*[フォーク] Peter , Paul and Mary / 10 Years Together The Best of Peter , Paul and Mary ( Warner / 1970 )
気付けば年末…毎年こんなことを言ってる気もしますが。昨日は三鷹の愛すべき中古レコード店パレードをいつも通り訪ねると、お店に置かせてもらっている加奈崎芳太郎『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』のチラシが捌けたとのこと。早速追加のチラシを置かせて頂けることになった。有難いことです。地道なプロモーションが大切。
そんなこんなで6枚くらいのレコードを買い求めたうち、特に「おっ」と思ったのは、選曲がとても良いので昔CDで愛聴していたピーター・ポール&マリー(P,P&M)のベスト盤『10 Years Together The Best of Peter , Paul and Mary』。アメリカ盤オリジナル、70年代初頭ワーナーの深緑ラベルが300円だった。改めてアナログで聴くとむちゃくちゃ音が良くてびっくりした。エンジニアはS&Gやビリー・ジョエルなんかのプロデューサーでもあるフィル・ラモーン。実は最近真面目にコピーしたいと思っているのがP,P&M。概してコピーは苦手なんですが、自分の原点だからこれだけはやらなきゃな、という。ギターと3声で成立する音楽。教会音楽のような神聖さもある。小室等がPPMフォロワーズを作ろうとした気持ちはわかる。っていうか世界中に紅一点のトリオができたわけですし。
聴いていると”I Dig Rock and Roll Music”におけるポール・ストゥーキーのヒップなロック感覚とか、一体どうなってるのかなと思う。メロディはドノヴァンだと思うけれど、ママス&ザ・パパス的なコーラスも加わって。リリース後にディランの『ベースメント・テープス』に入る”Too Much of Nothing”とか、この時代のヒップさが際立っている。
そしてフォークソング”Stewball”。クリスマスが近づくと街中に聴こえてくる”Happy Xmas (War Is Over)”の元ネタと目されている曲。1961年デビューのP,P&Mヴァージョンの”Stewball”は1963年に発表されているのだけれど、1970年の10年目の解散ベスト盤(つまり本盤)に収録されている。ディラン楽曲を取り上げて公民権運動を戦った先達として、ビートルズ解散とタイミングが重なった本盤はベッドイン後のジョン&ヨーコの耳にもおそらく届いたと想像する。英国の競走馬バラッドだった”Stewball”をP,P&Mは、「年老いたスチューボールに賭けていたなら、いま自由になれていたはずなのに…」と余韻のある語り口で解釈したのだった。戦争が無くならない現状と平和な未来への希求…という祈りのイメージとも重なり合うように思えた。そういえば「War Is Over」は1968年に不遇のフォークシンガー、フィル・オクスが掲げたスローガンだったことなども思い出される。優れた音楽とはこうしたイメージの集積から生み出されるのだろう。