんとした作品として仕上げられている印象。リヴィング・ルームでリラックスしつつ、ぽろっと弾いたピアノの残響はブライアン自身の懐古の風景でもあるような。とりわけ冒頭”God Only Knows”、”In My Room”、”Don’t Worry Baby”の3曲にブライアンのナイーブな感性が集約されていた。お見事!また、「ピアノはおそらく人生を救ってくれた」とライナーにあるように、復活作だった”Love And Mercy”においては、瑞々しいメロディが再び紡ぎだされたその感動を追体験できた。

 

BBにロイヤル・フィルを被せるプロジェクトも手掛けているイギリスのニック・パトリックとブライアンがプロデュース、お馴染みのダリアン・サハナジャがディレクターとコ・プロデュースを手がけた本作、スタジオ・ミュージシャン集団レッキング・クルーのメンバーとして、”God Only Knows”や”Good Vibrations”のオリジナルでピアノを弾いていたドン・ランディ(ブライアンが敬愛するフィル・スペクターのセッションでも著名)に捧げられている。

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