いしうらまさゆき の 愛すべき音楽よ。

音楽雑文家・SSWのブログ

いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp

2024年5月31日発売、V.A.『シティポップ・トライアングル・フロム・ レディース ー翼の向こう側にー』の選曲・監修・解説を担当しました。
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[NEW!!]2024年3月29日発売、モビー・グレープ『ワウ』、ジェントル・ソウル『ザ・ジェントル・ソウル』の解説を寄稿しました。

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2024年2月23日発売、セイリブ・ピープル『タニエット』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日発売、ロニー・マック『ワム・オブ・ザット・メンフィス・マン!』、ゴリウォッグス『プレ・CCR ハヴ・ユー・エヴァー...?』、グリーンウッド・カウンティ・シンガーズ『ハヴ・ユー・ハード+ティア・ダウン・ザ・ウォールズ』の解説を寄稿しました。
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2023年12月22日(金)に大岡山のライブハウス、GOODSTOCK TOKYO グッドストック トーキョーで行われる、夜のアナログレコード鑑賞会 野口淳コレクションに、元CBSソニーでポール・サイモンの『ひとりごと』を担当されたディレクター磯田秀人さんとともにゲスト出演します。
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「アナログ鑑賞会〜サイモンとガーファンクル特集〜」 日時:12月22日(金) 19時開演、21時終了予定 入場料:予約2,000円 当日2000円(ドリンク代別) ゲスト:石浦昌之 磯田秀人 場所:大岡山 グッドストック東京 (東急目黒線大岡山駅から徒歩6分) 内容:①トム&ジェリー時代のレコード    ②S&G前のポールとアートのソロ·レコード    ③サイモンとガーファンクル時代のレコード(USプロモ盤を中心に)    ④S&G解散後、70年代のソロ·レコード ※それ以外にもレアな音源を用意しております。
2023年11月25日(土)に『ディスカヴァー・はっぴいえんど』の発売を記念して、芽瑠璃堂music connection at KAWAGOE vol.5 『日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』を語る。 と題したイベントをやります。
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2023年9月19日、9月26日にTHE ALFEE坂崎幸之助さんの『「坂崎さんの番組」という番組』「坂崎音楽堂」で、『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』を2週にわたって特集して頂きました。
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坂崎さんから
「聞きなれたS&Gがカバーしていた曲の本家、オリジナルの音源特集でしたが、なかなか興味深い回でしたね。やはりビートルズ同様に彼らもカバー曲が多かったと思うと、人の曲を演奏したり歌ったりすることも大事なのだと再確認です。」
2023年10月27日発売、『ディスカヴァー・はっぴいえんど: 日本語ロックが生まれた場所、シティポップ前夜の記憶』の監修・解説、ノエル・ハリスン『ノエル・ハリスン + コラージュ』の解説を寄稿しました。
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2023年9月29日発売、『風に吹かれて:ルーツ・オブ・ジャパニーズ・フォーク』の監修・解説、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー『ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー』の解説を寄稿しました。
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2023年7月28日発売、リッチー・ヘヴンス『ミックスド・バッグ』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年8月26日(土)に『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』の発売を記念して、西荻窪の素敵なお店「MJG」でイベントをやります。
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2023年6月30日発売、ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクルの監修・解説、ジャッキー・デシャノン『ブレイキン・イット・アップ・ザ・ビートルズ・ツアー!』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚の解説を寄稿しました。
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2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚の解説を寄稿しました。
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2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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Lani Groves & Darlene Love

*[ソウル] Lani Groves & Darlene Love / Bringing It Home (Shanachie / 1987)

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これは気持ち良いアルバム!ラニ・グローブスとダーレン・ラヴの共演作『Bringing It Home』。ポップス・ファンにおなじみブロッサムズのダーレン・ラヴはフィル・スペクターが信頼を置いていたシンガー。クリスタルズの全米No.1”He's A Rebel”も実はダーレンが歌っていました。”The Boy I'm Gonna Marry”や” Wait Til My Bobby Gets Home”、” Why Do Lovers Break Each Other's Hearts?”とか良い曲ばっかり。妹さんは女性版ジャクソン・ファイヴのようなサウンドだったハニーコーンのエドナ・ライトでした。で、ラニ・グローブスの方は、70年代を中心にソウルからポップスまで様々なジャンルでほぼソウルフルな女性コーラス隊が入ってまして、その一角を構成していたお方。一番有名なのはスティーヴィー・ワンダーのバックボーカルを務めていたこと。参加作は多すぎて書けません(笑)あと、ソングライターとしても、デニース・ウィリアムズなどで知られる” That's What Friends Are For”やフランキー・ヴァリ、イモーションズで知られる “How'd I Know That Love Would Slip Away”なんかを書いている。ただ、ソロ名義もいくつかあるダーレンに比べて、ラニのリーダー作はニュージャージーのインディ・レーベルShanachieからリリースされたコレしかない。

 

とにかく選曲が素晴らしくて、インプレッションズ(カーティス・メイフィールド)の”Its Alright”、タイロン・デイヴィスの” If I Could Turn Back The Hands Of Time”、ビートルズの”Let It Be”、ビル・ウィザースの”Use Me”、ジェイムス・ブラウンの”It’s A Man’s World”、フォンテラ・バスの”Rescue Me”、ジャクソン・ファイヴの”I’ll Be There”…タイトル曲はサム・クックですね。グイグイ来る生バンドの音も、リリース年にしては80年代っぽさはなく、むしろ60年代に近い普遍性がある。この辺がインディー・レーベルから出たブルーズと同じで、売り気が無くて良い。そして何よりゴスペル仕込みの圧倒的な二人の声が◎。

Marc Cohn And Blind Boys Of Alabama

*[SSW] Marc Cohn And Blind Boys Of Alabama / Work To Do (BMG / 2019)

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これも積読CDの中から、しかも2年前だった…音楽に申し訳ないですね。ただコレ、買ってしばらく、よーく聴いていた。アメリカの特筆すべきシンガー・ソングライター、マーク・コーンの2019年の新作『Work To Do』。日本では悲しいかな、まっとうに取り上げられることはなかった。この新作、ゴスペル・グループのブラインド・ボーイズ・アラバマとの共演作。ただし共演の新曲はゴスペルの”Walk In Jerusalem”、マークが手掛けた”Talk Back Mic”と表題曲”Work To Do”の3曲。しかしどうにも素晴らしい。苦みばしったソウルフルなマークの喉は絶好調だ。ブラインド・ボーイズ・アラバマとの共演がこんなにハマるとは…アメリカン・ミュージックのダイナミズムと気品を表現できるマーク・コーンの才能は、彼のデビューを後押ししたクロスビー&ナッシュ、ジャクソン・ブラウンジェイムス・テイラーという顔ぶれからも理解できよう。

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後半の7曲は、ブラインド・ボーイズ・アラバマとの共演ライブの模様。ライブと言っても音はすごく良い。マークの怒涛のベスト選曲”Ghost Train”、”Baby King”、”Listening To Levon”、”Silver Thunderbird”、”Walking In Memphis”、”One Safe Place”に新しい命が吹き込まれる。”Amazing Grace”のカバーも感動的だ。マークも世代的にいえば、ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』における、ステイプル・シンガーズのゴスペルの凄みを経験しているはず(”Listening To Levon”はザ・バンドのリヴォン・ヘルムに捧げられた楽曲だった)。この辺りがコラボレーションのヒントになったと想像できる。

 

プロデューサーはマークをメジャー・デビュー当時からアレンジや演奏などで支えてきた、ジョン・リヴェンサール。彼はいま、ロドニー・クロウェルと別れたカントリー歌手ロザンヌ・キャッシュと幸せに暮らしている。ただリヴェンサールはユダヤ系、ということで保守的な米カントリー界、とりわけ父のジョニー・キャッシュにはそれなりの衝撃を与えたみたいだけれど。で、そのジョン・リヴェンサールとマーク・コーンががっぷり四つで手掛けたのがサザン・ソウルの大御所ウィリアム・ベルが40年の時を経て2016年にスタックスに復帰した『This Is Where I Live』。日本のメディアではベルの復帰作をジョン・リヴェンサールが手がけた…というばかりでマークが全面参加したにもことにほぼ触れられず残念だったけれど、この作品は感動した。優れたソングライターでもあるウィリアム・ベルとジョンとマークが多くの曲を共作している。レヴォン・ヘルムの娘エイミーもボーカルで参加。ウィリアム作のブルーズの名曲”Born Under A Bad Sign”の再演もあるが、声の衰えは全くといっていいほど、ない。グラミーのベスト・アメリカーナ・アルバムを受賞して、グラミーではゲイリー・クラーク・ジュニアと”Born Under A Bad Sign”を演奏する一幕もあった。そういえばジェシ・ウィンチェスターのカバーが1曲入っているのは、2014年に亡くなった彼へのトリビュートだったのか…今夜も音楽の旅が終わりそうにない。

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John Fogerty / Fogerty’s Factory

*['60-'70 ロック] John Fogerty / Fogerty’s Factory (BMG / 2020)

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台風が来たかと思えば、お盆も雨ということでスカっとしませんが。近所で被害の大きい所もありました。お見舞い申し上げます。昨日は2週間前のリベンジで釣り決行しましたが、台風通過後の超強風により立てないレベルで、AMは竿を出せず。水の被害もある時期ですから無理をせず、木になったつもりで風に吹かれてじっと待ちまして。午後は激しい暑さながら結構釣れました。天気とにらめっこの8月になりそう。

 

本で言えば積読状態になっているCDをごそごそやっていたら、コロナのステイホーム期に出たジョン・フォガティの『Fogerty’s Factory』を発見。たぶん1回しか聴いていない(ごめんなさい)。最近こんなのばっかりなんですが。

 

コレ、フォガティの息子たちと自身の曲などをレコーディングしたというファミリー・レコード。プロデューサーのジュリー・フォガティというのはジョンの妻ですから、まさにフォガティ家のプロデューサーということだろう。そしてその間に生まれた息子タイラー、シェーンと娘ケルシーが演奏に加わっている。流石のBMG、メジャー・リリースということでボブ・クリアマウンテンのミックス、ボブ・ラドウィグのマスタリングという力の入りようだけれど、グダグダの演奏もあったりして、それはご愛嬌。本来はYouTubeで聴き流すくらいの音源なのかも。ただ、高校の学園祭バンドにジョンが飛び入りしたような、あのグイグイとノリを生み出すギターと変わらぬ迫力のあるボーカルが加わるだけで、CCRになっちゃうのがすごい。コロナのシチュエーションの中で、ジョンのメッセージが入ったりもするライブ感も、時を隔ててある種の記憶・記録になるのかもしれない。ビル・ウィザースの”Lean On Me”とか、スティーヴ・グッドマンの”City Of New Orleans”のカバーが結構耳に残った。もちろん”Centerfields”(ドジャー・スタジアムでの無観客ライブ録音)、”Have You Ever Seen The Rain”、”Proud Mary”、”Bad Moon Rising”、”Fortunate Son”なんかも入ってます。

 

ステイホームにフィットしたジャケットはCCRのアルバム『Cosmo’s Factory』のパロディ。『Cosmo’s Factory』は1970年のアルバムだから、50周年の年に出たのが今作だったということになる。ちなみにコスモス・ファクトリーという名古屋のプログレ・バンドもいましたね。

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The Challengers / Vanilla Funk

*[ソウル] The Challengers / Vanilla Funk ( GNP Crescendo / 1970)

 

世界大運動会第1弾もそろそろ終了なのですね。なんだか早いような…全く関心を持っていないことが露呈してしまうけれど。新国立とか、よく駅を通り過ぎてますけれど、全くそんなイベントが行われている雰囲気を感じない。というか東京に住んでいる身の回りの人で、関心を持っている人に会ったことがない。スポーツ好きな人とか、退職されて時間のある方とかは観ているのだろうか。期間中、酷暑の道すがらお二人だけボランティアの方とすれ違ったけれど、もののあはれを感じました。こんなことを言って嫌な気分になる人が居れば申し訳ないけれど。私の好きな音楽で言えばですよ、世界中のミュージシャンが一堂に会する歴史的ライブ(存在したらそれはそれで微妙ですが…)のために、スポーツ大会が中止になれば、素直に楽しめないと思う。運営側とそれを他人事のように下支えする国民国家の魂胆が悪いですよね。古代ギリシアから近代に至るまで長らく中断があり、再開してからもたいした歴史を持たない大会ですから、公金を入れるのはそろそろやめてもいいのではないかと思ってます。やりたい方のクラウドファンディングでやるとかね。

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最近のマイブームだったソウル関係の落穂拾いと関連して、インストも結構集めております。日本で言えば田中清司のドラム・カバーものから、石川鷹彦がフォークの名曲を演奏するといった趣向の盤まで(笑)なんだか聴いていて気持ち良いんですよね。メロディの良さが際立つというか。もちろん良し悪しはあるんですが。今日取り上げるのはチャンレジャーズ1970年の『Vanilla Funk』というレコード。新品同様のカット盤を50年の時を経て激安で入手しました。チャレンジャーズといえば、サーフ・インストで知られるグループ。ビリー・ストレンジとの共演盤もありました。ドラマーのリチャード・ダーヴィは”Mr.Moto”のオリジネイターであるベルエアーズ(Belairs)のメンバーだった。ただ本盤にサーフ色はなく、ニューソウルとか、60年代後半のニューロックの動向を反映させた選曲になっている分、フリーソウルレアグルーブ界隈で取り沙汰されたと記憶している。ヤング・ホルト・アンリミテッドの”Soulful Strut”が白眉だろうか。他にもバッファロー・スプリングフィールド”For What It’s Worth”をソウルフルな女性コーラスを交えて演っていたり、私の大好きな”I’m Gonna Make You Love Me”やザ・バンドの”The Weight”、ボックス・トップス(ウェイン・カーソン)の”Soul Deep”のグルーヴィーなカバーもある。ちなみにタイトル曲の”Vanilla Funk”はアレンジャーのデイブ・ロバーツと、ザ・セクションのキーボーディスト、クレイグ・ダージとの共作。明らかに、有名曲のハード・ロックなアレンジで人気を博していたヴァニラ・ファッジ(Vanilla Fudge)のもじりですね。

フォーエヴァー、中野督夫さん

*[コラム] フォーエヴァー、中野督夫さん

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名古屋発センチメンタル・シティ・ロマンス(センチ)の中野督夫さんが亡くなられたとの悲報。くも膜下で2018年に倒れてから、その復活を心から願っていたのだけれど。血の通ったホンモノのミュージシャン、バンドマンがまた一人いなくなってしまった。訃報のネットニュースを見ると、記事も大方のコメントも幾つかはとぼけていて、悲しいけれどいつになっても文化の裾野が広がらない国なんだなと思ったりもした。変な譬えだけれどドゥービー・ブラザーズマイケル・マクドナルドだと思っていてパット・シモンズは知らない的な。

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細野晴臣が後押ししたファースト『センチメンタル・シティ・ロマンス』を聴いた時の衝撃は大きかった。彼らの象徴のようなツアー・バスの印象的なジャケット。私の世代は1990年代のCD選書の再発盤ですね。乱魔堂出身の告井延隆とのドライヴィンなツインギター(20年位前に新大久保の中古ギター屋で試奏で死ぬほど上手いアコギを弾いている人がいて、思わず覗き込んだら告井さんだった、ということが)、日本でウェストコーストのカラッとした音を出せるバンドは後にも先にも…実に普遍的な音楽を生み出せている名盤。しかもLPは輸入盤によくある縁のしぼりまで再現していて、こうした良い意味でのこだわりが堪らない。てなことで今だに週1くらいでセンチのレコード聴いている(コレはホント)。『HOLIDAY』『歌さえあれば』『CITY MAGIC』『はっぴいえんど、そして今世紀だと2004年のリメイク『30 years young』と2011年の『やっとかめ』(レビュー→https://markrock.hatenablog.com/entry/20111017/1318878334)が特に好き。夏のこの時期、延々と流していたくなる音楽。”歌さえあれば”は、不肖わたくしも2枚目のアルバム『愛すべき音楽よ』の中で同名異曲を作り、オマージュ収録いたしました。

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セッションでは竹内まりやの初期ウェストコースト・サウンドをセンチがバッキングしていたのは有名。中野さんはナイアガラ・トライアングルVOL.1』山下達郎”フライング・キッド”でもギターを弾いている(そういえばこの曲、浜崎貴司のバンド「フライング・キッズ」の由来でしたね)。中野さんのルーツの一つはジェイムス・テイラーだから、はっぴいえんど(センチはカバー・アルバムはっぴいえんども出している)系とは当然接点が。シュガー・ベイブのドラマー野口明彦はセンチのドラマーになったし。そうそう、このジェイムス・テイラーという人も、日本ではもちろん音楽ファンには有名だけれど、イーグルスホテル・カリフォルニア”とまでは市井で有名にならない。シングル・ヒットしたのも自作ですらない”君の友だち”(キャロル・キング作)。この辺の感覚が冒頭に書いたコメントのとぼけ感につながるのだろう。

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中野督夫ソロだと1997年の『くつろぎ』と2003年の『夕方フレンド』。ほぼメンバーも参加してセンチってな感じなんですが。後者には豊橋のSSW金藤カズ(これ、最近LPを手に入れたけれど、音楽評論家の小川真一さんがプレイヤー参加していた!)や、増田俊郎いとうたかお との共作もある。永井ルイ、湯川トーベンらとの2010年のフォークロックス『フォークロックス』というのも素晴らしい作品だった。

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10年前に小坂忠鈴木茂・中野督夫との完熟トリオ(これは中野さんのルーツを形成していると思えたお二人との豪華共演だった。ライブレビュー→https://markrock.hatenablog.com/entry/20110213/1297613954)に行った時のこと。中野さんにサインをもらおうかと思ったら、マネージャー風のガラの悪い人が「CD買わなきゃダメ!」みたいなことを言い出して。もうCD全部持ってるよ、とか思いましたけれども(笑)そしたら優しい中野さんが「もちろんいいよォ~」と言って椅子に座って話しながらサインしてくれたんですね。そんな日が昨日のことのように思い出される。今後とも週1でセンチのレコードを聴きますね。

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Jackson Browne / Downhill From Everywhere

*[SSW] Jackson Browne / Downhill From Everywhere(Inside Recordings/SONY / 2021)

 

先日釣りに行ったときに長袖を家に置き忘れてきちゃいまして。ほぼ火傷です(笑)危険な日差しになってきました。皆様も熱中症にお気を付けください。

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ジャクソン・ブラウンの、コロナで延期になっていたジェイムス・テイラーとのツアーに合わせた新作『Downhill From Everywhere』。見た目お爺ちゃんになった、というのが世界共通の第一印象みたいですが…とにかく力作。YouTubeトム・ペティの追悼カバー”The Waiting”を聴きながら、ジャクソン熱を高めていた所。日本ではソニーからのリリース。元のリリースはジャクソンのインサイド・レコーディングスという自主レーベルより。近年メジャーなベテランも収益構造的に自主レーベルに移行する傾向がある。インサイド・レコーディングスはジャクソンの作品のほか、優れたフォーク・ミュージシャンであるジョー・ラファエルや、グレッグ・コープランド、ホルヘ・カルデロンの作品をリリースしている。そんな自主リリースもあってか本作は高利薄売気味で、アナログは5000円オーバー、CDも輸入盤の方が日本盤よりも高い…ということで解説・対訳も付いた日本盤を選んだ次第。ちなみに先行シングルの『Downhill From Everywhere / A Little Soon To Say』は輸入アナログで先に出ていて、これをアルバムだと勘違いして買った人が結構いたみたい。ややこしいですね。

youtu.be

まずは何といってもPVがYouTubeで観られた”My Cleveland Heart”。新作で最初にレコーディングされた作品で、ギタリストのヴァル・マッカラムが作った曲にジャクソンが詞を付けたという(ヴァルもか細いコーラスを歌っている)。この曲だけ典型的な現行ポップ・カントリーの味付けで、イーグルスの”Take It Easy”から廻りまわって、ここへ来たという感触も。タイトルの”My Cleveland Heart”。オハイオ州クリーブランド・クリニックというと人工心臓の研究で有名なところ。クリーブランド・ハートを付ければ僕の心臓のように動いてくれる、「ぼくの壊れた心(broken heart of mine)」のようにね…と歌われる。誰もが憧れる不死身の人工心臓も、結局は老いたジャクソンの壊れた心と同じく、傷つきやすく、ときに間違いを犯すもの…そんな皮肉の利いたメッセージだと受け取った。PVではエルヴィス・コステロのバンドにいたピート・トーマスとか、ラップスティールのグレッグ・リーズ、そしてヴァルやファラガー・ブラザーズのデイヴィー・ファラガーなどのメンバーが総出で参加。そして、26歳のSSWフィービー・ブリッジャーズが感情のない表情で白衣に扮して、ジャクソンから取り出した心臓を食べるんですね。ちょっとホラー感もあるけれど、互いのレスペクトと共に世代のバトンを手渡すかのようなシーン。

 

では、歌詞にあった「ぼくの壊れた心(broken heart of mine)」とは?…これは「世界中そこかしこに窺える、下り坂の世界(Downhill From Everywhere)」に胸を痛めているジャクソンの心情だと思える。普遍理念に向かって国民が一丸となって突き進んだ近現代の理想主義が21世紀の山を越えて下り坂にあるという現状。まさに価値多元化のポストモダン状況ということになる(オリンピックという普遍理念を掲げる近代的な祭典に全国民が歓迎の意を表しないのは、コロナだけが原因ではない)。

 

新自由主義化した資本主義の下、格差拡大と環境破壊は止まらず、民主主義の価値を揺るがすトランプのポピュリズムもあった。かといってインタビューを読む限りジャクソン自身も自覚的みたいけれど、リベラルの理想主義は一律に現状を是正しようとする強引さがあるから、多くの大衆の支持を得られなくなってきていることも事実。それでもジャクソンはこんな風に歌っている。

 

「自由の国でも真実(を得るに)はコストがかかるようになっている(“The Truth is going to cost you in the land of the free”)」…そんなポスト・トゥルースの時代にあって「正義が実現するまで留まり続けるんだ(”staying with it until justice is real”)」(”Until Justice Is Real”)。あるいは、「ぼくはまだ何かを探している…もしそれが自由だけだったとしても、それでいいじゃないか(I’m still looking for something…if all I find is freedom, it’s alright)」(”Still Looking For Something”)。青臭いと思うかどうかは、それこそ自由だけれど、こんな世の中の現実を少しずつでもより良くしてきたものが、自由や平等、民主主義といった、そもそも手のひらに載せて見ることが叶わない普遍理念であったことは言うまでもない。ジャクソンの変わらぬ信念や気概に触れ、ぼくの壊れた心もやおら奮い立った。

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Dianne Brooks / Back Stairs Of My Life

*[ソウル] Dianne Brooks / Back Stairs Of My Life ( Reprise /1976 )

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オリンピック?という不穏な状況ですが。もはや皆の不満も爆発というか、オリンピックという言葉を発した方が負け、というほどの。コーネリアス小山田も厄介な所に足を突っ込んでしまったようだ。ゴシップとかあんまり興味がなかったけれど、あんなことやってたとは知らず、ショックでした。90年代に鬼畜系という露悪趣味のサブカルチャーがあったんですが、その文脈と思われる。現在だとコンプライアンス上、全てアウト。フリッパーズでいうと私はオザケン派だったのだが、2017年久々に新作『Mellow Wavesという素晴らしい作品を聴きまくって改めて彼のファンになった。音楽的には日本では珍しくワールド・スタンダード級ということは音楽ファンならわかっていると思うけれど、そもそも渋谷系全般が日本の和魂洋才的マジョリティにはアレルギー反応があるから、大衆の理解を得るのはそもそも難しかったのかもしれない(西洋の先端的文化に触れられる文化的距離の近さに対する、日本人特有のやっかみではないかと推理している)。結論、だめだこりゃ、ってことになります。闇に紛れて釣りにでも行って音楽を聴くに限る、今年の夏になりそうです。

 

んで、ダイアン・ブルックスというカナダのジャズ/ソウル・シンガー。ジャズ専門店でソウルやブルーズを掘る(時々フォークもあったりする)というのが大好きなのだけれど、そこで発見した一枚。エミルー・ハリスで当てたブライアン・アーンのプロデュース。同時期にブライアンがプロデュースしたピーター・プリングルの作品にもダイアンは参加している。ダイアンは1939年生まれで、1970年に初めてのアルバム『Some Other Kind Of Soul』をリリース。ドノヴァンの” Season Of The Witch”をカバーしたりしていて、結構レアみたい。その後もう1枚出せたのが本盤、1976年にリプリーズからリリースされた『Back Stairs Of My Life』。面白いと思ったのは選曲とメンバー。楽曲としてはA面だけでも、アルバートハモンドの”99 Miles From L.A.”(アート・ガーファンクルも歌っていた)、デイヴ・エリントンの”Kinky Love”、スティーヴィー・ワンダーの”Heaven Is 10 Zillion Light”、イーグルスの”Desperado”、そしてボビー・チャールズの”Small Town Talk”という。で、ミュージシャンがですね、”99 Miles From L.A.”からエイモス・ギャレットとワー・ワー・ワトソン、ウィリアム・D・スミス、ジェイムス・ギャドソンウィリー・ウィークスですよ。パキパキのエイモスのギターとグルーヴィーなバッキング、これぞクロスオーバーという感じ。アン・マレーが数曲でボーカル参加しているのは、ダイアンがアンのバックボーカルをやっていたから。他にもバリー・バケット、ロジャー・ホーキンス、デヴィッド・フッドというマッスルショールズ組やワディ・ワクテル、リトル・フィートビル・ペイン、ファラガー・ブラザーズ(ブライアンがこの後ソロ・デビューさせるロドニー・クロウウェルの曲)、ボニー・レイットが参加。あとは、作者自身が参加したウィリアム・D・スミスの”Saved by the Grace of Your Love”…マイク・フィニガンやサンズ・オブ・チャンプリンの名演もありました。ナイス・プロダクションなフィーメイル・ソウルの好盤!