Gary Benson / Reunion
*[SSW] Gary Benson / Reunion ( Bigpink / 1970 )
イギリスのシンガー・ソングライター、ゲイリー・ベンソンの幻のファースト『reunion』。韓国ビッグピンクのリイシューで CD化された後、中古アナログが市場に出てますけど、いまだに5桁…(笑)。ビッグピンクも売り切り商法なので、どうせYouTubeで誰かがアップロードしちゃうんでしょうけれど、音楽業界のためにもちゃんと買いました(これ重要)。mp3とは違って、ちゃんとしたCDプレイヤーとアンプで聴けば明らかに音も良いし。
ゲイリー・ベンソンの代表曲はオリビア・ニュートン・ジョンが取り上げて1975年にヒットさせた”Don't Throw It All Away”。『サタデー・ナイト・フィーバー』で知られる俳優ジョン・トラヴォルタの”Let Her In”や、レゲエのマキシ・プリーストが取り上げた”Close To You”もあった。彼自身のレコードだと続く1973年のセカンド『The Concert』は日本でCD化されている。
1975年のサード『Don't Throw It All Away』と1977年の『New World』はドイツ辺りから取り寄せて以前手に入れたものが手元にある。すさまじく良いバラードが満載。日本では1980年の4枚目『Moonlight Walking』がAOR名盤として結構売れた。ゲイリー・ベンソンっていやに分かり易い名前だなあと思って調べると、本名はハリー・ハイアムスとあるので、ユダヤ系ではないかと思われる。ユダヤ系の苗字は西洋では偏見のタネになるので、名前を変えることが多い。アメリカでもボブ・ディランはじめ例に事欠かない。
で、初めて聴きましたがこのファースト、ソフトロックのブーム全盛期にリイシューされていたら、誰もがぶっ飛んだんじゃないでしょうか。初期のCCMっぽい、宗教っぽさを感じるモノクロのジャケにだまされてしまったけれど、全曲凄まじいクオリティにびっくり。前に出ているベースの立ち上がりも含め、イギリスのジミー・ウェッブという惹句は嘘ではない。メロディー・ラインに似たものを感じる曲もあるのだけれど、ジミーより歌が上手かったりもするし、ストリングスの気品と弾むようなビートで展開される英国ポップの王道にはひれ伏すほかない。ジョージー・フェイムが取り上げた”Going Home”(コレもソフトロックのブームの中で再発されて一気に有名になった)のオリジナルも収録。リリース元のPenny Farthing Recordsはキンクスを手掛けたラリー・ペイジのレーベルで、サマンサ・ジョーンズ盤なんかが出ていた。あと、ゲイリーの初期の提供曲の中にはヴィグラス&オズボーンのポール・ヴィグラスが歌う”Stop”なんてのもあったり。いやはや私はアメリカ偏愛なので熱心には掘り下げていなかったけれど、英国モノは奥が深くて困る。
ジョン・ブッチーノ(John Bucchino)のアルバム
*[SSW] ジョン・ブッチーノ(John Bucchino)のアルバム
前回取り上げたジョン・ブッチーノ(ブッキーノと読むのかもしれない?)。改めて聴き直したけれど、もう言葉にするのも野暮なくらい、素晴らしい。どんなに傷つこうとも尊厳を保つ人間の気概のようなものを感じさせる凛としたジョンの作風、ジミー・ウェッブが弾き語る”Skywriter”に近いテイストと言えば、判る人には判ってもらえるだろうか。ジョンの代表曲の”Grateful”、『サウンド・オブ・ミュージック』で知られるジュリー・アンドリュースと娘エマ・ウォルトン・ハミルトンがプロデュースした絵本シリーズの一冊として、アート・ガーファンクル歌唱のCD付で2003年に発表されたことも思い出される。ジュリーが手掛けたミュージカルの音楽もジョンは担当しているけれど、彼のソングライティングの魅力は、往年のミュージカルの豊饒な音楽遺産を目いっぱい吸収したリリカルでセンチメンタルなメロディと、映画を思わせるドラマティックな楽曲構成にある。多くの同業者が舌を巻いたことは言うまでもない。
ただ、この手のキャバレー系の出自の音楽にしばしばあるのだけれど、20年前だとゲイ/レズビアンの音楽、というジャンルに含まれていた。アメリカにはゲイ/レズビアン専門レーベルがあり、70年代にレズビアンをカミングアウトしたホリー・ニア(Holy Near)やその活動を支援したフォークの最左翼、元ウィーヴァーズ(ピート・シーガーがいた)のロニー・ギルバートらのバックでジョンはピアノを弾いていた。90~00年代初頭に脚光を浴びたあと、ジョンは順当にミュージカルの世界で羽ばたき、2006年に『It’s Only Life』を、2008年には『A Catered Affair』を音盤化している。
彼のソロ・アルバムは1985年の『On The Arrow』が初。カセットでのリリースだったため、今ではなかなか人々の耳に届かないけれど、1978~84年に書き溜めた楽曲を、弾き語りやバンドで、サラ・キンケイドとのデュエットを含めジョン自身が歌うタイムレスな仕上がり。レコーディングは3人の友人だろうか、彼らの“ガレージ”で録られたものだというのが泣ける。収録曲”Living In The Belly Of A Dinosaur”から採ったのだろう、Dinasaur Recordsからの自主リリース。
同じくDinasaurから1991年にリリースされたピアノ弾き語りアルバム『Solitude Lessons』は彼の代表作。手元にあるのはカセットだけれど、CDも出たし、今ならダウンロードで購入できる。ジョンのトリビュート・アルバムでアート・ガーファンクルの名唱が光った”If I Say I’m Over You”の自演もある。
このアルバムやトリビュート・アルバムに参加しているシンガーのブライアン・レーン・グリーンはジョンのプロデュースで1996年に『Brian Lane Green』を発表。"Grateful"だけでなく、ジョンの才能を認めていたアマンダ・マクブルームやスティブン・シュワルツの楽曲も収録。
さらに、同じくトリビュート盤に参加したシンガーのデヴィッド・キャンベルはジョンと旧い間柄にある。ジョンが音楽を手がけたドリームワークスのアニメーション映画『ヨセフ物語 〜夢の力〜』においてもシンガーとして客演。2014年には幅広い評価を得たアルバム『David Campbell Sings John Bucchino』をリリースしている(ジョンの代表曲を、ジョン自身のピアノ伴奏で歌う)。
ミュージカルと言えば、前述の『サウンド・オブ・ミュージック』などで著名なリチャード・ロジャースの楽曲をカバーしたジョンのソロ、2003年『On Richard Rodgers’ Piano』も素晴らしかった。ミュージカルの先達であり大御所リチャード・ロジャース自身が所有したスタインウェイのピアノを弾きながら、万感の想いで録音したに違いない。2016年のビートルズ・カバー『Beatles Reimagined』が最新作。欧米で名声を得られていても、なかなか日本の人々の耳に届きにくい音楽もある。このブログを始めたきっかけを思うと、彼は最も紹介したかったミュージシャンの一人でもある。
ジョン・ブッチーノ(John Bucchino)のシングル
*[SSW] ジョン・ブッチーノ(John Bucchino)のシングル
昨日ジミー・ハスケルのレーベルHorn Recordsからドン・グレイサーのアルバムを取り上げた。エルヴィス・プレスリー、リック・ネルソンからサイモン&ガーファンクルなど並みいる大物を手掛けたジミー・ハスケルのネーム・バリューからすると、Horn Recordsは彼の自主レーベルといった地味な趣き。設立の1979年から1981年までに20枚余りのシングルやアルバムがリリースされているが、個人的に注目したいのはジョン・ブッチーノ(John Bucchino)のキャリア初期のシングルが3枚含まれていること。
Art Garfunkel - Grateful (Across America) - YouTube
ジョン・ブッチーノはアート・ガーファンクルが1996年にリリースしたベスト・ライブ集『The Very Best Of Art Garfunkel (Across America)』に新曲として収録されていた”Grateful”の作者として知られている。同ライブ盤はコロンビア/ソニーのリリースではなかったため、アートのキャリアを総括する2枚組ベスト『The Singer』に収録されなかったのは残念だったけれど、BMGから2000年にリリースされたジョン・ブッチーノ楽曲集『Grateful—The Song Of John Bucchino』のタイトルにもなった。
この楽曲集は名歌手およびソングライターがブッチーノ楽曲を歌うという面白い企画盤で、アート・ガーファンクル、ジュディ・コリンズ、マイケル・ファインスタイン、ライザ・ミネリ、アマンダ・マクブルーム(ベット・ミドラーで知られる”The Rose”の作者)、ジミー・ウェッブら錚々たる面々が参加し、発売当時、良質の楽曲に飢えていたポップス・ファンが飛びついていた記憶がある。往年のミュージカルとビリー・ジョエル、エルトン・ジョン直系のピアノマンの系譜をひく、彼の優美で抒情的な詞とメロディのマッチングは非常に格調高いものだ。
いま手元にあるのはHorn Recordsからリリースされた3枚のシングルのうちの2枚、1980年のファースト・シングル” Love Doesn't Always Stick Around”と1981年のセカンド・シングル” Something As Simple”だ(サード・シングルの” You Say You Want To/T.V.”は未聴)。2枚どちらもA・B面とも同じ楽曲で、しかもプロモーション・コピーであることからすると、ほぼ市場には出回っていない可能性がある。しかしどちらもジミー・ハスケルのアレンジ&プロデュース。ジョン自身のマイルドな歌も聴くことができる。どちらのレコードも比較的綺麗な状態のレコードだったが、なぜかノイズがひどく、プレスミスの可能性も。2枚ともいわゆるAORの文脈で聴くことができる楽曲で、”Love Doesn't Always Stick Around”はソウルフルさもあるメロウなカントリー・ポップ。イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリーの色もある。そしてほとばしる才能を感じさせるメランコリックなバラード” Something As Simple”には落涙を禁じ得なかった。後年アート・ガーファンクルが彼の楽曲を評価したことを思うと、『Scissors Cut』期のアートがカバーしていたら、ジョンのキャリアも違ったものとなっていたかもしれない。後半のストリングス・パートも素晴らしく、アートのファースト『Angel Clare』でジミー・ハスケルが大仰ともいえる感動的なストリングスを付けていたこととシンクロするのが不思議だ。ジョンは1985年にやっと初のアルバム『On The Arrow』をカセットでリリース。業界で名が通るのは、1987年に作曲家のスティーブン・シュワルツ(名ミュージカル『Godspell』、ディズニーの『ポカホンタス』など数多の作品を手掛けた)に見出されてからということになる。以後のソロキャリアにはまた次回触れてみたい。
Don Glaser / Don Glaser
*[ジャズ] Don Glaser / Don Glaser ( Horn Records / 1980 )
ラウンジっぽい小唄系ジャズ・ボーカルの中でも突出して出来の良い一枚。冒頭の”Strawberry Jam”から軽やかなエレピに導かれ、ボブ・ドロウやデイヴ・フリッシュバーグをさらに若々しくグルーヴィーにしたような夢のようなレコード。高速ジャズ・サンバの”San Diego”では一気に彼の世界に持っていかれてしまう。ドン・グレイサーはシングルを1968年、1978年に別レーベルから1枚ずつ出し、アルバムでは本作が唯一作となる。ラウンジ系ミュージシャンでレコーディング作が少ないというのはよくあること。とはいえアルバムがあっても大抵カバー中心。それらと比べてこのドン・グレイサーに驚いてしまうのは、ハマースタイン&カーンの”All The Things You Are”とコルトレーンの”Giant Steps”、を除いて、本人のオリジナルであること。ジャズ・シンガー・ソングライター的側面からも評価できる本作、いまだレコード店でそこそこの値がつくのはそんな理由だろう。
しかもバックはベースにレイ・ブラウン、ドラムスにシェリー・マン、フルート&サックスにビル・パーキンス、パーカッションはポウリーニョ・ダ・コスタ。カリフォルニアのローカル・レーベルになぜこんな大御所たちが?と思うが、そもそもHorn Recordsは名アレンジャーのジミー・ハスケルが立ち上げたレーベル。彼のお眼鏡にかなった才能のある若者たちにレコーディングの機会を与えたのではなかろうか。
Don Glaser Jazz Trio "Live at the Bitter End" - Don Glaser, Peter Traunmuller, Nate Brown - YouTube
ドン・グレイサーの近年の消息を調べてみたら、2017年のビター・エンドでのドン・グレイサー・トリオの演奏があった。2曲目にあの”Strawberry Jam”を演っている!
永遠のアイドル、ロニー・スペクター
*[コラム] 永遠のアイドル、ロニー・スペクター
今年も明けてから半月経ってしまった。最近時が経つのが早くて早くて…申し遅れましたが今年も本ブログをよろしくお願いいたします。
で、ザ・ロネッツのロニー・スペクター(ヴェロニカ・ベネット)が亡くなったと聞いて、元夫フィル・スペクターの死もありましたが、じわじわ来るものがあったり。ビートルズ、ストーンズ世代のロック・ミュージシャンにとっては、本当の意味での皆のアイドルだったのでないだろうか。”Be My Baby”に集約されてしまうけれど、しわがれた声のビブラートには唯一無二の個性があった。
そういえば昨年、1987年のソロ『Unfinished Business』のアナログが欲しいなと突然思い立ち、探して買ったこともあった。エイティーズ産業ロック風のアルバムだけれど、アメリカ盤LPの音は結構良かった。エディ・マネーの曲に客演した”Take Me Home Tonight”が大ヒットしていた頃。お返しのエディの参加もあった。しかも、当時レーベルメイト(コロンビア)だったグレゴリー・アボット(本来はエイボットだと思いますが)のタイトル曲"Unifinished Business"がこんな良い曲だったっけ?と思い出して、大ヒットしたグレゴリーの同曲収録のアナログ『I’ll Prove It To You』も今さら買ってみたり(笑)
ロニーのソロはラモーンズをカバーした1980年の『Siren』から、タイムレスな甘酸っぱいロックン・ロール・レコードばかりでどれも最高。家のCD棚を見ていたら、キース・リチャーズが参加した2006年の『The Last Of The Rock Stars』、マーシャル・クレンショウ自身が参加した彼の楽曲集『Something’s Gonna Happen: Ronnie Spector Sings Marshall Crenshaw』(2003年リリースだが、1989年のお蔵入り音源)が出てきた。そういえばマーシャル・クレンショウも、意外と見かけない彼のファーストのアナログが欲しいと昨年思い立ち、日本では良いものが見つからず、ドイツから取り寄せたことがあった。あとは、RAVENから出た『Dangerous』っていう1976~87年のベスト。コレは昔よく聴いていた。『Unfinished Business』からも全曲入っているんだけれど、ブルース・スプリングスティーンのE.ストリート・バンドと共演した、スペクター風味のビリー・ジョエルのカバー”Say Goodbye To Hollywood”、サウス・サイド・ジョニーとの共演”You Mean So Much To Me”も収録。しかしロニーのどの盤を聴いても、駄曲が皆無なのはなぜだろう? この声に歌ってもらえるなら、ソングライターなら良い曲を作るほかないということになるのか。
これは宝物にしているロニーの自伝『Be My Baby』。1990年に出版されたもので、フィル・スペクターの狂気も赤裸々に吐露している。内容も新鮮だったけれど、サインにキスマークが付いているというのも初めて見た。R.I.P.
Phil Upchurch / Feeling Blue
*[ソウル] Phil Upchurch / Feeling Blue (Milestone MSP 9010 / 1968)
先日買ってみて、今聴きまして、オッと思った盤。シカゴのギタリスト、フィル・アップチャーチのマイルストーンから1968年にリリースされたサード・アルバム。フィルといえば、ダニー・ハサウェイの『Live』の名演奏で知られている。本作『Feeling Blue』の録音は1967年。珍しいな、と思ったのは、ウィントン・ケリーをフィーチャーしたジャズ・クインテット音源が5曲入っていたこと。ソウル・ジャズとは言うけれど、バリバリのR&Bなブルージーでファンキーなギタリストとして認識していた彼の、エピフォンの赤いセミアコから繰り出されるジャズってどんなもんかいな、という…アントニオ・カルロス・ジョビンの”Corcovado”なんか、普通に弾けてましたね。フィルのオリジナル”Really Sincere”も粋な仕上がり。同年、ヴァーヴからリリースされたスタン・ゲッツのバカラック&デイヴィッド曲集にも参加していたから、そんなモードだったのかしら。とはいえ、ジミー・リードの1961年盤『Jimmy Reed At Carnegie Hall』あたりからセッション・マンを始めた彼からすると、耳障りの良いジャズだけでは退屈だったのかも。そう考えると、タイトル曲を含む本作残りのセッション5曲の方が彼の色が出ているように思えた。この5曲はドラムスのバーナード・パーディ、ベースのチャールズ(チャック)・レイニーとの鉄壁の音。そこには、この時代のあらゆるジャンルのレコードでカバーされているジム・ウェッブの”Up, Up And Away”もありました。後半のギター・プレイは結構スリリング。
このレコードには1989年の沼津での来日ライブ・チケットが挟まっていて、フィルのサインが入っていた。そして本作と一緒に1984年の『Companions』のLPも買ったけれど、これもまた素晴らしかった。
これから彼の作品を色々聴いてみることにしよう。
John Sebastian and Arlen Roth / Explore The Spoonful Songbook
*['60-'70 ロック] John Sebastian and Arlen Roth / Explore The Spoonful Songbook ( BMG /2021 )
ヨーロッパではまた感染拡大が心配されておりますが。そんな中でもコロナ禍を抜け出した新譜やら再発やらがここへ来てドドっと出てきていて。搔き集めているけれどとてもじゃないけれど耳が追い付かない。なんだかんだよく聴いているジョン・セバスチャンとアーレン・ロスの共演盤『Explore The Spoonful Songbook』を。コレ、CDで入手してみたけれど、LPで買えばよかったかな。まだ間に合うか。
ジョンと言えば、30年前くらいからボーカルが取れなくなったとか、色々言われていて。フリッツ・リッチモンド・トリビュートで来日したときに、その意味はわかったのだけれど、今作では結構歌ってるんですね。でももはやここまで来ると、”ラヴィン・スプーンフル”のネタ元であるミシシッピ・ジョン・ハートの領域に達していて。どうにも和む最高の唄声に思えてくる。そして今作の相方アーレン・ロスと言えば、ウッドストック・マウンテン・レヴューでもお馴染みのグッドタイム・ミュージックをやらせたら最高のギタリスト。ストリング・ベンダーの名手でもある。彼のセカンド『Hot Pickups』を初めて聴いた時は、間違いないと思いました。ジョニー・リヴァースの”Poor Side Of Town”とかパーシー・スレッジ”When A Man Loves A Woman”、ロイ・ヘッドの”Treat Her Right”なんかが入っていて、この人分かってるな、と感心してしまった。
で、今作はそのアーレンが企画したアイデアなんだとか。ストーンズやサイモン&ガーファンクルのトリビュート作をすでに作っていて、知り合いだったジョンに満を持してスプーンフル・トリビュートを提案したようだ。アーレンは幼い頃からのスプーンフル中毒だったらしいので、元アレンジも頭にしっかり入っている、しかもスプーンフルのギタリストだったザル・ヤノフスキーのユーモアと精神をちゃんと理解している人だったということ。この辺りがジョンの心を動かし、本プロジェクトをスムースに進行させることに繋がったのだろう。ゲストはジョンとの共演歴もある60年代トリビュートな音楽活動をしている若手の双子モナリザ・ツインズ、そしてイーヴン・ダズン・ジャグ・バンド以来の盟友ジェフ・マルダー、そして彼の元妻マリア・マルダー(マリアの2009年作にもジョンはデヴィッド・グリスマンやタジ・マハール、ダン・ヒックスらと共に参加している)。ジョンが歌って絶品のハープを吹くラストの"Darling Be Home Soon"が白眉だろうか。”Daydream”や”Do You Believe In Magic”が歌モノでないことに失望する人がいるかもしれないけれど、個人的には歌が聴こえてきました。いやこれ、歌心のあるすごい演奏だと思いますよ。
曲目でもう悶絶。
- Lovin' You
- Darlin' Companion
- Daydream
- Jug Band Music
- Four Eyes
- Younger Girl
- Rain On The Roof
- Didn't Want To Have To Do It
- Did You Ever Have To Make Up Your Mind?
- Do You Believe In Magic?
- Nashville Cats
- You Didn't Have To Be So Nice
- Stories We Could Tell
- Darling Be Home Soon