いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp

[NEW!!]週刊ダイヤモンド2020年12月5日号の佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)のブックレビュー 知を磨く読書第372回 に『哲学するタネ 高校倫理が教える70章【西洋思想編①】』が取り上げられました。
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[NEW!!]「読者たちの夜会」(2021/1/14 LOFT9渋谷) 2020ベストビブリオバトル にて、哲学芸人マザーテラサワさんが『哲学するタネ―高校倫理が教える70章【西洋思想編1・2】』を取り上げてくれました。
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[NEW!!]評論家・映画監督の切通理作さんが店主を務める阿佐ヶ谷・ネオ書房の読書会を開催します。
哲学を学び直したい人のために ネオ書房【倫理教師・石浦昌之ライブ読書会】 12月20日(日) 18時半開場 19時開演 高校倫理1年間の授業をまとめた新刊『哲学するタネ 西洋思想編①』(明月堂書店)から、西洋哲学の祖、ソクラテスを取り上げます。 内容 ◆ フィロソフィア(愛知)とは? ◆「無知の知―汝自身を知れ」 ◆問答法はディアロゴス(対話)の実践 ◆「徳」とは何か? ◆プシュケー(魂)への配慮 ◆善く生きることとは? 入場料1200円 予約1000円  予約kirira@nifty.com
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[NEW!!]『哲学するタネ】――高校倫理が教える70章』【西洋思想編1】【西洋思想編2】が2020年10月20日に2冊同時刊行!!。
『哲学するタネ】――高校倫理が教える70章』【西洋思想編1】【西洋思想編2】2020年10月20日発売
●石浦昌之著
●定価:西洋思想編1 本体2000円+税(A5判 330頁)(明月堂書店)
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●西洋思想編2 本体1800円+税(A5判 300頁)(明月堂書店)
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honto西洋哲学 1位・2位に2冊同時にランクインしました(2020/10/25付)

【書評掲載】
週刊ダイヤモンド2020年12月5日号 佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)のブックレビュー「知を磨く読書 第372回」

2020年7月31日発売『URCレコード読本』(シンコー・ミュージック・ムック)に寄稿しました(後世に残したいURCの50曲 なぎらけんいち「葛飾にバッタを見た」・加川良「教訓1」・赤い鳥「竹田の子守歌」、コラム「高田渡~永遠の「仕事さがし」」)。
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ohno tomokiとダニエル・クオンによるデュオ「x-bijin」初のアルバム『x-bijin』(2020年6月26日発売)、リリースインフォにコメントを書かせてもらいました。
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「halfway to a hosono house?」 ohno tomokiとダニエル・クオンによるデュオ 「x-bijin」、ほぼ宅録による初のアルバムは、甘美なペダルスティールにのせてダニ エルが滑らかなボーカルで歌いこなす桃源郷ポップス。遠藤賢司に捧げた「グレープ フルーツ」からして初期松本隆を思わせる日本語の美しさが際立つのはなぜだろう? はっぴいえんどとポール(・マッカートニー)が産み落としたタネは、ジム(・オルーク )と出会ったペンシルヴァニアで果実となり、多摩産シティ・ポップのフレッシュジュ ースに姿を変えて、甘酸っぱい喉ごしと共に僕たちの前にある。(いしうらまさゆき)
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11月15日発売のレコードコレクターズ12月号に加奈崎芳太郎『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(明月堂書店)の書評が載りました。
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編集・ライターを担当した加奈崎芳太郎著『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(エルシーブイFM「加奈崎芳太郎のDIG IT!!」書籍化)が2019年8月に発売されました。
●加奈崎芳太郎著・桑畑恒一郎写真
●定価:本体3000円+税
●A5判(上製)416頁(明月堂書店)
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【メディア掲載】
『毎日新聞』2019年10月3日掲載 「元「古井戸」加奈崎芳太郎さんが本出版 音楽活動50周年の集大成」
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『長野日報』2019年9月25日掲載 「音楽文化で伝える戦後 パーソナリティのFM番組まとめ 加奈崎さん書籍刊行」

極北ラジオ石浦昌之の「哲学するタネ」が書籍化されました。
『哲学するタネ【東洋思想編】――高校倫理が教える70章』(石浦昌之 著)2018年10月10日発売
●石浦昌之著
●定価:本体2500円+税
●A5判(並製)384頁(明月堂書店)
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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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【ブックガイドに掲載されました】
斎藤哲也『もっと試験に出る哲学――「入試問題」で東洋思想に入門する』(2020年、NHK出版新書)

フォーエヴァー、中野督夫さん

*[コラム] フォーエヴァー、中野督夫さん

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名古屋発センチメンタル・シティ・ロマンス(センチ)の中野督夫さんが亡くなられたとの悲報。くも膜下で2018年に倒れてから、その復活を心から願っていたのだけれど。血の通ったホンモノのミュージシャン、バンドマンがまた一人いなくなってしまった。訃報のネットニュースを見ると、記事も大方のコメントも幾つかはとぼけていて、悲しいけれどいつになっても文化の裾野が広がらない国なんだなと思ったりもした。変な譬えだけれどドゥービー・ブラザーズマイケル・マクドナルドだと思っていてパット・シモンズは知らない的な。

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細野晴臣が後押ししたファースト『センチメンタル・シティ・ロマンス』を聴いた時の衝撃は大きかった。彼らの象徴のようなツアー・バスの印象的なジャケット。私の世代は1990年代のCD選書の再発盤ですね。乱魔堂出身の告井延隆とのドライヴィンなツインギター(20年位前に新大久保の中古ギター屋で試奏で死ぬほど上手いアコギを弾いている人がいて、思わず覗き込んだら告井さんだった、ということが)、日本でウェストコーストのカラッとした音を出せるバンドは後にも先にも…実に普遍的な音楽を生み出せている名盤。しかもLPは輸入盤によくある縁のしぼりまで再現していて、こうした良い意味でのこだわりが堪らない。てなことで今だに週1くらいでセンチのレコード聴いている(コレはホント)。『HOLIDAY』『歌さえあれば』『CITY MAGIC』『はっぴいえんど、そして今世紀だと2004年のリメイク『30 years young』と2011年の『やっとかめ』(レビュー→https://markrock.hatenablog.com/entry/20111017/1318878334)が特に好き。夏のこの時期、延々と流していたくなる音楽。”歌さえあれば”は、不肖わたくしも2枚目のアルバム『愛すべき音楽よ』の中で同名異曲を作り、オマージュ収録いたしました。

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セッションでは竹内まりやの初期ウェストコースト・サウンドをセンチがバッキングしていたのは有名。中野さんはナイアガラ・トライアングルVOL.1』山下達郎”フライング・キッド”でもギターを弾いている(そういえばこの曲、浜崎貴司のバンド「フライング・キッズ」の由来でしたね)。中野さんのルーツの一つはジェイムス・テイラーだから、はっぴいえんど(センチはカバー・アルバムはっぴいえんども出している)系とは当然接点が。シュガー・ベイブのドラマー野口明彦はセンチのドラマーになったし。そうそう、このジェイムス・テイラーという人も、日本ではもちろん音楽ファンには有名だけれど、イーグルスホテル・カリフォルニア”とまでは市井で有名にならない。シングル・ヒットしたのも自作ですらない”君の友だち”(キャロル・キング作)。この辺の感覚が冒頭に書いたコメントのとぼけ感につながるのだろう。

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中野督夫ソロだと1997年の『くつろぎ』と2003年の『夕方フレンド』。ほぼメンバーも参加してセンチってな感じなんですが。後者には豊橋のSSW金藤カズ(これ、最近LPを手に入れたけれど、音楽評論家の小川真一さんがプレイヤー参加していた!)や、増田俊郎いとうたかお との共作もある。永井ルイ、湯川トーベンらとの2010年のフォークロックス『フォークロックス』というのも素晴らしい作品だった。

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10年前に小坂忠鈴木茂・中野督夫との完熟トリオ(これは中野さんのルーツを形成していると思えたお二人との豪華共演だった。ライブレビュー→https://markrock.hatenablog.com/entry/20110213/1297613954)に行った時のこと。中野さんにサインをもらおうかと思ったら、マネージャー風のガラの悪い人が「CD買わなきゃダメ!」みたいなことを言い出して。もうCD全部持ってるよ、とか思いましたけれども(笑)そしたら優しい中野さんが「もちろんいいよォ~」と言って椅子に座って話しながらサインしてくれたんですね。そんな日が昨日のことのように思い出される。今後とも週1でセンチのレコードを聴きますね。

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Jackson Browne / Downhill From Everywhere

*[SSW] Jackson Browne / Downhill From Everywhere(Inside Recordings/SONY / 2021)

 

先日釣りに行ったときに長袖を家に置き忘れてきちゃいまして。ほぼ火傷です(笑)危険な日差しになってきました。皆様も熱中症にお気を付けください。

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ジャクソン・ブラウンの、コロナで延期になっていたジェイムス・テイラーとのツアーに合わせた新作『Downhill From Everywhere』。見た目お爺ちゃんになった、というのが世界共通の第一印象みたいですが…とにかく力作。YouTubeトム・ペティの追悼カバー”The Waiting”を聴きながら、ジャクソン熱を高めていた所。日本ではソニーからのリリース。元のリリースはジャクソンのインサイド・レコーディングスという自主レーベルより。近年メジャーなベテランも収益構造的に自主レーベルに移行する傾向がある。インサイド・レコーディングスはジャクソンの作品のほか、優れたフォーク・ミュージシャンであるジョー・ラファエルや、グレッグ・コープランド、ホルヘ・カルデロンの作品をリリースしている。そんな自主リリースもあってか本作は高利薄売気味で、アナログは5000円オーバー、CDも輸入盤の方が日本盤よりも高い…ということで解説・対訳も付いた日本盤を選んだ次第。ちなみに先行シングルの『Downhill From Everywhere / A Little Soon To Say』は輸入アナログで先に出ていて、これをアルバムだと勘違いして買った人が結構いたみたい。ややこしいですね。

youtu.be

まずは何といってもPVがYouTubeで観られた”My Cleveland Heart”。新作で最初にレコーディングされた作品で、ギタリストのヴァル・マッカラムが作った曲にジャクソンが詞を付けたという(ヴァルもか細いコーラスを歌っている)。この曲だけ典型的な現行ポップ・カントリーの味付けで、イーグルスの”Take It Easy”から廻りまわって、ここへ来たという感触も。タイトルの”My Cleveland Heart”。オハイオ州クリーブランド・クリニックというと人工心臓の研究で有名なところ。クリーブランド・ハートを付ければ僕の心臓のように動いてくれる、「ぼくの壊れた心(broken heart of mine)」のようにね…と歌われる。誰もが憧れる不死身の人工心臓も、結局は老いたジャクソンの壊れた心と同じく、傷つきやすく、ときに間違いを犯すもの…そんな皮肉の利いたメッセージだと受け取った。PVではエルヴィス・コステロのバンドにいたピート・トーマスとか、ラップスティールのグレッグ・リーズ、そしてヴァルやファラガー・ブラザーズのデイヴィー・ファラガーなどのメンバーが総出で参加。そして、26歳のSSWフィービー・ブリッジャーズが感情のない表情で白衣に扮して、ジャクソンから取り出した心臓を食べるんですね。ちょっとホラー感もあるけれど、互いのレスペクトと共に世代のバトンを手渡すかのようなシーン。

 

では、歌詞にあった「ぼくの壊れた心(broken heart of mine)」とは?…これは「世界中そこかしこに窺える、下り坂の世界(Downhill From Everywhere)」に胸を痛めているジャクソンの心情だと思える。普遍理念に向かって国民が一丸となって突き進んだ近現代の理想主義が21世紀の山を越えて下り坂にあるという現状。まさに価値多元化のポストモダン状況ということになる(オリンピックという普遍理念を掲げる近代的な祭典に全国民が歓迎の意を表しないのは、コロナだけが原因ではない)。

 

新自由主義化した資本主義の下、格差拡大と環境破壊は止まらず、民主主義の価値を揺るがすトランプのポピュリズムもあった。かといってインタビューを読む限りジャクソン自身も自覚的みたいけれど、リベラルの理想主義は一律に現状を是正しようとする強引さがあるから、多くの大衆の支持を得られなくなってきていることも事実。それでもジャクソンはこんな風に歌っている。

 

「自由の国でも真実(を得るに)はコストがかかるようになっている(“The Truth is going to cost you in the land of the free”)」…そんなポスト・トゥルースの時代にあって「正義が実現するまで留まり続けるんだ(”staying with it until justice is real”)」(”Until Justice Is Real”)。あるいは、「ぼくはまだ何かを探している…もしそれが自由だけだったとしても、それでいいじゃないか(I’m still looking for something…if all I find is freedom, it’s alright)」(”Still Looking For Something”)。青臭いと思うかどうかは、それこそ自由だけれど、こんな世の中の現実を少しずつでもより良くしてきたものが、自由や平等、民主主義といった、そもそも手のひらに載せて見ることが叶わない普遍理念であったことは言うまでもない。ジャクソンの変わらぬ信念や気概に触れ、ぼくの壊れた心もやおら奮い立った。

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Dianne Brooks / Back Stairs Of My Life

*[ソウル] Dianne Brooks / Back Stairs Of My Life ( Reprise /1976 )

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オリンピック?という不穏な状況ですが。もはや皆の不満も爆発というか、オリンピックという言葉を発した方が負け、というほどの。コーネリアス小山田も厄介な所に足を突っ込んでしまったようだ。ゴシップとかあんまり興味がなかったけれど、あんなことやってたとは知らず、ショックでした。90年代に鬼畜系という露悪趣味のサブカルチャーがあったんですが、その文脈と思われる。現在だとコンプライアンス上、全てアウト。フリッパーズでいうと私はオザケン派だったのだが、2017年久々に新作『Mellow Wavesという素晴らしい作品を聴きまくって改めて彼のファンになった。音楽的には日本では珍しくワールド・スタンダード級ということは音楽ファンならわかっていると思うけれど、そもそも渋谷系全般が日本の和魂洋才的マジョリティにはアレルギー反応があるから、大衆の理解を得るのはそもそも難しかったのかもしれない(西洋の先端的文化に触れられる文化的距離の近さに対する、日本人特有のやっかみではないかと推理している)。結論、だめだこりゃ、ってことになります。闇に紛れて釣りにでも行って音楽を聴くに限る、今年の夏になりそうです。

 

んで、ダイアン・ブルックスというカナダのジャズ/ソウル・シンガー。ジャズ専門店でソウルやブルーズを掘る(時々フォークもあったりする)というのが大好きなのだけれど、そこで発見した一枚。エミルー・ハリスで当てたブライアン・アーンのプロデュース。同時期にブライアンがプロデュースしたピーター・プリングルの作品にもダイアンは参加している。ダイアンは1939年生まれで、1970年に初めてのアルバム『Some Other Kind Of Soul』をリリース。ドノヴァンの” Season Of The Witch”をカバーしたりしていて、結構レアみたい。その後もう1枚出せたのが本盤、1976年にリプリーズからリリースされた『Back Stairs Of My Life』。面白いと思ったのは選曲とメンバー。楽曲としてはA面だけでも、アルバートハモンドの”99 Miles From L.A.”(アート・ガーファンクルも歌っていた)、デイヴ・エリントンの”Kinky Love”、スティーヴィー・ワンダーの”Heaven Is 10 Zillion Light”、イーグルスの”Desperado”、そしてボビー・チャールズの”Small Town Talk”という。で、ミュージシャンがですね、”99 Miles From L.A.”からエイモス・ギャレットとワー・ワー・ワトソン、ウィリアム・D・スミス、ジェイムス・ギャドソンウィリー・ウィークスですよ。パキパキのエイモスのギターとグルーヴィーなバッキング、これぞクロスオーバーという感じ。アン・マレーが数曲でボーカル参加しているのは、ダイアンがアンのバックボーカルをやっていたから。他にもバリー・バケット、ロジャー・ホーキンス、デヴィッド・フッドというマッスルショールズ組やワディ・ワクテル、リトル・フィートビル・ペイン、ファラガー・ブラザーズ(ブライアンがこの後ソロ・デビューさせるロドニー・クロウウェルの曲)、ボニー・レイットが参加。あとは、作者自身が参加したウィリアム・D・スミスの”Saved by the Grace of Your Love”…マイク・フィニガンやサンズ・オブ・チャンプリンの名演もありました。ナイス・プロダクションなフィーメイル・ソウルの好盤!

MAZEはすばらしい

*[コラム] MAZEはすばらしい

 

今年も7月に入ってしまい…なんだか早いですね。昨年から有難いことに音楽とはまた別の原稿仕事を各所で頂き、その〆切に追われる毎日でもあり。最後の最後はギックリ腰ならぬギックリ背中というもの(2日立てなくなりました…)を初経験する中で仕上がりました。ちと年取ったなとか色んなことを思って悲しくなりましたが。ここ数日やっとつかの間の余裕ができたような。ちなみにここ半年のレコード探索の旅は、というと、ソウルの落穂拾いを始めております。およそ5作以上出しているような有名どころのアーティストは、とりあえず「ほぼ」全作アナログで集める、という所を目標に。「ほぼ」というのは売れなくなった時期のマイナーレーベルものとかは、すぐには見つからないことが多いから。しかもなるべくレコード屋を足で稼いで回る、という。オークションとかdiscogsとかで探せばあることはあるんですが、店で見つける方が楽しいんですね(笑)魚屋で買うよりも釣った方が楽しいとかありますよね。あるいはそもそも食べることより釣ることの方が楽しいというのもあるから困ったもので(笑)ここ数年で60~70年代ロックはその作業を一通りやって、あまり興味がなかったアーティストも、全部アナログで聴いてみて、やっぱり凄!とぶっ飛んだことが何度もあった。それに大好きなアーティストでも、再び聴き直す機会になるから、いいですね。

 


MAZEとか、どちらかといえば完成度重視の寡作アーティストだと、アナログで地道に探せばすぐ見つかるから最高。それにしても、フランキー・ビヴァリーを中心とするソウル・バンドMAZE。世界的な人気と比して、なぜ日本ではアース・ウィンド&ファイアーほど売れなかったんだろう。わかりやすいディスコ・ヒットみたいなやつがないとダメなのか。腰を揺らすある種のダンス・ミュージックとしてのストーンズや黒人ブルーズの良さが、どこまで本当に理解されているのか…というのとちょっと似ている。フランキー・ビヴァリーが心酔するマーヴィン・ゲイには結構ファンがいる気もしますが、それもまた不思議。

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いやしかしMAZE、まさにアメージングですよ。ソウル・ミュージックの高揚するパワーと前向きなエネルギーが、精神的な部分で染みわたってくる。この多幸感をどう説明すればよいのだろう。長岡秀星の手掛けた迷路(MAZE)をモチーフにしたジャケのインパクトも◎。そういえばシティ・ポップのムーブメントのキーマンは山下達郎なわけですが、そのムーブメントの中でも彼のソウル・ミュージックの音楽的ルーツに遡って聴こうとする向きがそう多くはないのも、なぜだろう。スタジオミュージシャンのクレジット買いみたいなところに注目するファンは多いのだけれど、きっとそれは記号的消費なのではないかと邪推している。そんな当の達郎さん本人は長寿ラジオ番組サンデーソングブックで、彼のファンにはオミトオシなんでしょうけれど、ルーツの種明かし、という名の啓蒙をやり続けてくれている。先週は寺内タケシ追悼、となるといずれ土岐英史追悼となるのだろうか。あぁ土岐さん、rest in peace…

Andy Fairweather Low / Be Bop ‘N’ Holla

*['60-'70 ロック] Andy Fairweather Low / Be Bop ‘N’ Holla (A&M / 1976)

 

元エイメン・コーナー、クラプトンのサイド・ギタリストとしても著名なアンディ・フェアウェザー・ロウ。クラプトンの最後に行ったライブでは、往年の名曲”Gin House”(エイメン・コーナーのヒット)を歌わせてもらってました。この1曲だけでも元が取れたと思ったけれど(笑)

 

アンディのソロはどれも素晴らしいのだけれど、A&Mのグリン・ジョンズ・プロデュースの2作は特に外れ無し。アーシーなイギリス風味のAORといった風情で、ギャラガー&ライルの同時期盤と姉妹作のような。そう、グレアム・ライルと同じく、アコースティックのみならずソウルっぽい曲も書ける人なんですよね。しかもメロディも珠玉。メロディ・メイカーということでいえば、クラプトンとかジョージ・ハリスンなんかよりも上だと思うんですが、なぜか小粒に思われているのが悲しい。ティナ・ターナーなどのヒットメイカーとして名を馳せるグレアム・ライルと比べ、シングルヒットが少なかったからなのか。

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こちらは昨日入手したソロ3枚目『Be Bop ‘N’ Holla』のイギリス盤。別ジャケのアメリカ盤は持ってるしいいかな、とも思ったけれど、イギリスらしい曇ったシンプルなジャケットに惹かれて。聴いてみると、カッティングの違いもあるのか、いいですね~ジャケもゲイトフォールドになっている。

 

リビアAORのような”Shimmie-Doo-Wah-Sae”の言葉遊び感覚とか、ヴァレリー・カーターが『Wild Child』で取り上げた必殺”Da Doo Rendezvous”、英国スワンプ感満載の苦み走った”Rocky Raccoon”(ビートルズのカバーですね)…いやはや悶絶。”Rocky Raccoon”にはグリン・ジョンズ繋がりかイーグルス脱退直後のバーニー・リードンがアコギとボーカルで参加。イーグルスのファーストはグリン制作のイギリス録音だったわけだけれど、今度はその意匠を借りてイギリス人が作ったのが本作というわけ。内ジャケ写真の大々的な配置を見る限り、アメリカへの憧憬があるアンディにとって、バーニーの参加は嬉しかったのでは?そう、余り語られていないけれどマイナー調のジャジーな美メロ”Rhythm ‘N’ Jazz”にはジョージー・フェイムも加わっている。

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ちなみにアメリカ盤はこんな感じ。

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Dwight Yoakam / Swimmin' Pools, Movie Stars

*[カントリー] Dwight Yoakam / Swimmin' Pools, Movie Stars (Sugar Hill / 2016)

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ドワイト・ヨーカムの現在の所の最新作『Swimmin' Pools, Movie Stars』(2016年)を久々に聴いている。相変わらず良いとしか言いようがない。シュガーヒルからのリリースということで、ブルーグラス風味の仕上がりになっているのが極めて新鮮だ。

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セレブ然としたジャケは思わずシティポップ的にも思われるけれど、タイトルからも判る通り、映画俳優としても着実なキャリアを歩んでいる。アメリカのご婦人のストライクど真ん中のセックス・アピールのある古風なカントリー・シンガーとして80年代後半のアメリカにデビューした彼だから、キャラクターだけでも魅力的。しかし初めて90年代半ば、中学生の頃に彼を映像で見たときは衝撃を受けた。ホンキー・トンクとかそういう言葉の意味が初めて理解できたような気もして。マーティンのD-28ですかね、これをチャリチャリ弾きながらカウボーイブーツ&ハットにジーンズで、客席の嬌声を弄ぶかのように緩急使い分け、エコーの聴いた鼻声で歌うんですよね。エルヴィスを想起したけれど、その直感は間違っていなかったように思う。ガイコツマイクのロカビリーともルーツを同じくする音。2000年のインターネット新時代を象徴するような弾き語りアルバム『dwightyoakamacoustic.net』でわかったけれど、カントリーのギターリックが本当に巧みな人なんですね。

 

で、”Guitars, Cadillacs”のブルーグラスでの再演も交えつつ、ラストは同年亡くなったプリンスへのトリビュート”Purple Rain”。買う前から彼が歌っている様が想像できた。この感覚はロック的だと思った。白人至上主義的になりがちなカントリー界ですからね。ただ、アメリカ音楽を好む人ならわかると思うけれど、カントリーもロックンロールも、ジャズもブルーズもソウルも全部実はルーツは一緒だから、ドワイト・ヨーカムがプリンスを歌うことに全く違和感はない。そもそもカントリー、リズム&ブルーズなんてのは人種差別からできたカテゴリーであったわけだから。

 

家のレコ棚を探してみたら、デビュー作から3枚目まではLPがあった。もう彼も64歳なんですか。今聴いてもサイコーであります。

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Essra Mohawk / E-Turn

*[SSW] Essra Mohawk / E-Turn(Eclipse / 1985)

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 エスラ・モホーク…本名サンドラ・ハーヴィッツ、といえば、女性シンガーソングライターの中でも個性派の部類に属するだろう。フランク・ザッパと活動を共にした時期もあったりと、当時の行き当たりばったり的ヒッピー女史であったことは想像がつく。ヴェルヴェッド・アンダーグラウンドのニコの『The Marble Index』をプロデュースしたフレイジャー・モホークと結婚するとエスラ・モホークと名前を改めている。フレイジャーの本名はバリー・フリードマンだから、ユダヤ系ですね。ボブ・ディラン同様、ルーツを攪乱しようとしたことが伺える。ネイティブ・アメリカンのモホーク族から採ったのだと思うけれど、その辺りはヒッピー的感性。

 

で、エスラのリプリーズ、アサイラムプライヴェート・ストックからの70年代の3枚と比して、存在感が薄いのが1985年の『E-Turn』。「E-Turn」は文字通り「エスラの転回」そして「(今度は)エスラの番」というダブル・ミーニングになっている。何しろジャケットは、オリビア・ニュートン・ジョンの”フィジカル”におけるエアロビ変化を思わせる変貌ぶり。この後、1999年までしばらく沈黙してしまうのだけれど…

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この変身のヒントは、1983年にシーンをかっさらっていたシンディ・ローパーにある。満を持して発表されたシンディ1986年のセカンド・アルバム『True Colors』の1曲目を飾ったのはシングル”Change of Heart”(ビルボード3位を記録)。これを書いたのがエスラ・モホークだった。エキセントリックな女性シンガー・ソングライターの先駆として、元ヒッピー・ガールの(かつロカビリー女史でもあった)シンディがエスラの起死回生を願ったような1曲。これに刺激されて同様の音作りの『E-Turn』が制作されたことは間違いない。しかしニューウェーブっぽさと、アメリカン・ロックンロールの王道を交えつつ、シンガー・ソングライターっぽさも墨守するシンディの音作りのユニークさは古びないと改めて思う。

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ちなみに”Change of Heart”のエスラ版(おそらくデモ?)は、2005年発売の『E-Turn』20周年記念盤に”It's Our Future”と共にボーナス収録されている。ちなみにコレ、音を聴くこと自体は難しくないけれど、ブツで欲しいなってことで、e-bayのおそらくご本人(かそのスタッフ)ではないかと思われる販売サイトで購入するも、どうしても日本への送り方がわからないというご返信…ここなら買えるかも…というサイトまで教えてもらったけれど、そこでも入手できず、結局また別の売り主から購入。一応買えたことを報告すると、それが本物かどうか確かめられたら教えて欲しいという連絡が。つまり、ご本人の与り知らぬところでお金になってしまっているということかと思った。ちょっと残念な気持ちにもなる。店に卸した分が転売されたか、勝手にデジタル複製されたか。アナログならブートのように音質劣化する分、複製は困難なんですが(マスターがデジタルなら複製できますが)。いずれにしても70代になったエスラを想い、世知辛い感触が残った。